- みなさんは、編集さんと
内容の打ち合わせをしたりしますか?
- ほとんどこっちに「おまかせ」です。
それが悩みのようなところもあって‥‥。
つまり、編集者さんとマンツーマンで、
「このまんがをよくしよう」というような
打ち合わせがないんです。
- ぼくもそうです。
描いていることが「実際にあったこと」だから
打ち合わせのしようがないのかな?
ぼくの場合は、娘がどんなおもしろいことを
してくれるかにかかってるから、
打ち合わせしたからって、
そのとおりやってくれるわけがないですし。
「起きたことを描くだけですね」なんて
そんな打ち合わせは、することがない(笑)。
- そうそう、いつも話すことないんですよ。
いいのかなぁ?
- 話すことがないのに、
編集さんとは会うんですか?
- なるべく会うようにしています。
- 会わないっていうのも寂しいか、思えば。
- そうですね。
「こうしたらおもしろくなる」みたいなことで
高め合っていきたいんですけどね。
- 私も内容の打ち合わせは基本的にしないです。
というより、原稿をあげるのが遅くて
いつもギリギリなので、
打ち合わせてる余裕がないのかもしれない。
- simicoさんは週刊だものね。
でも、ストーリーまんがのときは
打ち合わせはあるでしょ?
つまり、ひとりでやってるとドツボにはまるぞ、
と、見ててくれる人がいる。
- はい、ストーリーのときはありますし、
担当が軌道修正をしてくれたりします。
- でも、いまみなさんが描いておられるようなまんがは、
ドツボはまることが、たぶんない‥‥。
- むずかしいですね。
山本さんは、内容についての
打ち合わせとか、されてます?
- 内容については、しないです。
「岡崎に捧ぐ」に描いてることはほとんど、
「小学生のときにこんなことがあっておもしろかった」
という、自分が飲み会でしょっちゅう使ってる
テッパンのおもしろい話なんです。
それを編集さんにも
「こんなおもしろいことがあったんですけど、
どうですか?」
と、笑い話みたいにして話すことはあります。
- 「すべらない話」みたいになってるんだ。
- はい(笑)。
私はもともと担当さんがいなくて描いていたので、
ネーム(註:コマ割りとセリフを中心とした下描き)を
やってないんです。
なので、できた原稿をそのまま
編集さんに見せたりすることもあります。
- いま、山本さんの連載は小学館ですよね。
小学館は、ネームを書けとか、
うるさいことは言わないんですか?
- そのあたりはすごく考えてくれてて、優しくて、
自由にさせていただいてます(笑)。
- ぼくはあれこれ言われることが苦手で、
うるさく言われると、
‥‥編集者が言ってることの意味はわかるんだけど、
どうしても力が抜けていっちゃうんです。
そういうとき、
「つまんないのを覚悟して
フルスウィングさせてください」
という気持ちになります。
でも、相手は「ぼくはこういう仕事ですから」と
態度を変えないでいたりするから困る。
- 私はほんとうに新人ですから、
ネームなしでいきなり原稿渡すなんて
本来なら絶対に許されないと思います。
でも、ある程度までネットでやっていたので、
そのあたりは優しくしてくれるんだろうなぁ、
と勝手に思っています。
「直せ」とかも、そんなに言われないです。
- それはつまり
「すでにお客がついている」ということですね。
山本さんは、別の仕事をしてた時代があるけど、
いつごろ辞めたんですか?
- 去年の10月です。
- それは、「まんがの道で行くぞ」と決めたという
ことですよね。
- はい。でも、正社員で働いてたので、
辞めるときは「どうしよう」とかなり悩みました。
最終的に背中を押してくれたのは、
「岡崎に捧ぐ」の岡崎さんでした。
「その仕事は別の誰かでもできる仕事だよ、
でもまんがは山本さんしかできない仕事だから、
悩むこともない」
と、岡崎さんは言いました。
私が心配したのは
「失敗したらどうしよう」ということだったんですが、
岡崎さんは、
「ま、失敗したら、また新しい仕事を
探せばいいじゃない」
と言ってくれまして、
「じゃあ、いいか」と思って(笑)。
- その話だけで泣きそうだな。
- そうだよねぇ、さっきの男の友達の
「杉ちゃん」もそうだし。
- 映画になりますね。
- 山本さん自身がそうだからだと思うけど、
優しい人が周りに多いんですね。
ほんとうにいい人に囲まれてるなぁ。
- 岡崎さんも、杉ちゃんも、
ほんとうにすごく優しいです。
別にいい話ふうにするつもりもないんですけど、
思い返すと、ほんとうにいい話なんです。
- いいなぁ。
- みなさんのお話をさきほどから聞いてると、
いまはきっと、編集者が要らない時代に
なったのかもしれませんね。
山本さんなら、ほかの人の担当で
編集者やれますよ、きっと。
あ、小山さんの担当になってよ。
- 一同
- (笑)
- Tシャツでこれだけいいんだし、
小山さんをどう売るか、山本さんならわかるよね。
- はい(笑)。
- Tシャツになるかどうかという発想は、
ぼくも心の奥では思ってたけど、
口でこんなふうに言える人って、ちょっといないよ。
すご腕の編集者ですよ。
- はい、お願いします。
- 一同
- (笑)
2015-10-08-THU