引っ越してから、昼はほとんど外に出て一人で食べている。
知らない店めぐりがおもしろいからでもあるが、
昼飯まで妻の伊藤と食べることに対する警戒心が大きい。
3食いっしょでは、双方ともに煮詰まるのではないか。

少なくとも私は煮詰まる。
伊藤にしたってそうだろう。
旦那さえいなければ、冷や飯に残り味噌汁をぶっかけて
すますこともできる。
漫画家二人がひとつ屋根の下でそれぞれの仕事をする。
それには適度に「一人欲」を発散させることが
必要だと思うのだった。

そのへんの空気は伊藤もわかっているから、
割と喜んで私を外食に送り出す。
どんどん「逃避めし」を作る機会は減っているし、
私の中性脂肪値もなかなか減らないが、
それが今のところベターな方法ということになっている。

【材料】
・卵
・そうめん

久しぶりに妻子が昼どきに外出した。
こちらはシメキリを数時間後にひかえていて、
格好の一人料理のチャンスであった。
伊藤があまり好物ではないために
(さびしい気持ちになるのだという)
夏の食卓にほとんど上らないそうめんをゆでよう。

めんつゆを水で薄めて味を調え、
ゴマ油で焼いた目玉焼きを盛りつけた。
薬味も用意しない。かなり寂しいたたずまいだ。
この手の料理を楽しむコツは一つだけ。
一人で食べることである。

水道水でざっと洗ったそうめんを、
ちぎった目玉焼きとともに食べる。
つけつゆは当然ぬるくなっている。
だが、そのぬるさと目玉焼きの動物性のコクが、
シンプルな満足感を生む。
最後は黄身をくずしてそうめんにからませた。
これだこれ、と思った。

2010-09-02-THU
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