故郷をはなれるまで、うどんといえば醤油味だった。
上京して新宿の『山長 黒うどん』という店で、
初めて味噌煮込みうどんを食べた。
うどんにこんな暗黒面があったのか! と思った。
暗黒面は冗談ですが。

その後山梨の「ほうとう」を知り、
味噌煮込みへの好感度が増すとともに、
まだ見ぬ名古屋の味噌煮込みうどんへのあこがれは
ふくらんでいった。
東京に支店ができてからも
「いやだ、おれは名古屋で食うんだ」
と頑固に思いつづけて10余年。
観覧車取材におとずれた名古屋で、
ようやく『山本屋総本家』に入ることができたのだった。
その時の味噌まみれの感動を書いていては長くなる。

【材料】
・八丁味噌、米味噌
・鰹節、昆布、煮干し粉
・タマネギ、ニンジン、ジャガイモ
・うどん(乾麺)

野菜は前回のシチューの残りだな、
ということがよくわかる。
味噌煮込みにはやや異質かもしれないが、
なんだっていいのだ。
味噌の包容力にすべてをゆだねればいい。
ほうとうのように麺そのものにパワーがあるときは
米味噌だけでおいしいが、
中細乾麺の弱さをささえるにはやはり、
八丁味噌の戦闘力が必要なように思った。

うどんは別ゆでして、水洗いなどせずに菜箸で器にとり、
汁を張った。
2杯よそわれているのは二人分というわけではなくて、
一方は黒七味、一方はラー油で食べようという
素敵なプランをたてていたからだ。

余談になるが、粉末スパイス類は必ず小皿にとってから、
湯気のたつ器に入れることにしている。
一人だとなかなかへらないので、
少しでも劣化を遅らせるためだ。
粉チーズも同様。
黒胡椒もフライパンの上でがりがり挽いたりは
絶対にしない。
「こまかい男!」と思われるかもしれないが、
それがかつては貴重品であった
香辛料様たちへの礼儀であろうと思う。

2008-12-11-THU
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