- それまでずっと妻のところばかりにいた子どもが、
ある日、ぼくのところに寄ってきて、
はじめて抱きついてくれたんです。
髪の毛を引っ張られたりしまして、
ぼくは泣くほどうれしくて、
やっぱり我慢しきれず‥‥
ついにまんがに描いてしまいました。
それがTwitterで「最近の赤さん」を描くことになった
きっかけです。
- はい。まんがにその気持ちが出てます(笑)。
- 赤んぼがはじめて
自分のところに来てくれたのがうれしくて、
もうなんでも買ってあげます、という気持ちです。
- わかります、その気持ち。
- そして、つい描いてしまったら、
Twitterで、まず300人くらいの方が
リツイートしてくださいました。
300人も「RT」してくれるなら、
「もっと自慢していいんですか?」
という気持ちになってきて‥‥。
- なるほど。
- 我慢してた堰のようなものが外れちゃって、
以降、ずっとやっています。
- 仕事としてまんがを描いていらっしゃる場所では、
それはそれで、描いていてうれしいわけですよね?
- ストーリーまんがですか?
- あ、とよ田さん、いま顔が変わりました。
- いや、‥‥たしかに変わりました(笑)。
あっちのまんがはまじめに考えて描いています。
一方、「最近の赤さん」だって
まじめにやってることはやっているんですが、
なんていうか、ほんとうに「好き」でやってるんです。
「好き」しかない感じ。
エンターテインメントでもなくて、ただかわいい、
記録に留めておきたい。
そういうことだけで描いています。
- ぼくは、「最近の赤さん」には、
見逃せない大発明があると思うんですよ。
つまり、自分の登場人物が、ぜんぶ‥‥
- あぁ、全員が動物なんです。
- そう。
- いや、そのほうがこう、
病的でおもしろいかなと思って(笑)。
- きっかけは、なにか?
- まんがのあとがきで、ぼくはいつも
軽いエッセイを書いてるんです。
2ページくらいの
「どうもありがとうございます」というやつです。
そのエッセイのページに妻を出すことがあるんですが、
妻がぼくのまんがのなかで
「このキャラクターが好きだ」と
言ってくれるものがあって、
「じゃあ、そのキャラクターで出してあげるよ」
ということになって、
妻をタヌキにしたのがきっかけです。
- そうだったんですね。
- 妻がその形になっちゃったから、
妻の子どもはこれかな、ということになりました。
うちの嫁と娘だけが「人外」なのも
バランスが気持ち悪いと思いまして、
いっそのことみんな動物にして
ぼくの見てる幻みたいな感じにしたら
おもしろいかな、ということで
なんとなくそのスタイルでつづいてます。
- その大発明が功を奏したのかわからないけど、
「赤さん」はめっちゃくちゃ、かわいいですよ。
山本さんのTwitterで知って、
「なにそれ!」と思って見たら、
かわいくてやめられなくなっちゃいました。
- ほんとですか?
ありがとうございます。
本物もかわいいんですよ。
- 一同
- (笑)
- ご本人を見せてくださるんですか?
- ちょっとだけ。
- (とよ田さんの携帯電話をのぞきこむ)
かわいいです。
- ありがとうございます(笑)。
- ぜんぜん違いますね。
- タヌキじゃないですね。
- ひじょうにかわいいです。
- こんなふうに
携帯でみなさんに写真を見せるようなことを
Twitterでやってる感じです。
「かわいいんです、見てください」
- 子どもがいる人で、犬や猫を飼ってる場合、
犬猫を自慢することで
「子どもがかわいい」と言いたい気持ちを
しのいでいる場合がありますよね。
子どものことを言うと、
笑われるんじゃないかと思って、気にして。
- あぁ、それはありますね。
- でも、とよ田さん、
妻と娘を動物にしちゃったおかげで、
- あ、そうか。
- やり放題(笑)。
- あ、そうですね。やりやすいですね。
そうかもしれない。
- いまは雑誌でも
連載しておられるんですよね?
- はい。最初は完全に個人で描いていた
まんがだったのですが、
「ヒバナ」の編集さんから声がかかって、
「雑誌でやりませんか?」と言っていただきました。
- 最初は自分だけでやっていることでも、結局、
そっちに道がつくのでしょうか。
- そうですね。
ぼくとしては好きでやってるもんだから、
商売抜きでぜんぜんいいのですが。
- 誰も見てくれなくても、描きたいんですね。
- 描きたい、ただ描きたい。
そして、受け入れられたから、
「あ、描いていいんだ。よかった」と思えます。
でもあるとき、Twitterで
2000RTくらい行ったことがありまして、
「あ‥‥これ、金の匂いがするかも」
と、ちょっと思っちゃいました。
- 一同
- (笑)
- うん。わかります。
でも、お金が入っちゃったからといって
描けなくなるものでもないでしょ?
- そうですね。
でも、自分の好きなペースでしか
描かないようにはしています。
「ヒバナ」の編集担当の方も、最初は
「もうちょっとページ数があれば」
とおっしゃっていたんですが、
「Twitterでもアップしたいし、
気楽にやりたいから、最少ページでお願いします」
とお願いしたんです。
- 分量をコントロールできるというのは、
ひじょうに大事なことですね。
- 「このまんがで毎回20ページ描いてください」
ということにもしなったら、
目が「お金」になりながら娘を見る状況になります。
それはちょっとしんどいなと思って。
- 「娘にちょっと変なことさせてみよう」とかね。
- そうです。
「何かおもしろいことやってみろよ」
みたいなことになりかねないです。
2015-09-30-WED