糸井 |
家庭内でのメシのことってどうなんですか?
外のごはんを食いなれている人ばっかりの
世の中だから、うちでメシを作るということは
そことの勝負になってくるわけで・・・。 |
リリー |
あぁ、それ、デカい問題だと思いますよ。 |
糸井 |
たいへんなんですよね。 |
リリー |
うちのおふくろがずっと言ってましたけど、
「男は最終的に料理で家に帰ってくる」って。
たとえばおふくろが生きてた時には、
ぼく、そのへんで食べるよりも、
うちに帰って食べるほうがうまいから、
ほんとにうちに帰っていたんですね。
それで、昔から言われてることで
「料理上手は床上手」ってこともあるし。
いい家庭の奥さんの作り方って、
昔は料理に象徴されていたから
そういう言葉が生まれたんだろうなぁ。 |
慶一 |
外で食ってる巧さと、
つきあってる人の作るマズさの落差がよくて、
マズくてもうまいみたいなのは、あるけど。
ケーキ派としてはそう思うなぁ。 |
糸井 |
俺はケーキ派じゃないから、
マズい時はだまってる。
うまい時は言うけど。 |
慶一 |
・・・最後に2行ぐらいは言ってたかなぁ。 |
糸井 |
(笑) |
リリー |
(笑)そこまでだましてあげたなら、
もう、言うのやめましょうよ。 |
糸井 |
こうしたほうがいいよ、っていうのは
いちばんだめだよ。
「こうしたほうがいい」って言われたら、
傷つくと思わない? |
観客 |
彼に、よく言われるんですよねぇ・・・。 |
糸井 |
そりゃ、マズいっていうことなんだよ。 |
観客 |
「味がないからこうしたほうがいい」とか。 |
一同 |
(笑)・・・味がないって・・・。 |
糸井 |
ヒントを出す時って、
まずいってことですよ。きっと。 |
観客 |
自分でもそう思うから、
あ、そうだなと思って、作りなおして、
おいしくなったね、って一緒に食べます。 |
糸井 |
・・・それはねー・・・
会話の完成度が高すぎだよ。会話してるもん。
そんな意味のやりとりをしちゃだめ、家では。 |
慶一 |
あはははは(笑)。 |
糸井 |
そんなねぇ、
Aという言葉に対してB、
Bという言葉に大してC、なんていうような
そんなことをしていたら、生きていけないですよ。 |
慶一 |
(笑) |
糸井 |
Aと言ったら「あぁ・・・」ぐらいでしょ。
と言うか、言わないし伝える必要もないよ。
マズいものは、自然に残る。
気に入ってればぜんぶ食べるよ。
ヒントなんか出す時には、
もうほんとうにマズい、
投げ出したいというぐらいにマズい。 |
観客 |
(笑) |
観客
(既婚) |
意味のやりとりのあるところには、
たしかに料理を出しにくいですよ。 |
糸井 |
意味のやりとりだけしていると、
約束の世界に入ってきちゃうから。 |
慶一 |
でもさー、バックボーンっていうのは
大切になるんじゃないのかな?
「その人が作ったから」
という要素は、要らないの? |
糸井 |
ぜんぜん要らないよ。
恋愛の時代はもうちょっとケーキを出すだろうけど。
でも、ケーキの出しかたって、
「今日もきれいねぇ」みたいなところのほうが
よっぽどうれしいわけで。
そんな細かい意味のやりとりなんかしてたら、
「わたしは向上しないといけないわ」
なんて思わないといけないなら、
家にいたくないよ。 |
観客 |
いま、わたしそう思ってますもん。
もうちょっとうまくなんなきゃ、って。 |
糸井 |
そりゃ、仕事だよもう。
仕事ふたつ持っちゃだめ。
向上は、自分で勝手にするのはいいけど、
言われてするもんじゃないよ。
それじゃ、「諦観」がないよね・・・。 |
慶一 |
俺はないなぁ。 |
糸井 |
だから慶一くんたちケーキ派は
すぐにでも恋愛をできるでしょう。
そして、すぐに「疲れた」って別れるでしょ。 |
慶一 |
さっき、
仕事のことを家庭で話すか、
って話題を、すこし話していたでしょ。
あれは・・・。 |
糸井 |
ありゃあもう・・・ねぇ・・・。
話したら、きっとだめですよ。
なんでも話しあいたいって思う人は
「知っておいてあげたい」
なんて言うんでしょうけど。
つまり、より役に立ったり
やさしくしてあげたいと。
またそれも意味の交換になっちゃう。
・・・「へぇー」ぐらいでいいんじゃないの。
いちいち仕事について家庭で話すことって、
「俺ってやり手」という表現をしてるだけだから、
そんなの、うまくいかないよ。
・・・うちに帰って、女の人と一緒にいる時、
仕事の自慢なんてしないでしょ。 |
リリー |
仕事の話すらしないですね。
仕事の話をする女もイヤだ。
相手のグチを聞くぐらいならいいけど、
自分の仕事の話は、聞かれたくないですよね。 |
糸井 |
ここに参加していないある人の彼氏は、
絶えず仕事の自慢話ばっかりして、最後は
「おまえはクズだ」って言って去っていくという。
そういう情けない奴も、世の中にはいるんだよねぇ。 |
慶一 |
それは、俺の逆だね。
俺は「自分はクズだ」って
自分のダメさを言って・・・。 |
リリー |
まぁでも、その男も慶一さんも、
やってることは、もう「プレイ」ですよね。 |
糸井 |
(笑)あははは。 |
リリー |
慶一さんは、最後にドアのところで
「俺はクズだ」って話すところに着地点が(笑)。 |
糸井 |
(笑)慶一くん、そりゃ、
入場料を払ってすることだよ。
「Bコース」とか。 |
慶一 |
(笑) |