糸井 |
ぼくが経験から学んだ教訓で言うと、
「若いころのツケは、かならずまわってくる」
というのがあるね。
これはかならずあると思う。
若いころにしてこなかったことって、
知らないうちに帳簿にたまってくるんですよ。
「しなかったことは、あとでしなさいね」
って、なぜか必ずやってくる。
それは見事なもんだとさえ思うぐらいに来る。 |
一同 |
へぇー |
慶一 |
しすぎたことは、やめなさい、もあるね。 |
糸井 |
(笑)ある。
ちょっとふざけただけなのに、ってことも、
「やらなかったことは、やんなさい」で来るよ。
ぜんぶ勘定書についています。 |
観客 |
ファミリーを大事にするとかそういうことも? |
糸井 |
うん。 |
リリー |
ただ、結婚相手のファミリーって、
大事にしようとかごたごた考える前に、
まずは気にいられようとか思っちゃうでしょうね。
そういうスケベ根性が
愛情に変わる時もあるっていうか。
だって、ダンナが死んで
親だけ残る場合だってあるから・・・。
俺なんかだと、
たとえばつきあっている子に兄妹がいたら
すぐに仲良くしたいなあと思うし、
好きな子のうちに行って
親とも仲良くしたいんだけど、
肝心の「軸」が見つからないんだよ。 |
糸井 |
ははは(笑)。 |
リリー |
そこさえ見つかれば、もうみんなで楽しく
潮干狩りでもなんでも、どこにでも行きますよ。
・・・俺、貝類、嫌いなんだけど。 |
慶一 |
(笑) |
リリー |
軸がないからローテーションが組めない。
やっぱり、エースがいないと・・・。 |
糸井 |
あはははは。 |
リリー |
最下位にはならないけど、
優勝できないチームの典型的パターン。
ディフェンスがないんだよねぇ。
だから、FAでどっかに行く時の
去られる側のフロントの気持ちとか、わかるもん。
「え? おまえ行くの・・・?」とか、
「あれ? 結局、金なの・・・?」とかさぁ。 |
糸井 |
(笑)清原選手が残留宣言を早々と出した時、
ナベツネよろこんだもんなぁ。 |
リリー |
あれ、俺、ものすごいわかる。
もう、経営者としてじゃなくて、
感情でよろこんじゃったんでしょうね。 |
観客 |
わたしはー、
家庭の中ではありのままでいたい、
っていう気持ちがー、あるんですけどー。 |
糸井 |
窮地に陥った時に
「ほんとうにありのままの自分」が
たいしたことがないっていうことを、
あなたは知らないんじゃないですか?
たぶん、ここにいる全員の人って、
ありのままでいたって、
大して人に受け入れられないかもしれないよ。
ありのままを出してダメになるのを平気に思って
敢えて出している人は、ここにもいるけれど。 |
慶一 |
(笑) |
糸井 |
ありのまま、なんてものは、ないよ。
「言ってるだけ」の話じゃない?
日常的に、家庭の中には
地獄の選択みたいな話って、ありますよね。 |
慶一 |
うん。 |
糸井 |
その時になると、
「ありのまま」じゃ済まないってことが
バレてくるんだと思う。
うんこに似たカレーとカレーに似たうんこ、
食べるならどっちだ?的な問題が、
日常にはところどころにあるから。 |
慶一 |
そうそう。日常って案外こわいよねぇ。 |
観客 |
たとえば、ふつうトイレは1つしかない。 |
糸井 |
そうそう。
そこを「どうぞ」と譲れるかどうか・・・
って、どういう例なんだ、こりゃ。
ダンナの電話を聞いてたら、なんだか身辺が
とんでもないことになっているだとか。
その時にどう出るか、何を話すか、とか・・・。 |
慶一 |
夫に認めて欲しくて事件に加担した妻もいるよね。 |
リリー |
ありのままありのままって言いますけど、
あのぅ、これはイメージだけど、
結婚した奥さんが下着に手を抜くのは、
ありゃあ、よくないね。 |
糸井 |
(笑)あははは。
それ、イメージだよ! |
リリー |
俺の理想の奥さんは、ヒモパンママだもん。 |
糸井 |
「ヒモパンママ」っていうタイトルの
絵本があったら、どう? |
リリー |
(笑)ちょっといい線行きそうですね。
2刷ぐらいは行く本になるんじゃないですか。
ありのまま、っつうと、俺の友達に
ハードSの人がいて、ものすごいプレイしてるけど
家にはSMを持ちこまない、って言ってたもんなぁ。 |
糸井 |
バンドバンドの特色が
アコースティックだとかファズばりばりだとか
いろいろとあるように、家庭のトーンもある、
っていうような話じゃないですか。
夫婦両方でまちがえて
「ヒモパンがいいんだよねぇ」
っておだやかに語っている家は、
もうヒモパンじゃないでしょ。
「そうだよねぇ」なんてスキヤキ食いながら
穏やかに話すヒモパンって言うのは・・・。 |
リリー |
って言うか俺のヒモパン好きっていうのは、もう
ハンバーグが好きっていうのとおんなじなんです。
なんか、物体としておいしいんですよ。
ヒモパンのない家庭は、
俺からしたら貧しい家庭っていうか(笑)。 |
慶一 |
ハンバーグも食わせねえのか、ってね(笑)。 |
リリー |
(笑)うちはそんなものも出ねえのかっていう。
ただし、そのヒモパンが古くなったからと言って、
布巾にするような家はイヤですね。 |
糸井 |
(笑)あはははは。
日常化させたくないんだ? |
リリー |
そうなんです。
そこは、非日常としての場であっててほしい。 |
観客 |
リリーさんと慶一さんは
もしお子さんがいたら、どういう家庭がいいですか? |
慶一 |
俺、子ども嫌いだからなあ・・・。 |
糸井 |
そういうことを言ってる人は、可愛がるよ。 |
リリー |
俺は昔はずっと女の子が欲しくて、
何歳になったら、
俺がいやらしいことをしていいのかな、
っていうのをずっと考えていたんだけど、
もうトシを取ってきたから、
その子に俺が手を出せるころには、
俺、もう、かなり弱ってる・・・。 |
糸井 |
(笑) |
リリー |
そしたらもう、
その子がうちに帰ってこないとか、
電話連絡がつかないとかいう
女の子ならではの親の苦しみを味わうのがイヤだから
女がいいとか男がいいとか、そういうのは
どちらでもよくなってきますよね。
確かに、子どもがいれば
人生が変わるんだとは思う。
嫁さんと結婚したと言っても
日常がすこしふくらむぐらいだろうけど
自分の子どもなんだというのを見せられたら、
ちょっとは変わるような気がしますけどね。 |
慶一 |
俺は経験上、きっと子どもにも、同じ土俵で
本気になっちゃいそうだから、イヤだなあ。
子ども特有のめんどくさい時期がなくて
いきなり25歳ぐらいからならいいけど。 |
糸井 |
それだと、ひとつもおもしろくないよ。
めんどくさい時期だけがおもしろいよ。
はやく大きくなればいいのに、なんて思わないし、
はやく小さくなればいいなぁ、ぐらいだよ、実際。 |
経験者 |
いまの2歳児の、この新鮮さが
おわっちゃうんだなあ、って、
いつも思いながら暮らしてますよ。 |
リリー |
慶一さんは、今この状態で
子どもができたら、溺愛しそうじゃないですか。 |
慶一 |
そうかなぁ? |
糸井 |
するだろうね。
あのさぁ、なんで
「子ども嫌いです」って言う人は
必ず子どもを可愛がるようになるんだろうね。
例外を見たことがないよ。
子どもを好きだって言ってる人は
意外と距離感があったりするし。
もしかしたら、自分好きがひっくりかえるの?
子どもは自分じゃないから嫌いと言いつつ、
自分の分身みたいなのがもう一個できるから、
溺愛するのかなぁ・・・。 |