第8話

編集者と、高め合いたい。

とよ田
みなさんは、編集さんと
内容の打ち合わせをしたりしますか?
小山
ほとんどこっちに「おまかせ」です。
それが悩みのようなところもあって‥‥。
つまり、編集者さんとマンツーマンで、
「このまんがをよくしよう」というような
打ち合わせがないんです。
とよ田
ぼくもそうです。
描いていることが「実際にあったこと」だから
打ち合わせのしようがないのかな?
ぼくの場合は、娘がどんなおもしろいことを
してくれるかにかかってるから、
打ち合わせしたからって、
そのとおりやってくれるわけがないですし。
「起きたことを描くだけですね」なんて
そんな打ち合わせは、することがない(笑)。
小山
そうそう、いつも話すことないんですよ。
いいのかなぁ?
糸井
話すことがないのに、
編集さんとは会うんですか?
小山
なるべく会うようにしています。
糸井
会わないっていうのも寂しいか、思えば。
小山
そうですね。
「こうしたらおもしろくなる」みたいなことで
高め合っていきたいんですけどね。
simico
私も内容の打ち合わせは基本的にしないです。
というより、原稿をあげるのが遅くて
いつもギリギリなので、
打ち合わせてる余裕がないのかもしれない。
糸井
simicoさんは週刊だものね。
でも、ストーリーまんがのときは
打ち合わせはあるでしょ?
つまり、ひとりでやってるとドツボにはまるぞ、
と、見ててくれる人がいる。
とよ田
はい、ストーリーのときはありますし、
担当が軌道修正をしてくれたりします。
糸井
でも、いまみなさんが描いておられるようなまんがは、
ドツボはまることが、たぶんない‥‥。
とよ田
むずかしいですね。
山本さんは、内容についての
打ち合わせとか、されてます?

山本
内容については、しないです。
「岡崎に捧ぐ」に描いてることはほとんど、
「小学生のときにこんなことがあっておもしろかった」
という、自分が飲み会でしょっちゅう使ってる
テッパンのおもしろい話なんです。
それを編集さんにも
「こんなおもしろいことがあったんですけど、
 どうですか?」
と、笑い話みたいにして話すことはあります。
糸井
「すべらない話」みたいになってるんだ。
山本
はい(笑)。
私はもともと担当さんがいなくて描いていたので、
ネーム(註:コマ割りとセリフを中心とした下描き)を
やってないんです。
なので、できた原稿をそのまま
編集さんに見せたりすることもあります。
糸井
いま、山本さんの連載は小学館ですよね。
小学館は、ネームを書けとか、
うるさいことは言わないんですか?
山本
そのあたりはすごく考えてくれてて、優しくて、
自由にさせていただいてます(笑)。
糸井
ぼくはあれこれ言われることが苦手で、
うるさく言われると、
‥‥編集者が言ってることの意味はわかるんだけど、
どうしても力が抜けていっちゃうんです。
そういうとき、
「つまんないのを覚悟して
 フルスウィングさせてください」
という気持ちになります。
でも、相手は「ぼくはこういう仕事ですから」と
態度を変えないでいたりするから困る。
山本
私はほんとうに新人ですから、
ネームなしでいきなり原稿渡すなんて
本来なら絶対に許されないと思います。
でも、ある程度までネットでやっていたので、
そのあたりは優しくしてくれるんだろうなぁ、
と勝手に思っています。
「直せ」とかも、そんなに言われないです。
糸井
それはつまり
「すでにお客がついている」ということですね。
山本さんは、別の仕事をしてた時代があるけど、
いつごろ辞めたんですか?
山本
去年の10月です。
糸井
それは、「まんがの道で行くぞ」と決めたという
ことですよね。
山本
はい。でも、正社員で働いてたので、
辞めるときは「どうしよう」とかなり悩みました。
最終的に背中を押してくれたのは、
「岡崎に捧ぐ」の岡崎さんでした。
「その仕事は別の誰かでもできる仕事だよ、
 でもまんがは山本さんしかできない仕事だから、
 悩むこともない」
と、岡崎さんは言いました。
私が心配したのは
「失敗したらどうしよう」ということだったんですが、
岡崎さんは、
「ま、失敗したら、また新しい仕事を
 探せばいいじゃない」
と言ってくれまして、
「じゃあ、いいか」と思って(笑)。

とよ田
その話だけで泣きそうだな。
糸井
そうだよねぇ、さっきの男の友達の
「杉ちゃん」もそうだし。
simico
映画になりますね。
とよ田
山本さん自身がそうだからだと思うけど、
優しい人が周りに多いんですね。
ほんとうにいい人に囲まれてるなぁ。
山本
岡崎さんも、杉ちゃんも、
ほんとうにすごく優しいです。
別にいい話ふうにするつもりもないんですけど、
思い返すと、ほんとうにいい話なんです。

小山
いいなぁ。
糸井
みなさんのお話をさきほどから聞いてると、
いまはきっと、編集者が要らない時代に
なったのかもしれませんね。
山本さんなら、ほかの人の担当で
編集者やれますよ、きっと。
あ、小山さんの担当になってよ。
一同
(笑)
糸井
Tシャツでこれだけいいんだし、
小山さんをどう売るか、山本さんならわかるよね。
山本
はい(笑)。
糸井
Tシャツになるかどうかという発想は、
ぼくも心の奥では思ってたけど、
口でこんなふうに言える人って、ちょっといないよ。
すご腕の編集者ですよ。
小山
はい、お願いします。
一同
(笑)

つづく!

2015-10-08-THU