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第一回
背の色は、そしてシュークリーム色になった。 |
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ほぼ日読者のみなさん、「ほぼにちわ」。
新潮文庫編集部のMです。
「編集者は黒子である」を
信条にしておりますので、匿名希望です。
書き手の皆さんの陰に隠れて、
世の中の役にも立ちつつ、
妙で変な本を出していきたいとの
野望を持っておりますのでお許し下さい。
さて、今日から「新潮文庫のささやかな秘密」を
ご紹介することになりました。
いよいよ発売の新潮文庫版
『オトナ語の謎。』『言いまつがい』の刊行にあたって、
「ほぼ日」側の窓口を務めて下さったのが、
永田さんだったのですが、刊行の相談中に
「うちの文庫の○○は、
○○を見ただけでわかるんですよ」とか、
「同じ新潮文庫でも、
○○と○○の○○は違うんです」などと説明すると、
永田ソフトさんが目を輝かせて
「エーッ」とか「おもしろい」とかノセてくださるので、
つい調子に乗って
「実は、○○が○○になっているのは知ってました?」
などと話してしまったのが運の尽きでした。
永田さんは、それを「書け!」というのです。
「だって、それは秘密ですよ。ダメですよ!」
と言っても聞いてくれません。
逆らうとあとが怖そうなので、
私は屈服してしまったのでした。
というのは半分ウソですが、
新潮文庫の違った側面も見ていただいて、
文庫本により親しみを持っていただけたら幸いです。
まず今回は、文庫のカバーの背についての秘密を披露します。
皆さんが本屋さんに行くと、ずらっと棚に文庫が並び、
カラフルに色分けされた
文庫カバーの背が目に入るかと思います。
どこに説明が書いてある訳でもありませんが、
あの色が著者名別についているのは、
みなさんも暗黙のうちにご存知でしょう。
これは、本屋さんの店頭で、
目当ての本をより探しやすいようにと、
1970年代に入ってから始めたものです。
池波正太郎さんなら「黄色」、
松本清張さんなら「赤色」という具合に
著者名と色をセットで覚えている方も
多いのではないでしょうか。
じつは、あのカバーの背の色には、
新潮社の社員でも知らない人間が多い、
秘密のオキテがあります。
本屋さんで、棚をじーっと見ていると
分かるかも知れませんが‥‥。
さて、分かりましたか。まず原則が二つあります。
1:前後に並ぶ文庫との同系色はさける。
2:色をつけるのは、同じ著者の二冊目の文庫から
(一冊目は白。
二冊目が出た後の増刷から一冊目にも色がつく。
一冊目の文庫でも、すでに色のついた文庫もあります。
これは、一冊目が出た段階で
すでに二冊目の刊行予定が確定的な場合など。
他にも例外はあります)
「なーんだ」と言わないで下さい。
まだ、もうちょっと秘密は残っています。
実際にあらためて本棚を見ていただくと、
色のついていない、背が白い文庫が
結構あることに気づかれることと思いますが、
この中には二冊目の文庫でも、あえて白のままにして、
その代わりに別の独特の工夫をしたカバーの背があるのです。
次のうち、ご存じのものはありますか。
○ |
日本画家の東山魁夷さんの文庫では、
背に落款(簡単に言うとハンコ)
がデザインされている。 |
○ |
理学者のフロイトの文庫では、
背の「フロイト」の名前の上に、
頭文字「F」を緑色で大きく目立たせて配している。 |
○ |
作家の堀辰雄さんの文庫では、
背に入った「堀辰雄」の名前の上に
葉っぱのマークがデザインされている。
(他に、ニーチェ、谷崎潤一郎、山本有三の各氏などにも
似たような工夫があります。
本屋さんでちょっとのぞいて見て下さい) |
これはルールがあるわけでなく、正直に言って、
その時々のタイミングや本の性格により許されるもので、
デザイナーや編集者の創意工夫というか、
気合というか、悪戯ごころというか、
ひょっとすると気まぐれ‥‥。
意外に、といっては語弊があるかもしれませんが、
背の色で売れ行きが変わるということはあまりないようです。
通常は、その著者に雰囲気の合いそうな色を
「前後に並ぶ文庫との同系色はさける」
という原則を踏まえつつ、
新潮社内で装丁担当のデザイナー
(新潮社には装幀室という
ブックデザインの専門部署があります)
や編集者が相談して決めています。
さて、発売になりました
『オトナ語の謎。』と『言いまつがい』のカバーの背は、
クリーム色になりました。
あらかじめ糸井さんや担当の永田さんに、
希望の色があるかどうかをうかがったのですが、
「任せる」と一言、
こちらの器量を試すようなことを言われてしまったので、
かえって困りました。
つまり、色を決めたのは私です
(もう決まったことなので、
ご批判もご叱正もどうかご勘弁下さい)。
爽やかな感じのするライトグリーンや、
温かみのあるチョコレート色、
ちょっとオトナな雰囲気のライトグレーなども
候補にあったのですが、糸井さんや「ほぼ日」の本は、
一冊一冊がまったく趣向の違う本なので、
どんな傾向の本にも合うようにと、
色味の強い主張のある色はさけて、
かつ温かみのある色をと考えてクリーム色にしました
(近くにある池波さんの黄色と同系ですが、
このくらいの差があればこれはOKなのです)。
夜食の甘味にシュークリームを食べていて
思いついたのでは決してありません。
もちろん違います。絶対に違います‥‥。
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『オトナ語の謎。』(新潮文庫)
監修:糸井重里
編 :ほぼ日刊イトイ新聞
定価:580円(税込)
ISBN:4-10-118312-0
ご購入はこちらからどうぞ。 |
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『言いまつがい』(新潮文庫)
監修:糸井重里
編 :ほぼ日刊イトイ新聞
定価:540円(税込)
ISBN:4-10-118313-9
ご購入はこちらからどうぞ。 |
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