- みなさんこれから「どうなりたい」というような
ビジョンはあるんでしょうか。
- 最近、悩むことがありまして。
- はい。
- 自分のやっている、日記のようなまんがの分野で
好きな作家さんもいるんですけど、
やっぱりぼくが昔から読んでいたのは
ファンタジーや冒険もので、
ストーリーがある太いテーマの
実直に「おもしろい」まんがなんです。
でも、自分はそれを描かなくて
大丈夫なのか? っていう(笑)。
- 一同
- (笑)
- いわゆる「ジャンプ」的なやつを。
- 小山さんは、そういうのは
その‥‥ぜんぜん、描いてないですよね。
- はい、ぜんぜん(笑)、描いてないです。
だけどなんだかこう、自分のやっているものが
まんが家への道の裏ワザみたいなもんに思えてきて。
- みんなそうですよ。
- そうです。
- まんが家への道としては、当然
「少年ジャンプ」みたいなものを
考えるわけですか?
- はい。
ちゃんとこう、32ページくらいの。
- そんな「ジャンプ」の呪いを
インターネットが解かしたんだね。
- 解けたんですね、そうですね、
自由系というか、なんというか。
- 自由系(笑)。
- このまま、ちゃんとした雑誌で
連載できるようになれればいいですけど‥‥。
というようりもあのぅ、
「ぼくは雑誌で連載したい!」
という思いがあります。
ちゃんとした雑誌に連載するには、
「ワンピース」みたいな作品を
描かなくちゃいけないんじゃないだろうか、
という呪いは、ぼくは解けてないです。
- もしも「ワンピース」みたいなのやってください、
と言われちゃったら、どうしましょうか。
- いやぁ、そうですね、そうですね、
やっぱり自分が影響を受けたまんがから考えると、
かわいい女の子が出てきて、
大きなロボットが出てくる‥‥
そういうのを描ければ描きたいです。
- まずは絵をどうするかですね。
小山さんは、ちがう種類の絵も描くんですか?
- えぇと、絵はたぶん、
このまま行くと思います。
- このままで、「アベンジャーズ」みたいな?
- 「アベンジャーズ」みたいな。
- 一同
- (笑)
- でもまじめに、ちょっと見てみたい気もする。
ほかのみなさんはどうですか?
そういった野心はあるでしょうか。
山本さんも
「この絵のままアベンジャーズ」はいけそう。
- そうですね、いつかは
ストーリーのあるものを描きたいです。
- 山本さんも、ストーリーまんがは
描いたことないんですか?
- ないです。
10代の頃の、ノートに手描きしたような
恥ずかしいやつはありますけど。
- あるよね。
- あるある。
- 俺、それみんな燃やしたよ。
- 一同
- (笑)
- simicoさんは、
猫から離れるのか離れないのか、
という問題があるでしょう。
- あ、私は、
猫以外はたぶん描けないんじゃないかなと思います。
- なるほど、「猫以外は行かないと決める」という
やり方はひとつ、ありますよね。
- 描いたとしても、たぶんあまり誰も
おもしろいと思わないでしょう(笑)。
自分は「飼いぬし」としてまんがに出るんですが、
回によっては私が前面に出てしまうこともあります。
「comico」は、まんがの回ごとに
読んでくださった方からのコメントがつくんですが、
たまに「作者要らない」とか書かれます(笑)。
- そうなのかなぁ。
でもまぁ、いまは、simicoさんは
猫で行こうと思ってらっしゃる、
一方、とよ田さんは、
もともとストーリーものを描いてらっしゃるし‥‥。
- はい。ぼくの場合は、もともと
ストーリーまんがを描いていますが、
一応、人気とか売上とか、気にしながら描くわけです。
そういうことに対する、
ちょっとうんざりした気持ちが
ぼくの中にはあります。
- いつも激しい競争の中にいるわけですよね。
- そうです。だから、多かれ少なかれ、人気に合わせて
自分の描きたいことじゃないものも描きますし、
そういうことに対するストレスがあります。
そこから逃れて
好きなことだけを描きたい、ということで
「最近の赤さん」を描いているという一面があります。
だから、別にあれが売れようが売れまいが、
ぼくにとってはどうでもいいことです。
「娘かわいい」「俺が好きなんだ」
というだけの記録ですからね。
ストレスがかかることは仕事としてやってます(笑)。
- これを描くことで、
ストーリーまんがのほうが
楽になったとか、そういうことはありますか?
- あります。
おかしなものでして、
ぼくはビジネスを考えてやったもののほうが
あんまり売り上げがよくなくて、
逆に人気なんてどうでもいいと思ったマンガのほうが
ウケがいい。
「最近の赤さん」はこれまで
同人誌でしか出してないですけど、
けっこう反応がいいんです。
下手したら、これがぼくの
キャリアハイになるかも、くらいの
反応が起きています。
- 「最近の赤さん」、おもしろいもの。
- へんに読者さんが喜ぶことを考えるよりは、
自分のリビドーのままに描いたもののほうが
受け入れられることが多いんじゃないかと
思いはじめています。
- うん、うん。
simicoさんなんか、絶対それですね。
- もう、そうですよね。
- だから、逆に、
商売のために描いているまんがも、
もっと自分の自由でいいのかな。
そういうことなのかなぁ。
- 読者もそれを望んでる気がする。
読者といっても、俺のことだけど(笑)。
- ぼくも、ストーリーまんがを描こうと思って、
登場人物を考えるわけなんですが──
主人公がいて、ニヒルなライバルがいて、
こういう悪いやつがいて──って考えるんですけど、
どう考えても、それよりも、
過去にぼくが会ったやつ、
ほんとうにあった出来事のほうが
おもしろいんです。
- うん、うんうん。
- フィクションがノンフィクションに負けてる。
読むほうも、
「これが実際にあったことなんだ」
と思って読むと、
そのおもしろさって強烈やな、と思いまして。
- フィクションのものより、完全に
プラスアルファがありますよね。
リアリティがもちろんあって、
ハラハラ感が増す。
- 「東京のここのあたりに住んでて、
こういう人は実在してて、
マジでこうなんです」
- ストーリーのある映画でも、最後に、
「これはほんとうにあったことで」
というメッセージをくっつけたりしますね。
- ありますね。
- 「あったの? ないの?」
というところでのお客さんの反応って
馬鹿にならないですよ。
「岡崎なんかいない」って、言われたら!
- 一同
- (笑)
- たいへんな抗議が来そうです。
2015-10-06-TUE