ハリー |
ソフトくんソフトくん。 |
ソフト |
なんですかなんですか。 |
ハリー |
なんでぼくら、
こんなところに出てるわけ? |
ソフト |
ふたりで吉田さんの
100回記念を盛り上げようってことで
「エハイク・ランキング」を
催したんじゃないですか。 |
ハリー |
そらそやね。 |
ソフト |
せっかくだから、
大勢の方が参加してくださった
ランキングを見ながら、
感想など述べてみましょうよ。 |
ハリー |
よっしゃよっしゃ、任しとけ。
こう見えてもボク、連載開始当初から
このコーナーを担当してますからね!
|
ソフト |
あ、そうだったんですね。 |
ハリー |
エハイクのことなら、
なんでも訊いてくれ! |
ソフト |
なるほど、たのもしい!
それではさっそく始めましょう。
1位の「毎日曜」っていうのは予想通り?
|
ハリー |
ええっと、「毎日曜」って
どんなやつやったかな? |
ソフト |
ヌッツォですよ、ヌッツォ! |
ハリー |
わかってるがな。
吉田さんも上で言うてはるけど、
上位3作には、メジャーどころを
テーマにした句が並んだね。 |
ソフト |
そうですねー。
でも、地味なものも
けっこう上位に来てます。
にいさんはどれが好きですか? |
ハリー |
そやねえ。たとえば連載当時、
ボクがすごく笑った記憶があるのは、
「布団から」。 |
ソフト |
あああ、これは僕も大好きですよ。 |
ハリー |
子どもの立ち位置。
寝てる親父のドタマを
てっぺんからとらえたこの構図。
そして、布団から出られないという
やむにやまれぬ感じを表現した
書き文字の斜め具合。完璧やね。 |
ソフト |
「出られぬ」の「られ」は
「可能」を意味する「られ」ですからね。 |
ハリー |
うん。体調とか、睡眠時間とか、
そういう原因はさておき、
なにしろ「出られぬのだ」と。 |
ソフト |
布団続きでいうと、
僕はこれがかなり好きですね。
「CGにしか」。 |
ハリー |
これ、おっかしいわ。
まず、なんで、ダブルベッド? |
ソフト |
おじいちゃん、妙に寝相悪いですね。 |
ハリー |
「CGにしか見えない」ちゅうことは、
CGとちゃうんやね。
いったいおじいちゃん、
なにを観たんやろね? |
ソフト |
たぶん、孫とふたりで、
寝る直前に
映画を観たんじゃないですかね。 |
ハリー |
あ、そういう状況? |
ソフト |
裕福なおじいちゃんの家に、
夏休みかなんかに孫が遊びに来て、
じゃあ、ビデオでも観るかっつって
観たわけですよ。
そんで、観終わって寝たんですけど、
孫は寝られないわけですよ。 |
ハリー |
キミ、実際見てきたように言うね。 |
ソフト |
だって、枕は変わってるし、
おじいちゃん、寝るの早いし。
だから孫は眠りが浅いわけですよ。
寝言なんて言われたら
すぐ目が覚めちゃうわけです。 |
ハリー |
そんな状況でおじいちゃんが
寝ながらボソッとひと言。 |
ソフト |
「‥‥CGにしか見えない」 |
ハリー |
うはははははは。
そら、孫も目ぇ覚めるわ。
ほかに好きなのある? |
ソフト |
どれかひとつ選べと言われたら、
僕はこれかもしれません。
「はいはいはい」 |
ハリー |
これは最高やわ。
絵はめっちゃ怒ってるからね。
「はいはいはい」どころじゃない。
いまにもお寺に
怒鳴り込みにいかんばかり。 |
ソフト |
「はいはいはい」と珍しく字余りで。
だいたい、ありがたい教えを
「蘊蓄(ウンチク)」と
言い切ってるのがすごい。 |
ハリー |
「おてんとうさまに生かされている」が
たんなる蘊蓄扱いやからね。
あと僕が好きなのが「たのもしく」
これ、何回見てもおかしい。 |
 
ふたり |
(爆笑) |
ソフト |
これはほんと、おかしいわ。 |
ハリー |
初期の傑作。 |
ソフト |
「すごい服」っていうのがいいよね。
「赤い服」とか「派手な服」とかじゃなくて。 |
ハリー |
この服の柄、
どうなってるかわからへんからね! |
ソフト |
あと、すごい服で思い出すのが、これ。
「ばかキモノ」 |
ハリー |
うひゃひゃひゃ、これかー!! |
ソフト |
「ばかキモノ」はすごいですよ。
名詞ですよ? 「ばかキモノ」。 |
ハリー |
このおっさんのほうの格好もすごいよね。 |
ソフト |
こっちのおっさんの格好も同じですよ。
「ばかハチマキ」に
「ばかTシャツ」なんですよ。 |
ハリー |
なるほどなあ。
あと、すごい細かいことやけど、
「ばかキモノ」を選んでるおばさんの
描写がまた見事やね。
あの、ちょっとこう、
アメリカ人のご婦人が
むりやり日光浴して肌が荒れちゃって、
それでも平気でノースリーブ着てる、
みたいな感じがよく出てるわあ。 |
ソフト |
なるほどねえ。
あ、そういえば、連載当初より
にいさんが絶賛していた「パンが好き」が
堂々、4位に入ってますよ? |
ハリー |
せやねんせやねん。
みんな見る目あるわー。
地味やけど高評価やね。 |
ソフト |
だって、
1位はヌッツオでしょ?
2位がヒルズでしょ?
3位が有名なネズミでしょ?
吉田さんがコメントするように、
メジャーなテーマが並んだなかで、
「パンが好き」は、
まったく出典がないからね。
その意味で実質的な1位といってもいい。 |
ハリー |
や、マジで。
あとは「いるたびに」が
上位なのもうれしいね。 |
ソフト |
これ、僕も大好きです。
いますよね、猫がいるたびに
「あ、猫!」って言う人。 |
ハリー |
おれへん、おれへん。 |
ソフト |
いるんですって!
実際、僕の知り合いにいますよ。
猫がいるたびに「あ、猫!」って言う人。
しかも夫婦なんですよ。 |
ハリー |
夫婦で? |
ソフト |
夫が「あ、猫!」って言うと、
妻も「あ、猫!」って言うんですよ。
ほんとですって。歩くたびに、ふたりして、
「あ、猫!」「あ、猫!」って言うんですよ。
今度紹介しますよ。つれてきますよ。 |
ハリー |
わざわざつれてくるな。 |
ソフト |
あ、あと、これを忘れちゃいけませんよ。
原稿が届いた瞬間、
ふたりで爆笑したじゃないですか。 |
ハリー |
なんでしたっけ? |
ソフト |
「長そでを」
|
 
ふたり |
(鑑賞しながらしばし爆笑) |
ハリー |
いや~、これ、すごい。 |
ソフト |
なんか、もう、いろんなことが
わかんないんですけどね、この句。 |
ハリー |
わかんないねー。 |
ソフト |
まず、その、「隠れ着る」必要がない。 |
ハリー |
ないない(笑)。 |
ソフト |
あと、「嗤う」必要もない。 |
ハリー |
ないない(笑)。 |
ソフト |
もっと言うと、
「小野」である必要もないし‥‥。 |
ハリー |
「和田」である必要もない! |
ソフト |
ないない(笑)。 |
ハリー |
あと、「和田」のTシャツはひどすぎる! |
ソフト |
そうそう。
むしろ嗤われるべきは「和田」のTシャツ。
もしくは、「小野」の髪型! |
ハリー |
うははははははははは。 |
ソフト |
いろんなことがわからないなあ。 |
ハリー |
わからなくておかしいといえば、これ。
「むき巨峰」。 |
ソフト |
うはははははは。 |
ハリー |
まず、これ、若旦那は、
なんで柱の陰に隠れてるんですかね? |
ソフト |
そうですねえ。むしろ、
「むき巨峰、いかがですかー!」
くらい言ってもいい。 |
ハリー |
言っていい、言っていい(笑)。
そりゃ、売れないよ、
こんなもんを、ただ置いといても。 |
ソフト |
あと、「むき巨峰」っていうくらいだから、
若旦那が手でむいてるんだよね、巨峰。 |
ハリー |
そういうの食べたないよなー。
評にもあるけど、「ぎっしり」だし。 |
ソフト |
あと、高い! 1000円! |
ハリー |
高いわ、「むき巨峰」!
しかもよく見るとこれ、セール中だ! |
ソフト |
古いのかよ。
古いうえに手でむいてて、1000円。 |
ハリー |
これは売れんわ! |
ソフト |
「むき巨峰」、ダメだ! |
ハリー |
「ちくられて」ってなんだっけ?
|
ソフト |
「ちくられて」は名作ですよ!
「春手錠」ですよ! |
ハリー |
ああああ、「春手錠」か! 名作! |
ソフト |
これはいいですよねえ。
きっとね、この人ね、
つかまっちゃってるけど、
本人に落ち度はないんですよ。 |
ハリー |
あ、なるほどね。 |
ソフト |
ちょっとね、
人を信じすぎちゃったんだな。 |
ハリー |
「あいつに裏切られたんなら、
しょうがないか‥‥」
っていう感じでね。 |
ソフト |
そうそう、春のうららかな日にね。 |
ハリー |
ちょっと暖かい日射しのなかでね。 |
ソフト |
あの、『お葬式』っていう
映画があるじゃないですか。
あれのラストで山崎努さんが、
「俺が死ぬなら春がいい。
桜吹雪で、いいぞお」って言うでしょ。
あのよさに通じるものがありますね。 |
ハリー |
ああああ、あったあった。
そうねえ、なんらかの
ラストシーンを彷彿とさせる句だよね。
たしかに映画っぽいわ。 |
ソフト |
きっと『春手錠』っていう
タイトルの映画なんですよ。 |
ハリー |
あ、なるほどね。
『春手錠』のラストシーンが
これなわけね。 |
ソフト |
たぶん、冒頭は、いきなり、
男の腕に「ガシャン!」って
手錠がおろされるシーンから始まるんですよ。 |
ハリー |
あ、そこから回想シーンね。 |
ソフト |
そうそうそうそう。 |
ハリー |
いい映画だなあ。 |
ソフト |
いい映画ですねえ。
|
ハリー |
もう、泣けてくるね。 |
ソフト |
泣けてきますよ。
単館ロードショーだったけど、
口コミで評判になって全国展開ですよ。 |
ハリー |
日本列島が感動の嵐に包まれる
──『春手錠』。近日公開。 |
ソフト |
春といえば、花粉症の句も多いですね。 |
ハリー |
多い! 「杉花粉」とか「小飛散」とかね。
「杉花粉」のハトはいいよなあ。 |
ソフト |
なんか、作者はよく、
小動物を見てますよねえ。 |
ハリー |
見てる! 「燕の子」とかね!
|
ソフト |
あ、これいいなあ。 |
ハリー |
なにしろ、「床屋頭」を見つめてる
「燕の子」を見つめてるわけですからね。 |
ソフト |
見つめてますねー。
というか、作者は、
春先から初夏にかけて、
小動物を見つめがちですね。 |
ハリー |
見つめがちです。
ひいては、このエハイクを読むと、
作者の1年間が
垣間見られるというわけですよ。
つまり、戦車さんの春夏秋冬が
ここにはあるわけです。 |
ソフト |
春は花粉症に悩まされながらも、
外を出歩いて小動物を見つめ‥‥。 |
ハリー |
夏は冷やし中華などを注文して
ハムの気持ちになり‥‥。 |
ソフト |
はたまた台風にわくわくし‥‥。
|
ハリー |
たびたび台風にわくわくし‥‥。
|
ソフト |
秋は松茸のことを気にしつつ‥‥。 |
ハリー |
異常なほどに気にしつつ‥‥。 |
ソフト |
冬は布団から出られず! |
ハリー |
まさに作者の生活が浮き彫りです。 |
ソフト |
それではみなさん! |
ハリー |
また200回目でお会いしましょう! |
 
ふたり |
さーよーうーなーらー♪
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