第3話

小山さんの
「お前ら可愛いすぎるんじゃ」

糸井
いまとなってはどうしてだかわからないんだけど、
ぼくは小山さんのはじめての本の帯を
書かせていただいたんですよ。
小山
そうなんです。お世話になっております。

糸井
こちらこそ、会わないままで帯やっちゃって(笑)。
小山
いいえ、ぼくは2月に
大阪から東京に来たばかりなので‥‥。
糸井
あぁ、そうなんですか。引っ越されたんですね。
小山
ずっと東京に来たい来たいと思ってて。
糸井
小山さんは、この金髪の、
本人とおぼしき人物とは
真逆の顔をしてらっしゃいますね。
小山
そうですね(笑)。
こんな人いないですからね。

一同
(笑)
糸井
小山さんに関しては、もう少し
とよ田さんより謎が深いんです。
小山
はい、なんでしょう?
糸井
小山さんは、「イラストレーター」なんですか?
小山
そうです。
もともと、20歳過ぎからずっと
イラストレーターになりたかったんです。
しかし本心は
「まんが家はまぁ、ちょっと無理そうだから、
 イラストレーターと言っておこう」
という感じでした。
ですので、人にはずっと
「イラストレーターになりたい」と言ってたんですよ。
まんが家って、しめきりとか大変そうだし。
糸井
「まんが家が大変だ」という物語は、
山ほどありますよね。
小山
そうですね。
ぼくは「まんが道」を読んで以来、
まんが家には恐怖のイメージが(笑)。
とよ田
原稿を落としまくるシーンがありますもんね。
小山
はい。そのせいで、まんが家になるのは
あきらめてました。
ほんとうはなりたいのに、ちょっと押し隠して。
糸井
大阪で、イラストレーターとしてはすでに
たくさん仕事をなさってたわけですよね。
小山
えぇと、最初はしてない状態でした。
なんにもない状態で、会社勤めしてるときに、
ブログでまんがを描きはじめて、そこからです。
糸井
そうなんですか?
えっと、その「会社勤め」は
イラストを描く仕事ですか?
小山
いえ、印刷会社で働いてました。
糸井
じゃあ、のちのち本にして出版することの
「あて」もなかったんですね?
小山
なにもありませんでした。ただ描いた。
糸井
すごいですね。
でも、描きたかった?
小山
はい。突如として、描きたくなりました。
会社勤めがつまらなすぎて、
何かおもしろいものを求めたんだと思います。
会社の休み時間とかに描いてたんですよ。

とよ田
いまもお勤めされてるんですか?
小山
いまは、もう勤めてないです。
脱サラです。
糸井
じゃあ、あの
「手足をのばしてパタパタする」
に載ってる‥‥
女の子が好きでたまらない、という
まんがを描いたときは、
印刷会社に勤めてたんですか?
小山
あぁ、そうですね。あのあたりはそうですね。

糸井
あれですよね、やっぱり(にやっとする)。
小山
あれですね(笑)。
糸井
ぼくの心に火が点いたのは、あのまんがです。
小山
はい、あれはたくさんの人に読まれた
手応えがありました。
思い返してみれば、ブログで描いたものが
Twitterなどでバーッと「行く」ときは
何度かあった気がします。
とよ田
ぼくは最初にTwitterで小山さんのまんがを見ました。
Twitterで回ってきて、
「わぁ、おもしれぇ」と思って、
すぐブログ行って、全部読みました。
小山
ありがとうございます。
糸井
いやぁ、あれは読みますよね。
とよ田
おもしろかったです。
小山
ぼく‥‥今日、ほんとうにうれしくて。
糸井
ほんとうですか?
小山
はい(笑)。
糸井
あんまりそうは見えないけど。
一同
(笑)
とよ田
ポーカーフェイスですね。
小山
あぁ‥‥(見まわす)、とよ田さん以外、
みなさん、髪型がご自身のキャラクターと一緒だ。
そこはみなさん、なぞっていくんですね。
糸井
やっぱり自分らしさをどこかに入れないと、
反則なんじゃないでしょうか。
小山さんだけですよ、こんなにも、入れてないのは。
一同
(笑)
小山
ぼくも、金髪にしようかどうか、
迷ったときがありました。
やっぱり‥‥本人を見て「がっかり」とか、
あるんでしょうか。
とよ田
山本さんの場合、
自分のまんがのキャラを美容院の人に見せて
「この髪型にして」って言ったとか。
山本
はい、キャラクターに寄せていってます(笑)。
「実際はロングだったんだ」とか、
がっかりされちゃうかもしれないから。
やっぱり絵よりか、
長くしないように調節してます。
糸井
山本さんは、会社勤めをしながら
まんがを描きはじめたことが
物語の中に入ってるからわかるんだけど、
小山さんの場合、謎だったんです。
小山
あぁ。
糸井
たまに「イラストレーターの集い」みたいな場所に
呼ばれて参加したりしてましたよね。
「まぁお客も3人来たし、よかった」
みたいなことも描いてあったりして。
小山
ああ、はいはい、そういうこともありました。
糸井
それも,嘘かほんとうか、
まったくわからなかったんです。
小山
全部「ほんとう」なはずです。
糸井
小山さんが
「どうやら俺が描くと人が見るぞ」
と気づいた瞬間があったと思いますが、
そのとき、どう思いました?
小山
「うわっ!」と思いました。
糸井
「うわっ!」と思いましたか。
小山
「なんもないところからはじめて‥‥
 こんなんなるんや!!」
と思いました。
糸井
うん、うん。
小山
たしかに、自分では笑いながら描いてたので、
なにかおもしろいんだろうなとは思ってたんですよ。
とよ田
(笑)
小山
でも、他人もそうだった。
「あ、おもしろがってくれるんだ」
と思いました。
糸井
うれしいですね、それは。
小山
うれしいです。
糸井
まぁ、くり返しになりますが、
とよ田さんの
「娘がかわくてしょうがない」と同じように、
小山さんの
「女の子が好きでしょうがない話」が
ぼくは大好きなんです。
小山
ありがとうございます。
糸井
あのことを、正直に、あんなふうに
描けた人はいままでいません。
「そのこと分かってる!?」
というコマがすばらしいです。

小山
あれは、行ききりましたね。
恐れることなく、行ききりました。
糸井
山本さんは、あのまんがを知ってます?
山本
読みました。
あんなに女性を愛してる人、
なかなかいないですね。
糸井
いや‥‥それがですね、
みんな、ああなんです。
山本
え?
小山
みんな、そうなはずなんです。
山本
へ‥‥?
女の人をみんな「可愛いすぎる」と
思ったりするんですか?
小山
そうですね。思います。

糸井
「ぼくをムチャクチャにしないでください」
と言いながら、追いかけるのです。
山本
そうなんですか‥‥。
小山
女性が自分のことを思ってる感じと
ぼくが思ってる感じに、
ちがいがありすぎることは、ずっと気づいていました。
ですから、
「もっと自信持っていいよ!」
と言いたかったのです。
糸井
君たちが思ってるよりも「もっと好きだから」。
小山
そう。
「それ以上かわいいから!」
糸井
小山さんは、それを
言いたくてしょうがなかった。
処女作って、みんな、なにかこう
「ぶつけたい」ような気持ちがあるんでしょうね。
それをみんなが見つけて
ぶつけられる時代が来たんですね。
小山
そうだと思います。

つづく!

2015-10-01-THU