糸井 |
ただ、バンドをやりゃあいい、ってのは、
討論会の結論として、あんまり
おもしろいもんじゃないねぇ・・・。 |
慶一 |
・・・その結論だと、
俺はこんなに幸せになりたいのに、
「もう、手にしてたのか」っていうか(笑)。 |
観客 |
女として結婚に憧れているのに
「バンド」って言われても(笑)。 |
糸井 |
そうだろうねぇ・・・。
「わたしの求めてるのは、バンドじゃない!」
って気持ち、女の人には、あるんじゃない?
だって俺、今から家に帰って、
「幸せな家庭はバンドらしいよ」
って伝えたとしても・・・。
何を言ってるんだ、って話でしょ? |
観客 |
家庭がバンドという話には、
男の側からの論理だというにおいが、
プンプンしすぎてますねー。 |
糸井 |
俺とリリーさんは、たまたま
慶一くんをごまかすために言ったんだけど、
展開しすぎて今の結論に至っちゃったんだね(笑)。 |
リリー |
いままでの話を総合すると、
ずっと恋愛をしてたいし、
セックスもずっとしていたいし、
生死も共にしたいという関係は、
だめだぜ、っていう風潮じゃないですか。 |
糸井 |
うん。それは違うよ。 |
慶一 |
でも、生死を共にしたいとも、
ちらっと思いますけどねー。 |
糸井 |
そういうのって、
珍しいからこそ小説になったりして、
「おぉ!」って思われるんだよ。 |
観客 |
タイタニックで、老夫婦は生死を共にした。 |
リリー |
あぁ・・・。
ありゃ、元気がないからね。 |
糸井 |
(笑)あはははは。 |
リリー |
老夫婦になれるまで一緒にいられたら、
死ぬこともひとつのイベントだから、
いいと思うんですよ・・・。 |
糸井 |
(笑)老夫婦にひと組ずつインタビューしたら、
「わたしはお父さんと行きたくなかった」
って言う奥さんもいると思うよ。
ばあさんどうしのほうがいいけど、
一緒に行こうって言うからみたいな話で、
おかあさん役をしているのかもしれない。 |
リリー |
そうだね。 |
慶一 |
チャーミーグリーンはデフォルメだけど、
でもその手前にある
「ふつうの家庭」っていうのに憧れるよ。
その「ふつう」って何なのかは、
ほんとのところは、よくわからないけれど。 |
糸井 |
いや慶一くん、
ふつうの家庭なんて、ないよ・・・。 |
リリー |
(笑)ないんだ。言い切った。 |
糸井 |
俺、キットカット食いながら
話すようなことじゃあないけどさ。 |
慶一 |
(笑) |
リリー |
そんな家庭がないなら・・・
話しあうこともないんじゃないですか(笑)。 |
糸井 |
(笑)でも・・・ないよ。 |
リリー |
じゃあ、仮に、
「ない」ということが今俺にわかったとして、
俺は結婚しないほうがいいんでしょうか? |
糸井 |
しちゃうかもしれないから、
「したら、すれば?」というようなことだと思う。 |
リリー |
でも、離婚するほうが
3倍キツイって言うし・・・。 |
糸井 |
いや、300倍だよ?
離婚がラクな人は、離婚しないほうがいいよ。
だって、意見があってるんだもん。
「離婚しよ」「そうね」って言ったってことは、
仲がいいっていうことですよ。
離婚しなくてもよかった組みあわせかもしれない。
離婚にもめる組みあわせは、離婚したほうがいい。
これは、俺の持論だけど。 |
慶一 |
そのとおり。 |
リリー |
離婚っていうのは
経済的な問題だとか戸籍だとか
面倒なことを抜いたとしても、
未婚でつきあってる子と別れた以上の
悲しいというかデカい波があるんですか? |
糸井 |
・・・くらべられたくないなぁ。 |
リリー |
(笑)相手への感情が? |
糸井 |
感情じゃないよ。
離婚は精魂ぜんぶ尽きてやっと完成するもんです。
陽水と篠山紀信が、ふたりとも離婚経験者だけど、
「あんな大変なことを二度できる奴ぁ、
よっぽどすぐれた奴だ」って言ってた。
たしかに、どんなことよりも大変なチカラ仕事だよ。
慶一くんは、ケーキ派として別れたんですよ。 |
リリー |
離婚のめんどくささを聞いてると、
結婚するのもすごいめんどくさく見えてくる。 |
糸井 |
だから結婚はすごいんだろうねー。
あとやっぱり、慶一くんの場合は、
結婚が短かったから、ほんとうに恥ずかしい感じを
おたがいが知らないままだったんじゃない? |
慶一 |
そうかもなぁー。 |
糸井 |
とんでもない失敗が3回も続けば、
その関係は、そうなるんですよ・・・。 |
観客 |
結婚ってなんでするんですか? |
糸井 |
約束するのがめんどくさいからじゃないですか?
明日、どこで何時?とか言うのがめんどくさい。 |
慶一 |
そのとおりだ。
距離があって違うところに帰るのが
めんどくさいよね。 |
糸井 |
「次、いつ会うの?」っていう連続よりは、
ずっと一緒にいればいいじゃない、っていう。
細かいアポイントメントに疲れる。 |
リリー |
生涯アポイントメントがいいんですね。 |
糸井 |
(笑)グロスでいこう、っていう。 |
リリー |
仕事も、グロスでできるようになんないうちは、
一人前じゃないですからねぇ(笑)。 |
慶一 |
(笑) |
観客 |
じゃあ、同居っていうかたちだと
なんでだめなんですか? |
糸井 |
来年のこととか
再来年のこととかを考えるからでしょうね。 |
既婚者 |
あ、それはそうですね。
親に「結婚しないの?」と言われて、
それに反発するポリシーもないんですよ。
賛成するポリシーもないかわりに。
だから、めんどくさいから結婚って、
あるかもしれない。 |
糸井 |
それに、「恋をしてるから家に帰ります」って
なかなか言いにくいですよ。
「ちょっと恋があるんで、ごめん」とは・・・。 |
一同 |
(笑) |
慶一 |
「ちょっと恋があるから泊まります」
って言われたら、イヤな感じするもんね(笑)。 |
観客 |
結婚したほうが
めんどくさいことが多くないですか?
お盆に実家に帰るとか。
この人と一緒にいるだけでいいのに、
親戚とか、他の人が入ってきちゃいますよね。 |
リリー |
でも逆に、
女の人がそういうことを言ってると、
モテなくなっちゃいますよ?
・・・男は、
ファミリーを大切にしたがる生き物だから。 |
糸井 |
(笑) |
リリー |
ファミリーをないがしろにしそうな奴だと
思われたら、モテなくなるなじゃないですか。 |
糸井 |
(笑)めんどうなら、しなくてもいいし。
どっちでもいいんですよ。 |