Drama
一夜かぎりのくだらなさ。
清水ミチコ/リリー・フランキー/darlingの夜。

第5回 デパートの恋

清水 とにかく何でも、
現場に行かないとだめですよね。
糸井 ぼくも現場主義者ですからね。
巨人対中日の
130試合目で優勝が決まったあの試合、
ただただ現場に行きましたよ。
リリー オオッ、並んだんですか?
清水 野球の話か・・・。
糸井 うん。
とにかく現場に行けば
なんとかなると思ってね。
見れたよ、ちゃんと。
リリー この前、
東京ドームの「ミスター最後の試合」が
あったじゃないですか。
おれ、あの日、結婚式に出てたんですけど、
もういてもたってもいられなくって。

途中で式場を逃げ出したんです。
「とりあえず東京ドームに行かなきゃ」
と思って。
ただそれだけの気持ちで。
清水 (笑)戻って来ーい。
リリー お金も持ってないくらいだったけど、
何でもいいからチケットを手に入れて
球場に入りたいと思って。

「チケットありますか?」
ってダフ屋さんに近づいていったら、
いままで聞いたことないようなことを
そのダフ屋さんが言うんですよ。
「・・・高いよ」って。
糸井 言わないよねふつう。
そうとう高いんだ。
清水 自嘲してるんだ(笑)。
いくらだったの?
リリー 外野席で6万円とか5万円とか。
糸井 (笑)
リリー お金、ぜんぜん足りなくて。
それで結局、球場に入れなくて。

でも、どうしても
ミスターの近くにいたかったから、
東京ドームホテルに部屋をとって、
テレビで試合を見ることにしたんです。
清水 すごい発想だ。
リリー 東京ドームホテルで、ミスターが
記者会見する予定だったからね。
「ここにいればエレベータとかで
 ミスターに会うかもしれない!」
と、思ったりしたんですよ。
糸井 うん、うん(笑)。
リリー ずーっと部屋でテレビ見てたら、
そんな大切なゲームなのに、
なんだか球場にいる客のほうが
気になっちゃって(笑)。
清水 入れなかったからね。
リリー バックネット裏の席って、
だいたい年間で
300万も400万もする席なんですよ。
だけど、その、いちばん目立つ席に、
おじさんが愛人連れてきて座ってた(笑)。
それがいかにも、
ルール知らないような女なんです。
糸井 (笑)
リリー なんかのたんびにその女は、
「あれなぁに?
 ボールなのストライクなの?
 あの人、打つの?」
って、ずっと聞いてるみたいな。
糸井 「イチローはいつでるの?」(笑)。
清水 ・・・悲しい1日だったんだね。
糸井 ところでさぁ、
リリーさんの恋の話って
すごくおもしろいんだよー。
リリー 糸井さんは覚えてると思うけど、
ぼくは、あるデパートで働いてた人を
好きになったことがあるんです。
糸井 うん!
リリー 糸井さんって、
人の恋愛話を聞くと、
むやみに盛り上げるのが好きなんですよ。
もう完全にその恋は終わってるって、
俺ですらわかっている時点でも
「終わりじゃない!」って
ひとりで決めつける(笑)。
清水 人の恋なのにねぇ。
リリー それで、
「デパートの、その子のいる
 売り場に行って、気持ちを聞くよ」
って言うんですよ。
清水 糸井さんが?
リリー そう。
しかも、天使の格好をして。
全身白のスパッツで、
羽根つけて行くって。
「いや、そんなことしたらまず、
 売り場に着くまでに捕まりますよ」
と言って、とめたんだけど。
清水 アハハハハ!
糸井 ぼくはくわしく知らないんだけど、
リリー・フランキーって、
絶えずふられているような、
そんな人なんだ。
リリー ハハハハハハ。
糸井 一年中、ふられてるんですよ。
なんか、熱帯雨林みたいにふられてるんです。
そして、それを語るんです。
なかにはとってもいい話があって、
これはもう、ほだされるんだよ。
清水 ほだされたいですね、ぜひ。
その女性、
いまも**にいらっしゃるんですか?
リリー いまはあのぅ、
××に変わりましたけれど。
清水 ああ、知ってるんだね、行く末を。
リリー はい(笑)。
それで、糸井さんは、
その子が俺のことを
どういうふうに思ってるかを調べるために
**に勤めるすべての人に
アンケート用紙を配るって言ったんだよ。
しかも、自分でガリ版で刷るって(笑)。
清水 (笑)やめてくれよぉ、だよね。
・・・リリーさん、
いまも好きなの? その人のこと。
リリー もう、しばらく顔も見てないんですけど、
こういう話をするたんびに
せつなくなってしまうんですよね(笑)。
糸井 どうもよくわかんないけど、
絶えずそんなようなことを
考えてるらしいんですよ、この人は。
明るい仕事ばっかりしてるくせに。
リリー うん・・・じつは(笑)。

2002-01-27-SUN
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