質問九  私は北海道札幌開成高等学校の出身です。 母校の校歌は、谷川さんの作詞であり、 当時からたいへん好きな歌詞でした。 いまでも、  山あり 空あり 大地あり  という歌詞を思い出すと、心強い気持ちになれます。 谷川さんは、校歌を作詞する際、 どのようなことを考えて作られるのか、 教えていただけるとうれしいです。  (tomo 三十二歳)
谷川俊太郎さんの答え  その学校のイメージを どう言葉にするかを第一に考えます。 歴史のある学校なら 校風のようなものも確立していますが、 新設校の場合は、校歌がその一部を作ることになるので、 写真を含む学校そのものと その環境についてのさまざまな資料、 教師・生徒たちの意見などをもとに言葉を捜します。 また作曲され歌われることが前提ですから、 歌になったときに生きるフレーズも考えます。 学校教育に対する自分の考えも、 直接的にではなく反映できればいいと思います。 周囲に魅力的な歌があふれていて、 生徒たちは日々それを聞いているわけですから、 校歌も生徒たちにそっぽを向かれてしまっては生きない。 かと言ってポップスと同じような歌詞では、 校歌である意味がない。 校歌の作詞は普通の詩を書くよりずっと難しいんです。

2009-01-04-SUN


illustration: NANAE EDA //(C)HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN