糸井 |
リリーさんにとって、
何が気持ちがいいかというと、
「誰かと話していたい」んじゃない?
女でも男でも、聞いたり話したり。 |
リリー |
男とは話してたいんですよ。
女の人とも話していたいんですけど、
それ以上のものがあるといいなと思うから、
そういう理想の結婚みたいな話を
好きなコにしてたことがありますよ。
一軒家で、仕事部屋があって、
廊下があって、トイレにつづいている。
おれが部屋で原稿を書いていて、
ひといきついて便所に行く時には、彼女が
廊下から見える部屋のソファで本を読んでいる。
次に便所に行く時には、寝てる・・・。
それでおれがブランケットをかけてあげる。
その次に行く時には料理を作っていて、
いっしょにごはんを食べて、
濃厚なセックスをして、寝る・・・。
でも、そのあいだに
ひとことも喋っていない。
だけど心が豊かだ・・・。
「そういうのが、いいんだよねぇ」
ってそのコに話したら、
「・・・いやぁ、しゃべろうよ」って。 |
糸井 |
(笑) |
リリー |
それを超えたものはないの?っていう。 |
糸井 |
なるほどね。
一緒に話している男のつっこみは、
同質のつっこみになるもんね。
異質のつっこみを求めて結婚するというのは、
もしかしたら、あるかもしれないなぁ。 |
慶一 |
俺、男女でも同質のつっこみが欲しい。 |
糸井 |
慶一くんが女の人から求められているのって、
恋人としての男の人でしょ。 |
慶一 |
そうなんだよ。俺は家庭でもいいのに。 |
リリー |
でもおもしろいですね。
慶一さんと結婚したら幸せになる、って
誰もが思いがちなのに、一歩近づいた人たちは
みんな恋人タイプにしてしまうという。 |
糸井 |
・・・慶一くんは、
あさごはんでもばんごはんでも、
常にケーキを出しつづける人間よ。 |
リリー |
(笑)どういう意味? |
糸井 |
そんなものぁ、暮らせない。
諦観にならないから。 |
慶一 |
(笑) |
糸井 |
慶一くんは、絶えずケーキを出すから、
いつも女の人には好かれるよ。
・・・3日一緒にいるのなら。 |
リリー |
わははは。 |
慶一 |
く、く・・・。そうですねー。 |
糸井 |
リリーさんは、くさや派なんですよ。きっと。
いきなり「くさや食う?うまいよ」って言う。
どっちもたいへんな闘いなんですよ。
まぁ、ケーキ派は嫉妬されるけどね・・・。 |
慶一 |
でもそのぶん、悲しい目にもあう。
短いしあわせでもいいなと思えば
5センチぐらいの距離でいるけどさぁ。
でも、それだといつ終わるかわからないもの。
つづいたらすばらしい。
長いしあわせのためには、
なんかの約束が要るから、失敗になる・・・。
失敗だらけなんだよ。 |
糸井 |
ケーキ派も、こう見えてたいへんか。
たしかに、涙とケーキはセットでしょう。
だいたい、歌をうたってるって、
異常なものじゃない? ケーキのかたまり。
ケーキ以外の方法を、忘れちゃったんだよ。 |
リリー |
でも、俺も慶一さんも、
くさやとケーキの間には行きたくないんでしょ。
中庸なものを食って
それで幸せだったら、もう要らねえっていう。
こと結婚って言うと、
ピースなこととかハッピーなこととか、
そういう話は確かにいっぱいあるだろうけど、
俺なら、それこそ糸井さんが昔言ってた
「見苦しいほど愛されたい」っていうのがいい。 |
糸井 |
(笑)まあ、それって、
俺がみうらじゅんの様子を見て
そうネーミングした言葉だけど。 |
慶一 |
好きな相手というのは、ひとりで十分なの? |
リリー |
・・・まぁ、俺の近所のおやじの意見では、
「浮気はなんで楽しいかっていうと、
懐がちがうからですよ」って。
やさしい時はやさしいだけして、
楽しい時に金だけ払って帰ってこれれば
それで済むっていう。 |
糸井 |
・・・うまいこと言うね。 |
リリー |
浮気であればセックスもするから、
浮気相手がセックスの相性もいい、
と錯覚を起こすかもしれない。 |
糸井 |
結婚と恋愛とでは何が違うって、
単純に、「籍があるかないか」ですよ。
事実上の夫婦って、結婚じゃないじゃないですか。
事実婚って、結婚と認められているけれども、
当事者どうしではなくて、
ほかとの関係が結婚になってないんですよ。
俺と慶一くんが事実婚だったとするじゃない。
でも、まわりは結婚だと見ていない。
そうすると、結婚してないんですよ。 |
リリー |
でも犯罪おかすと「内縁の妻」って・・・。 |
糸井 |
(笑)そう。
内縁の妻という関係で見るんです。
逆に実際には十何年も別居していても、
籍が入っていれば、妻なのよ。
この違いは、すごいんじゃないかなぁ。 |
リリー |
やっぱり、オレのともだちみたいに、
つきあって2週間で結婚したみたいなのが
幸せかもしんない。
2週間後にはもう、広島に住んでる
相手の親に会いにいったわけでしょ?
当時30歳で無職の状態で。
それでBJにできることと言えば、
野球好きのおやじさんに
前田のカードをあげることぐらいなわけで・・・。
でも、うまくいってるもんね。
|