リリー |
『タイタニック』で
いちばん男が心に残ってるシーンは、
水が入ってきても、最後まで
バンドは演奏しているじゃないですか。
あれですよ。
家庭もセックスも金も関係なく・・・。
だから、
いちばんいいのって、家庭で幸せになるより、
やっぱ、バンドじゃないですか? |
糸井 |
あはははは(笑)。 |
リリー |
あれが最高の人生ですよ。
だって、一緒に死ねるんだもん。 |
糸井 |
もう・・・慶一くん、
バンドだよ、やっぱり。バンドに籍を入れよう! |
慶一 |
そうかなぁー。 |
リリー |
『ブラス!』でも、いいシーンって、
バンドやってるところだけだからね。 |
糸井 |
(笑)あれ、病気になっても
「バンドしよ」って誘ってるんだから。 |
リリー |
あぁ、俺、バンドやろっかなぁ。結婚やめて。 |
糸井 |
(笑)それは真理かもよ。
うまくいってる家って、家がバンドなんだよ。
「きみのギターは理解できない」とかいう
話しあいの現場ではないじゃない。
「イイね!」なだけでしょう?
・・・そうだ、いまわかったよ。
家庭はバンドだ。バンド。 |
リリー |
じゃあもう、いいメンバーを
そろえていくしかないですね。 |
糸井 |
(笑)バンドに解散があるように、
離婚もありね、と。
お前のボーカルの声の種類が
俺のギターにあわないとか、あるよね?
それはやっぱりやりなおそうよ。バンド名も変えて。
・・・あ、これだ! |
慶一 |
「ギターの音色、変えて」とか。 |
糸井 |
いくらエフェクターを使っても
変わんないんだよ、という。 |
慶一 |
あぁ、家庭はバンドなのか・・・。
ちょっとさみしいような。 |
リリー |
今の俺は、若い時みたいに
みんなで集まってはじめて練習して、
うまくなっていくよろこびは要らなくて、
トシとってるから、
いまバンドはじめるなら、
ほんとにうまい奴と集まって
「あうん」で弾ければいいな、って思う。
そういう若い時の
恋愛の苦労とかバンドの苦労は、
俺、もうやったからいいんですよ。 |
糸井 |
うまいこと言うね。 |
慶一 |
うちのバンドで結婚しているのは
半分だけど、みなさん、
バンド暦のほうが結婚歴より長いもんね。 |
糸井 |
そっか。
それを昔サラリーマンは、
会社でやってたんだろうね、きっと。
日商岩井○○班、だとか。
バンドにしてたんだよ。 |
リリー |
中国人ももうちょっと
バンドを覚えたら、人口減るのにねぇ。
家庭どころか、慶一さんみたいに
バンドばっかり、ってなったら・・・。 |
糸井 |
バンドやる時に、
「白い家が」なんて思ったんじゃ、
やっていけないんだよね、きっと。
どんな音楽をやるかなんだよ。
どういうノリとか。 |
慶一 |
「あれいいよね?」って言えるとか。 |
糸井 |
そうそうそう。 |
リリー |
バンドやってる人って、
どこかでリズムがズレてきても、
うしろ向いて、ニコッて笑って
そのまんま曲に戻れる。 |
慶一 |
「ずれたねぇ」という表情ね。 |
リリー |
そういうのがいいと思うから、
俺は「あうん」の呼吸みたいなのを
求めちゃうんですよ。
でも、こないだオヤジに言われたんですが、
「俺は、60歳すぎてわかったことがある。
60過ぎて、まずマージャンに負けなくなった。
なぜかというと、今は役満張ってても
ベタオリができるからだ。
もうひとつわかったことがある。
お母さんとこうやって別居してたのも、
夫婦として、1+1=2みたいなことを
言わなきゃいかんのか、と思っていたが、
女は、言わにゃわからん。最近わかった。
お前は、言えよ」
・・・そんなことをいきなり言ってて。 |
糸井 |
バンドに「犬がいたほうがいい」とかは、
あんまり考えないよね。
だから家庭と犬との関係なんて、
語らないほうがいいのかもしんない。 |
慶一 |
(笑) |
糸井 |
バンドとホームパーティーって考えないもん。 |
リリー |
打ちあげの楽しさのほうが、
ホームパーティーより、楽しいもん。 |
糸井 |
曲できてなくても、
一回ブルースコードで
セッションしてるうちに、なんか
でたらめになんか生まれてくるとか、
そういう関係なのかもしれないね、夫婦も。 |
慶一 |
1時間のうち、2分ぐらいいいところがある。
それを生かして。 |
糸井 |
そうだよねー。
・・・慶一くん、そういうコツは
ものすごく知ってるんじゃない? |
慶一 |
(笑)そうなのよ・・・。
バンドとしての家庭があるから、それはわかる。
それ以外は・・・わからない。
コツを知ってないと、
バンド続けるのは難しいですからね。 |
リリー |
バンドの打ちあげは「つぼ八」でもいいけど、
ホームパーティーを「つぼ八」でやるっつったら
怒らちゃいそうですもん。 |
糸井 |
(笑)
「さあみなさん、このあとの
パーティーは、つぼ八で!」
って、芝生のうえでは言いたくないよな。 |
慶一 |
(笑)バンドバンド。 |
糸井 |
バンドの中で性のこととか、言わないよね。
多少はあるかもしれないけど。
やっぱ、答えはゲイにあるのかな?
つきつめると、無性化に進むのかなぁ。 |
リリー |
「むせい」っていうのは、夢の性のことですか? |
糸井 |
(笑)いやいや、「ない」ほうの性。
最初から性別のないような関係のことだけど。
そういうジャンルがあるみたいよ。
・・・魚は、性がチェンジするよね? |
観客 |
なんか、話を聞いていると、
わたしと彼はこの先どうなっていくのか、
余計わかんなくなってきたんですけど(笑)。 |
リリー |
いや簡単なことですよ。
バンドやりゃあいい。 |
観客 |
(笑)それで済むの! |
慶一 |
あなたは、いま結婚の波が来たの? |
リリー |
現実逃避なんだろうね。
たぶん、結婚したいって言ってなければ、
留学したい、って言うんじゃないですか。
そういう人、多いよ? |
糸井 |
あぁー。なるほどなぁ。
結婚と英会話と留学は、同じラインかー。 |