糸井 |
深く考えすぎてたら
結婚もできないし、日常生活、
ぜんぶ無理が出てくるよね。 |
慶一 |
飛びこんでいかないと、
ハッピーはないのかもなぁ。 |
糸井 |
できちゃった結婚した人って、
意外とうまくいってるケース、多いよね。
それも、まちがいの中に飛びこんだわけで。 |
既婚 |
確かに、子どもがいるということで
解決する問題はいっぱいあるかもしれない。
次から次へとやってくる山を
乗りこえたふたりになれるんじゃないですか。
ふたりだけだと、お互いのことをよく観るから。
子どもがいなくなった瞬間に
勝負がやってくる夫婦というのも聞きますね。 |
糸井 |
それは、よく語られる問題ですね。 |
観客 |
老後に勝負、で思い出したんですけど、
『マディソン郡の橋』が
昔に小説も映画もヒットしたじゃないですか。
あれ、ずっと結婚していたけど
死んだあとにダンナの墓じゃなくて、
ぜんぜん違うところに捨ててほしいっていう映画で。
あれはダンナは死んでしまっているから
気づかないですんだけど、
その奥さんの思いに対して、子どもが
その気持ちわかるとか考えていることがおそろしい。
ああいうのって、幸せなんですかね? |
リリー |
あんな気分の悪い映画はなかったですね。 |
糸井 |
小説で読んだけど、ほんと腹が立ったねぇ。 |
観客 |
あれで感動した人がわりといたということに、
ショックを受けたんですよ・・・。
あれが幸せなら、なんなんだ、っていう。 |
糸井 |
あのカメラマンの役が、
一般的に思われている慶一くんなんだよね。
あれ、ケーキ屋ケンちゃんでしょ? |
リリー |
自分が結婚して、自分が奥さんよりも先に死んで、
その奥さんが自分が死んだあとに
ほかの男とセックスすることを想像したら、
一緒に死んでもらいたいもんね。 |
糸井 |
(笑)もういまから決まってるんだ?
たしかに、動物として、
女の人は受け入れられるようにできてるって。 |
観客 |
女性のほうが、たくましい。 |
リリー |
逆に男は、トシとってから
かみさんに先立たれると、ほんとうに
スカスカになっちゃうじゃないですか。
死んじゃってから、
魂もすべてなくなって、
起きてることがわけわかんなくなればいいけど、
浮遊してて、見るようなことに
させられた日にゃあ・・・。 |
観客 |
(笑) |
リリー |
死んでまでそんなくだらないやきもちを
焼かないといけないとしたら・・・。 |
糸井 |
(笑)浮遊してるんだ? |
リリー |
もしかしたら、
そんなこともあるかもしれないでしょ。
キツイですよ、死んだあと苦労するのは。 |
糸井 |
浮遊は、イヤだねぇ。
たのしく笑っている姿を見るだけでイヤかも。 |
リリー |
しかも死んだあと、ヒマでさぁ。
それを見るばっかりの生活になっちゃって。 |
糸井 |
ぶらぶらしてるんだ? |
リリー |
ぶらぶらしてても生活できたりしてて。 |
既婚者 |
『マディソン郡の橋』に
賛同はしないけど、可能性はあるような気がする。 |
糸井 |
マディソン郡だけじゃなくって、
女の人は、恋愛映画好きですよね?
あれって、何を思ってみているんですか? |
リリー |
映画の見方だけど、
ほとんどの女の人は、映画を
恋愛映画だと思ってみるけれども、
『タイタニック』をみて、男はあれ、
パニック映画だと思ってますからねぇ。 |
糸井 |
(笑) |
リリー |
あれ、恋愛映画だと思ってみたら、
主人公の女、あんなスベタはいないですよ?
だって、いくらメジャーに行ってる
長谷川にそっくりの婚約者が
イヤだったとしても・・・。 |
糸井 |
(笑) |
リリー |
でも、あいつとケイト・ウィンスレットは、
かたちだけでも婚約者なわけでしょう?
それを、イヤだイヤだと言いながら、
ゆきずりのあんな
貧乏絵描きとセックスするじゃないですか。
それでやるならやったで、
じゃあもうディカプリオと
よろしくやってくれよ、と思うのに、
ディカプリオに絵を描いてもらう時に
首につけてるのが、
長谷川にもらったネックレスなんです。 |
糸井 |
(笑)ははは。 |
リリー |
おまえ、どっちなんだ、っていう。
それを女の子と一緒にみにいった時に、
その女の子は、わたしでもつける、と。
どうせならキレイに描いてほしいから、って。
それを聞いた瞬間に「ヤなやつだなぁ」と思った。
ほかの女の人に聞いたら、
あのネックレスをつけてるシーンでさめた、
って人もいましたけど。 |
糸井 |
そう言ってくれる人は、いいなと思ったんだ? |
リリー |
ええ。
いいなと思ったんですけど、
でもあの映画でいちばんおもしろいシーンは
船がバキッ!って折れるシーンですよね。 |
慶一 |
(笑) |
リリー |
すげぇ、あれどうやって撮ってるんだろうなぁ、
っていうのがおもしろいだけの映画ですからね。
でもあそこでネックレスをかけて、
美しく描いてもらいたい、という人とは、
一生、男は平行線をたどるだろうなぁ。 |
糸井 |
あの船のさきっちょで
腰を持つシーンは、あれは何だろうねぇ。 |
リリー |
あれ俺けっこう氷川丸でよくやりますよ? |
糸井 |
(笑)あの、勇気を出して飛ぼうというシーンって、
そそのかしている男に感情移入するのも難しいし、
女にも感情移入するのが難しいし、
長谷川にも感情移入しづらい・・・。
どうすればいいの? |
リリー |
いや、長谷川には最後に感情移入できるんです。
もう、宝石を持って逃げるわ、
船に水は入ってくるわ、のシーンで
ケイト・ウィンスレットに向けて拳銃を撃つ時、
「当たれ!」って思ったもん。 |
糸井 |
(笑) |
リリー |
死ねばいいのに、あの女、って。 |
糸井 |
チカラあるもんね。鎖断ち切ったり。
一人でも生きていける女だよねー。 |
リリー |
そんで結局・・・。 |
糸井 |
生き残ったもんね。 |
リリー |
いちばん泣けたというか、
涙がやっと出たシーンは、
そのババァが最後に映った時に、
ディカプリオが死んだあとも
いろんな男とつきあったシーンが
写真になって飾ってあったとこですよ。
・・・この連中はつらいって。・・・泣けた。 |
糸井 |
ああいう種族と
意味のあるキャッチボールをするとしたら、
壊れるに決まってるじゃない。
だから意味の交換はよくないんですよ。 |
観客 |
男で感動する人は、あんまりいないですね。 |
慶一 |
いやぁ・・・俺、あの映画、
船に水が入ってからあとしかみてないわ。 |
糸井 |
あははは(笑)。 |
慶一 |
それでもなんとなくおもしろかったから、
それでいいや、って思ってたんだけど。 |
リリー |
(笑)いちばんいい見方ですね。 |
糸井 |
そうだよ。
前をずうっと耐えていて、
いったいどうするつもりなんだよ、
って思っている時に、
「みなさんお待たせしました。
知ってのとおり、船がこわれますよぅ」
っていう展開だもん。 |
観客 |
氷山が出てきた時、ホッとした。 |
糸井 |
そうそう。ようやく!って。
それでもなきゃあ、バスの中でもなんでも
やってることはおなじだからねー。 |