どうなる幸せな家庭、
どうする幸せな家庭?!

不徹底大討論会議事録。

第9回 意味のやり取りをしちゃだめ。


糸井 家庭内でのメシのことってどうなんですか?
外のごはんを食いなれている人ばっかりの
世の中だから、うちでメシを作るということは
そことの勝負になってくるわけで・・・。
リリー あぁ、それ、デカい問題だと思いますよ。
糸井 たいへんなんですよね。
リリー うちのおふくろがずっと言ってましたけど、
「男は最終的に料理で家に帰ってくる」って。
たとえばおふくろが生きてた時には、
ぼく、そのへんで食べるよりも、
うちに帰って食べるほうがうまいから、
ほんとにうちに帰っていたんですね。
それで、昔から言われてることで
「料理上手は床上手」ってこともあるし。

いい家庭の奥さんの作り方って、
昔は料理に象徴されていたから
そういう言葉が生まれたんだろうなぁ。
慶一 外で食ってる巧さと、
つきあってる人の作るマズさの落差がよくて、
マズくてもうまいみたいなのは、あるけど。
ケーキ派としてはそう思うなぁ。
糸井 俺はケーキ派じゃないから、
マズい時はだまってる。
うまい時は言うけど。
慶一 ・・・最後に2行ぐらいは言ってたかなぁ。
糸井 (笑)
リリー (笑)そこまでだましてあげたなら、
もう、言うのやめましょうよ。
糸井 こうしたほうがいいよ、っていうのは
いちばんだめだよ。
「こうしたほうがいい」って言われたら、
傷つくと思わない?
観客 彼に、よく言われるんですよねぇ・・・。
糸井 そりゃ、マズいっていうことなんだよ。
観客 「味がないからこうしたほうがいい」とか。
一同 (笑)・・・味がないって・・・。
糸井 ヒントを出す時って、
まずいってことですよ。きっと。
観客 自分でもそう思うから、
あ、そうだなと思って、作りなおして、
おいしくなったね、って一緒に食べます。
糸井 ・・・それはねー・・・
会話の完成度が高すぎだよ。会話してるもん。
そんな意味のやりとりをしちゃだめ、家では。
慶一 あはははは(笑)。
糸井 そんなねぇ、
Aという言葉に対してB、
Bという言葉に大してC、なんていうような
そんなことをしていたら、生きていけないですよ。
慶一 (笑)
糸井 Aと言ったら「あぁ・・・」ぐらいでしょ。
と言うか、言わないし伝える必要もないよ。
マズいものは、自然に残る。
気に入ってればぜんぶ食べるよ。

ヒントなんか出す時には、
もうほんとうにマズい、
投げ出したいというぐらいにマズい。
観客 (笑)
観客
(既婚)
意味のやりとりのあるところには、
たしかに料理を出しにくいですよ。
糸井 意味のやりとりだけしていると、
約束の世界に入ってきちゃうから。
慶一 でもさー、バックボーンっていうのは
大切になるんじゃないのかな?
「その人が作ったから」
という要素は、要らないの?
糸井 ぜんぜん要らないよ。
恋愛の時代はもうちょっとケーキを出すだろうけど。
でも、ケーキの出しかたって、
「今日もきれいねぇ」みたいなところのほうが
よっぽどうれしいわけで。
そんな細かい意味のやりとりなんかしてたら、
「わたしは向上しないといけないわ」
なんて思わないといけないなら、
家にいたくないよ。
観客 いま、わたしそう思ってますもん。
もうちょっとうまくなんなきゃ、って。
糸井 そりゃ、仕事だよもう。
仕事ふたつ持っちゃだめ。

向上は、自分で勝手にするのはいいけど、
言われてするもんじゃないよ。
それじゃ、「諦観」がないよね・・・。
慶一 俺はないなぁ。
糸井 だから慶一くんたちケーキ派は
すぐにでも恋愛をできるでしょう。
そして、すぐに「疲れた」って別れるでしょ。
慶一 さっき、
仕事のことを家庭で話すか、
って話題を、すこし話していたでしょ。
あれは・・・。
糸井 ありゃあもう・・・ねぇ・・・。
話したら、きっとだめですよ。
なんでも話しあいたいって思う人は
「知っておいてあげたい」
なんて言うんでしょうけど。
つまり、より役に立ったり
やさしくしてあげたいと。

またそれも意味の交換になっちゃう。
・・・「へぇー」ぐらいでいいんじゃないの。
いちいち仕事について家庭で話すことって、
「俺ってやり手」という表現をしてるだけだから、
そんなの、うまくいかないよ。
・・・うちに帰って、女の人と一緒にいる時、
仕事の自慢なんてしないでしょ。
リリー 仕事の話すらしないですね。
仕事の話をする女もイヤだ。
相手のグチを聞くぐらいならいいけど、
自分の仕事の話は、聞かれたくないですよね。
糸井 ここに参加していないある人の彼氏は、
絶えず仕事の自慢話ばっかりして、最後は
「おまえはクズだ」って言って去っていくという。
そういう情けない奴も、世の中にはいるんだよねぇ。
慶一 それは、俺の逆だね。
俺は「自分はクズだ」って
自分のダメさを言って・・・。
リリー まぁでも、その男も慶一さんも、
やってることは、もう「プレイ」ですよね。
糸井 (笑)あははは。
リリー 慶一さんは、最後にドアのところで
「俺はクズだ」って話すところに着地点が(笑)。
糸井 (笑)慶一くん、そりゃ、
入場料を払ってすることだよ。
「Bコース」とか。
慶一 (笑)


(つづきます)

2002-05-06-MON

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