リリー |
よく中目黒のカフェとかで、若い子たちが、
「もう男も女もないじゃん。
俺ら気も合うし。ラブ&ピースだよねぇ。
・・・あ、このレコード貸すよ」
とか言ってんのを聞くと、
もう、そんなの俺はもうどうでもいい!って。
もっとこう、キワッキワのところで、
「この人しかいない」みたいになったらいいなぁ。 |
糸井 |
(笑)その発想・・・。
リリーさんって、男子高出身? |
リリー |
いや逆に女子の多い学校でした。 |
糸井 |
でも、それ極道とかゲイの感覚だよ。
ちょっとわかるけど・・・。
「入れ墨入れたい」とか。 |
リリー |
俺、書きかけた小説があるんですけど、
そういう男女の関係で、もう、
相手が自由にできなくてもいいから、
もうどこかを切断してしまおう、とか。
でも、「結局はそこのない人が好き」っていう
ジャンルの人もどこかにはいるから、
どうしたって他者の介入は受ける・・・。 |
糸井 |
(笑) |
リリー |
ホームパーティーに関しても、
まぁ、「いいねぇ」というのはあったけど、
そんなもの、俺はカスリもしない人生だったから。 |
慶一 |
(笑) |
リリー |
一応は、「あれいいな」と思って
ホームパーティーを
2回3回ぐらいやってみるんだけど、そのうち、
「あれ? 男どうしで飲むほうが、
おもしろいんじゃないのか」
というのを発見しはじめるんです。 |
糸井 |
そうそう。 |
リリー |
ホームパーティーをするよりも、
男どうしで飲んでいるところに
彼女を呼ぶほうが気持ちいいんです。 |
糸井 |
そういう時の彼女は、
その男どうしの乗りのところに
入っていける人を選ぶ?
それとも、入っていけない人がいい? |
リリー |
昔は、入っていけない人のほうが
いいと思ったんです。
昔は、たとえば彼女を呼んで彼女が来た時、
もうほんとなんかもう、
藤原紀香みたいなミニスカートはいて出てきて、
俺らが帰ったあとに
ともだちがガックリするようなのがいい、
って思ってたんだけど・・・。
いまは絶対もうそうじゃない。
男ともだちと楽しく飲める人じゃないと
自分が楽しく飲めないし、
酔いかたもだらしなくなってるから、
だらしないともだちの俺らを含めて
お母さんみたいに接してくれるほうが。 |
糸井 |
あははは(笑)。
あのさ、暴走族はなんでうまくいくの? |
リリー |
ビッとしてるからじゃないですか。 |
糸井 |
あはははは(笑) |
リリー |
たしかに、俺のともだちでそれ系の人って
ほんと子沢山で、ちゃんと働いていますよ。
・・・幸せのためには、情報は
あんまりないほうがいいかもしれない。 |
糸井 |
自由だと思って、選択枝を増やして
どんどん自分を追いこんでいくのは、
もう現代病のひとつだよね。 |
リリー |
いま、ネットも携帯も盛んで
便利なのがいいことだと
みんな思うかもしれないけど、
携帯電話があるばっかりに
いままで味わいもしなかった悲しい思いが
やってくるわけだし、人はどんどん
人のことをうたがうようになるでしょ?
暴走族は、そういうこう、
ウヨウヨしたものがないんですよ。 |
糸井 |
ビッとしてるから。 |
慶一 |
いいよなぁ。 |
糸井 |
そこでいいのって、
「諦観」があるからじゃないの?
たとえばダンナの自動車修理工場が
うまくなって工場を大きくして、
クラブに行くようになってみたときに、
「男はそういうものだから、
よしこさん、許してあげてちょうだいね」
みたいな・・・そういう、
「しょうがない」ということを含んでる。 |
リリー |
暴走族のやつって、
決めたがるじゃないですか。
もう16歳になったら単車には乗らないとか。
そういうのがちゃんとしているから。
ぼくらなんかだと、40歳になってから
バイクに乗りはじめたりとか、もう・・・。 |
糸井 |
様式美の世界。
暴走族は、きまりを守りながらも、
「裏がある」って知ってる気がするんですよ。
16歳で、とか言っていても、
「例外がある」ということを知っている気がする。
意志でできることなんかあまりない。
できなかったら、坊主になったり
様式美で反省して復活するとか・・・。
うまくいくコツって、
自分のせいじゃないことを増やすことじゃない?
約束をしちゃうと、
「守れない」ってことが増えて、
自分と相手を攻める要素が増えるじゃないですか。
しょうがないということも含めて、
相手も「どうせそうだよ」とわかったら最高ですよね。
暴走族の人間観って、もともと人間は
しょうがないもんだとわかってるから
すごいんじゃない? 人間観がすぐれてるという。
「人間はしょうがないものだし、
利口な人たちはいろんなことを言うけど、
俺たちは俺たちで、やることをやらなきゃ」って。 |
リリー |
暴走族のヘッドとか
サル山のボスザルの女に手を出す馬鹿、
いないじゃないですか。
でも、ちょっと知恵がつきはじめると、
ボスの女に平気で手をつけるやつがいる。
だからおかしくなるんですよ。 |
慶一 |
うん。 |
リリー |
慶一さんのバンドは長く続いていますよね。
バンドってすぐ喧嘩して解散するけど。 |
糸井 |
そうだよ、慶一くんって、
バンドは人から見たら「幸せな家庭」だよ? |
慶一 |
バンドが幸せだから、
みんな家庭は困ってるっていうのかも。 |
糸井 |
バンドにいる限りは幸せでしょ? |
慶一 |
うん。楽しいね。 |
糸井 |
・・・ひとつあればいいんじゃない?(笑) |
慶一 |
(笑) |
リリー |
慶一さん、バンドが家族になってるから、
それでいいというか。 |
糸井 |
俺もそれ言おうと思ってた(笑)。
いくつも、は、無理なんじゃないか。 |
慶一 |
たしかに、結婚した時にはみんなが
ちょっと冷たい目になって、
バンドというファミリーがズレてきた。
バンド最優先にできないから。
それで活動休んじゃったり。 |
糸井 |
あぁ、なるほど。
休む時期と結婚は重なってるんだ? |
慶一 |
うん。 |
糸井 |
リリーさんは、常に
男どうしで無駄な時間を作っているじゃないですか。
仮に家庭を持ったとして、無駄な時間を過ごす時に
「俺、用事があるから帰るよ」って言えますか? |
リリー |
言えない。 |
糸井 |
じゃあ、そこに集まっている
無為な時間がリリーさんの理想の家庭だから・・・。 |
慶一 |
(笑)やっぱ、ひとつでいいんじゃない? |
リリー |
(笑)
|