糸井 |
テレビドラマが、家庭での言葉に
ずいぶん先入観を与えてるんじゃない?
「いやぁ、なんとか部長がさぁ」とか。
脚本家はサラリーマンじゃないんだから
そんなこと、わかるはずがないよ。 |
リリー |
ほんとの夫婦は、
くだらない深夜番組を観ながら
くだらないことを喋ってるかもね。 |
糸井 |
「俺はさぁ、この羽賀研二ってのが
なんか好きでさー」とか(笑)。
もしかして、仕事のことを話して
キリキリするのが大多数の家庭だったら、
どうしよう・・・。どう? |
観客 (既婚A) |
わたしは仕事の話もします。
ま、言ってるけどお互いに聞いてない感じ?
たいへんだねぇ、っていうぐらいの。 |
観客 (既婚B) |
お互いに同意するところはあるんですよ。
「うちの上司はこうで・・・」
「あ、そういうのうちにもいる」って。 |
糸井 |
あいつの上司って・・・俺か? |
観客 (既婚B) |
(笑)前の会社ですよ! |
糸井 |
(小声)ちょっと悪く映ってんのかなぁ・・・。 |
慶一 |
(笑)あはははは。心配。 |
糸井 |
そういう話をしてる時って、
相手の話を聞いていますか? |
観客 (既婚B) |
いや、もうほんとに、
言葉遊びしかしてないです。はっきり言って。 |
観客 (既婚A) |
的確なアドバイスとかすると、
相手は傷つくじゃないですか。 |
慶一 |
(笑)うわぁ・・・。
ひとつのことに関して評論をすることはないの? |
観客 (既婚B) |
でも、あるひとつことに関して
お互いの考えを深めあうような会話は、
ほぼゼロですね。
それはもう、お互いに他の方とすればいい。 |
糸井 |
ケーキ派は違うんだよね? |
慶一 |
うん、常にしちゃうね。 |
リリー |
家庭内のアドバイスは、欲しくないねぇ・・・。 |
慶一 |
俺は欲しい。
そしてアドバイスしてあげたい。
それで、笑わせたい。 |
糸井 |
(笑)慶一くんの場合、もうそれは、
家庭じゃないほうがいいんじゃないか?
鈴木家ってのと、鈴木サークルみたいなのを
別々に持って・・・。あるいは鈴木の方舟とか。 |
観客 (既婚B) |
(笑) |
観客 |
グチひとつにしても、
職場結婚でもなければ、
それがなぜ生まれてくるのかの前提条件って、
すごくいろいろあるから・・・。
だから、他人に背景をぜんぶ説明するのは、
すごくむずかしいと思うんですよ。
「そこでなんで落ち込んだのか」
を説明することって、意外とできない。 |
糸井 |
なるほどなー。 |
観客 |
だから、ぼくなら、
わからそうとするつもりのないまま、抜き出して
グチを言うことがあるかもしれないけど、
わからせようと思ったら、長くなる。
だから言わない。 |
慶一 |
毎日話してればだいじょうぶだよ。 |
観客 |
連続テレビ小説みたい(笑)。 |
糸井 |
慶一くんの場合は、その手法なんだろうな。
「じゃあ昨日の第8章のつづきを・・・」 |
観客 |
あはははは。 |
慶一 |
(笑)あぁ、それやるわ。 |
観客 |
セリフが続いてるんですね、慶一さん。 |
糸井 |
「・・・で、忘れてるといけないから、
第3章で出てきたあの人物について言うね。
けっこう重要だったんだよ」って(笑)。
そりゃ、疲れるよ。
・・・あ、疲れちゃいけないんじゃない?
それとも、楽しいの? |
慶一 |
プレイだったら楽しいけど。
なんとも言えないなぁ。
自然にしゃべっちゃうとか、
そういう感じだ。 |
糸井 |
慶一くんはそういうのを話すのが、
どうも好きみたいだね。
へたすると、コード進行まで語る? |
慶一 |
(笑)コード進行を
ちょっとでも知ってる人なら語るね。 |
リリー |
「・・・あの変わり目、聴いたぁ?」 |
糸井 |
(笑)あぁぁ。
オタクつながりが欲しいんじゃない? |
リリー |
慶一さんは音楽の話だからいいけど、俺の場合、
「今日なにやってたの?」
「いやー、一日じゅうチンポの絵を描いてて」
って話してもしょうがねえだろ、という。 |
糸井 |
(笑) |
慶一 |
いや、俺だって、しょうがないんだよ。
スタジオ行くっていっても、仕事だから、
ある程度やることは決まっているし、
劇的に何かが起こることとか
華やかなことばかりじゃないんだけど。
人が何を言ったとかを、話すかなぁ・・・。
「あの人がこういうおもしろいことを言った」とか。 |
糸井 |
それ、十分におもしろがってくれてる? |
リリー |
いやイトイさん、
それおもしろがってくれない子はキツイよ。(笑) |
糸井 |
俺んちなんかぜんぜんおもしろがられない。
なんにもおもしろがられないよ。 |
慶一 |
(笑) |
リリー |
(笑)おもしろがられないから
言うのをやめたんじゃないですか? |
糸井 |
だけど誰かの言ったことを話す。
言って、10本のうち1本あたったら、
「ぃやったぁ!」って、励みになる。 |
リリー |
(笑) |
慶一 |
(笑)その楽しみもあるなぁ。
受けるポイントを探しにいくんだね。 |
糸井 |
いやぁ、これ、
「奥さんにはほとんどほめられないプロ」
って、けっこういるんだよ。
本人が言ったことだから、
冗談なのかもしれないけど、
村上春樹も、
なんとか奥さんに小説をほめられてみたいって。
『ノルウェイの森』で
初めてほめられてうれしかった、とか。
そんなののほうが信じられるなぁ、オレ。 |
リリー |
(笑)いちばん厳しい消費者。 |
糸井 |
近所の人って、ふつう、
そのぐらいにハードルが高いと思う。
話を聞いてくれているうちは恋人だと思う。 |