どうなる幸せな家庭、
どうする幸せな家庭?!

不徹底大討論会議事録。

第10回 仕事のことを家庭で話す?


糸井 テレビドラマが、家庭での言葉に
ずいぶん先入観を与えてるんじゃない?
「いやぁ、なんとか部長がさぁ」とか。
脚本家はサラリーマンじゃないんだから
そんなこと、わかるはずがないよ。
リリー ほんとの夫婦は、
くだらない深夜番組を観ながら
くだらないことを喋ってるかもね。
糸井 「俺はさぁ、この羽賀研二ってのが
 なんか好きでさー」とか(笑)。
もしかして、仕事のことを話して
キリキリするのが大多数の家庭だったら、
どうしよう・・・。どう?
観客
(既婚A)
わたしは仕事の話もします。
ま、言ってるけどお互いに聞いてない感じ?
たいへんだねぇ、っていうぐらいの。
観客
(既婚B)
お互いに同意するところはあるんですよ。
「うちの上司はこうで・・・」
「あ、そういうのうちにもいる」って。
糸井 あいつの上司って・・・俺か?
観客
(既婚B)
(笑)前の会社ですよ!
糸井 (小声)ちょっと悪く映ってんのかなぁ・・・。
慶一 (笑)あはははは。心配。
糸井 そういう話をしてる時って、
相手の話を聞いていますか?
観客
(既婚B)
いや、もうほんとに、
言葉遊びしかしてないです。はっきり言って。
観客
(既婚A)
的確なアドバイスとかすると、
相手は傷つくじゃないですか。
慶一 (笑)うわぁ・・・。
ひとつのことに関して評論をすることはないの?
観客
(既婚B)
でも、あるひとつことに関して
お互いの考えを深めあうような会話は、
ほぼゼロですね。
それはもう、お互いに他の方とすればいい。
糸井 ケーキ派は違うんだよね?
慶一 うん、常にしちゃうね。
リリー 家庭内のアドバイスは、欲しくないねぇ・・・。
慶一 俺は欲しい。
そしてアドバイスしてあげたい。
それで、笑わせたい。
糸井 (笑)慶一くんの場合、もうそれは、
家庭じゃないほうがいいんじゃないか?
鈴木家ってのと、鈴木サークルみたいなのを
別々に持って・・・。あるいは鈴木の方舟とか。
観客
(既婚B)
(笑)
観客 グチひとつにしても、
職場結婚でもなければ、
それがなぜ生まれてくるのかの前提条件って、
すごくいろいろあるから・・・。

だから、他人に背景をぜんぶ説明するのは、
すごくむずかしいと思うんですよ。
「そこでなんで落ち込んだのか」
を説明することって、意外とできない。
糸井 なるほどなー。
観客 だから、ぼくなら、
わからそうとするつもりのないまま、抜き出して
グチを言うことがあるかもしれないけど、
わからせようと思ったら、長くなる。
だから言わない。
慶一 毎日話してればだいじょうぶだよ。
観客 連続テレビ小説みたい(笑)。
糸井 慶一くんの場合は、その手法なんだろうな。
「じゃあ昨日の第8章のつづきを・・・」
観客 あはははは。
慶一 (笑)あぁ、それやるわ。
観客 セリフが続いてるんですね、慶一さん。
糸井 「・・・で、忘れてるといけないから、
 第3章で出てきたあの人物について言うね。
 けっこう重要だったんだよ」って(笑)。
そりゃ、疲れるよ。
・・・あ、疲れちゃいけないんじゃない?
それとも、楽しいの?
慶一 プレイだったら楽しいけど。
なんとも言えないなぁ。
自然にしゃべっちゃうとか、
そういう感じだ。
糸井 慶一くんはそういうのを話すのが、
どうも好きみたいだね。
へたすると、コード進行まで語る?
慶一 (笑)コード進行を
ちょっとでも知ってる人なら語るね。
リリー 「・・・あの変わり目、聴いたぁ?」
糸井 (笑)あぁぁ。
オタクつながりが欲しいんじゃない?
リリー 慶一さんは音楽の話だからいいけど、俺の場合、
「今日なにやってたの?」
「いやー、一日じゅうチンポの絵を描いてて」
って話してもしょうがねえだろ、という。
糸井 (笑)
慶一 いや、俺だって、しょうがないんだよ。
スタジオ行くっていっても、仕事だから、
ある程度やることは決まっているし、
劇的に何かが起こることとか
華やかなことばかりじゃないんだけど。
人が何を言ったとかを、話すかなぁ・・・。
「あの人がこういうおもしろいことを言った」とか。
糸井 それ、十分におもしろがってくれてる?
リリー いやイトイさん、
それおもしろがってくれない子はキツイよ。(笑)
糸井 俺んちなんかぜんぜんおもしろがられない。
なんにもおもしろがられないよ。
慶一 (笑)
リリー (笑)おもしろがられないから
言うのをやめたんじゃないですか?
糸井 だけど誰かの言ったことを話す。
言って、10本のうち1本あたったら、
「ぃやったぁ!」って、励みになる。
リリー (笑)
慶一 (笑)その楽しみもあるなぁ。
受けるポイントを探しにいくんだね。
糸井 いやぁ、これ、
「奥さんにはほとんどほめられないプロ」
って、けっこういるんだよ。
本人が言ったことだから、
冗談なのかもしれないけど、
村上春樹も、
なんとか奥さんに小説をほめられてみたいって。
『ノルウェイの森』で
初めてほめられてうれしかった、とか。
そんなののほうが信じられるなぁ、オレ。
リリー (笑)いちばん厳しい消費者。
糸井 近所の人って、ふつう、
そのぐらいにハードルが高いと思う。
話を聞いてくれているうちは恋人だと思う。


(つづきます)

2002-05-07-TUE

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