観客 |
家族の頼みごと、ってありますよね。
不意に接触してくると言うか。 |
リリー |
たまに変なタッチをされたりする。
でも、受けざるをえない話もあって。
マフィアのファミリーで、
ドン・コルレオーネに「やれ」って言われたら
膝をつくしかないような状況が・・・。 |
糸井 |
あるね。
断った次の朝には、血まみれの牛の頭を
自分のベッドにプレゼントされている(笑)。
・・・家族の結束のかたさって、何だろう? |
リリー |
あまり親しくないからこそ、
断れないという種類の頼みもある。
俺んちは、3歳の頃に
おふくろと親父が別居してますから、
幸せな家庭のイメージって言うと、
ともだちの家に遊びに行った時ぐらいなんです。
夕方になると、父ちゃん母ちゃん
じいちゃんばあちゃんも勢ぞろいして、
ヤン坊マー坊天気予報を見ながら、
メシ食ってるんです。
俺、小学校の頃にも
夜ごはんはだいたい8時だったから、
そんな時間にメシを食ってる、
っていうだけでも家庭を感じてたのね。
で、そういうところに行くと、
緊張してメシが食えなかった。
みんなはそれ聞くと、
「じゃあ、だからこそ、そういう
テレビ観るような家庭を求めるでしょう?」
って言うんだけど、それは求めてない。
ああいう、たくさんみんなで
集まって食べるとかは、どうでもいい。
ひとりでもいいから、
いなくならない人がいてほしい。 |
糸井 |
あぁ・・・そうか。
6時に大勢でメシ食ってるのって疲れるよね? |
慶一 |
俺んち、マフィアみたいだったから、
9人で食べてましたけど、疲れたよ〜。 |
糸井 |
テレビドラマの中での
5人だの9人だのでメシ食ってるのは、
それぞれに仏頂面をさげながらも
明るくやってるけど、あれ実際には
もっとつまんないものだよねぇ? |
慶一 |
とにかく疲れる。
食ってるんだけど、
「何か言われるんじゃないか」とか。 |
リリー |
(笑)何か言われる。 |
慶一 |
食い方がどうだとか。
じいさんがいちばん偉いから
じいさんが食うまではハシをつけるなとか、
その家なりのルールがあって・・・。 |
リリー |
ほんとにゴッドファーザーみたい。 |
慶一 |
毎日それだから、疲れて・・・。 |
糸井 |
そう思って暮らしてたんだ。 |
慶一 |
うん。ひとりで、こっそりガツガツ食ってみたい。 |
糸井 |
(笑)お父さん、役者だよね?
その時点でもう、間違ってるんじゃないか。 |
慶一 |
(笑)マフィアの家に
親父の役者ともだちが十何人遊びにくるからね。 |
糸井 |
劇団とかって、マフィアっぽいよね。
あぁ、だから慶一くんは
そういうのがイヤで、
ああいうだらしないバンドを組んだんだね。 |
慶一 |
そうなんだよ・・・。
リーダーとか、やなんだもん、そういうの。 |
糸井 |
そういうのがイヤだから、
いろんなことを決めかねる人生を
選んじゃったんだね。 |
リリー |
でも、そのかわり、
バンドは逆に長生きですよね。
結束が妙に固いバンドはすぐ解散するけど、
慶一さんのところは、何も決めないから長い。 |
慶一 |
(笑) |
糸井 |
やっぱり、バンドは幸せだ(笑)。 |
リリー |
バンドが家族になってるから、
結婚があまり進まないという・・・?
ここでまた、
奥さんをバンドに入れはじめると
バンドが解散になるだろうけど。 |
糸井 |
それは無理だね。 |
慶一 |
結婚した時はみんな目つきが変わって、
バンドの空気がちょっとずれたんだよね。
で、休んじゃった。 |
糸井 |
メンバーの結婚と休みって重なる? |
慶一 |
だいたい、重なってる。
大事なものが変わるということかな。 |
糸井 |
へぇー。
で、リリーさんにとっては、
ともだちとの無為なしゃべりか。 |
リリー |
ええ。 |
糸井 |
俺は、「家好き」だよ?
会社にいたいということもないし。
もう、家にいてボケーッとしていたい。
会社でボケーッとしていないかと言うと、
してるんだけど・・・(笑)。
でも、ボケーッとしている度合いがまるで違う。 |
リリー |
・・・いや、でもイトイさん、
いまも、そうとうリラックスして、
ソファーにのけぞって座ってますけど(笑)。
もう、それ以上になったらブリッジか?
みたいな姿勢じゃないですか。 |
糸井 |
まぁそうだけど、でも家はもっとすごいよ。
ただ単に何もしないでいたいもの。
家の中での何も約束のない感じは、
俺の場合は、ひとりでいる時以上だよ。 |
観客 (既婚) |
ダンナさんがいる時のほうが、
わたしも、だらしなくテレビ観てます。 |
糸井 |
そうか、家って、場だったんだね。
慶一くんのバンドやリリーさんの雀荘みたいに。
たしかに、俺がいま独身だったら、
もっと外に出るもん。レコード買いにいったり。
いまはそんなこと、考えもしないよなぁ。
買いもの、映画、何も思わない。
・・・「居よう」とも思ってない。
実感としては、
「あ、何時になっちゃった」っていうくらい。 |
リリー |
そういうもんなんだ。 |