麩の種類もいろいろだが、汁ものの具がさびしいときに
さっと放りこめる手軽さに真価がある、と思っている。
なのに、先日買った麩は違った。
タマゴボーロ状の、小さいかわいらしい麩だ。
かんたんにおつゆの実になってくれそうな
親しみやすさがある。
なのになのに、こいつがぜんぜん汁を吸わないのだ。
汁の中で固くひきしまってしまう。
袋の説明書きをよく読むと、まさに
「水に漬けずにこのまま熱い汁の中に入れますと
小さく縮んで固くなりますので、
水またはぬるま湯に浸し、
よく水を含ませたのちご使用ください」
とある。
そんなめんどくさい麩があるか。
そしてそのとおりにしてみると、
水またはぬるま湯を吸うのにも
けっこう時間がかかりやがるのだった。
麩め。
おれを苦しめる憎い麩め。
とはいうもののその姿は愛らしく、
捨てる気になどなれない。
焼きしめた外皮が固いようなのだが、ならば‥‥
麩をまな板に出し、一個一個包丁で切り割っていった。
麩ごときに包丁を使うことに、
やりきれない気持ちになるが、がんばってきざむ。
二日目のおでん。大根、コンニャク、昆布、卵。
そしておつゆ。
朝ごはんになんともすばらしい冬のごちそうだ。
温めたところに割り麩をほうりこむと、
あっけないほどすぐだし汁を吸い、
おいしいおでんの一員になってくれたのだった。
2009-12-17-THU |