糸井 |
もしもーし。 |
大貫 |
あ、こんにちは。 |
糸井 |
ほぼ日刊イトイ新聞の糸井です。 |
大貫 |
(笑)今、ミックスしている途中なんで、頭が……。 |
糸井 |
頭がミックスですか。 レコード作ってる最中? |
大貫 |
そうです、もうミックス始めてて、
今週、来週、……違う、今週の末からパリに行って
最後の仕上げをします。7曲ぐらい。 |
糸井 |
ということは、発売は? |
大貫 |
6月中旬。 |
糸井 |
その仕事をやりつつ、
今度のビューティフルソングスをやるわけだね。 |
大貫 |
うん、でも、これやっちゃわないと、
そっちに頭が回らなかったんで。
4月いっぱいでレコード終わらせて、
5月からは少しそっちに集中して
考えようかなと思ってるんですけど。 |
糸井 |
逆にぼくは詞がちゃんと出来てないんで、
それを聞いてちょっと安心した気がします。 |
大貫 |
あははは。
でも、きっとみんな、曲書くの、
6月入ってからですよ。 |
糸井 |
ああ。でも、そうやって安心させられると、
ぼくが喜び過ぎちゃうから。 |
大貫 |
みんな自分のことわかってるでしょ、
どれくらいで曲が書けるか、とか。
だから大丈夫ですよ。 |
糸井 |
ぼくは、大貫さんに歌詞を書いたことがないんです。
5人のなかでいちばんやったことがない。 |
大貫 |
そうでしたね。 |
糸井 |
思えば……。 |
大貫 |
ご縁がなかったですね。 |
糸井 |
詩人として楽しんでる
ミュージシャンの歌詞を書くって、
なかなかね、度胸いるんですよ。 |
大貫 |
え、わたしは詩人では……、
それに、みんなそうじゃないですか。
書いてるから、自分で。 |
糸井 |
みんなそうなんだけど、
前に書いたことある人だと、
「こいつとはこうだったな」とかわかるでしょ。 |
大貫 |
全然、問題ないですよ、わたし。
自由に書いてください。 |
糸井 |
いや、もう、なんとかします。
もうねえ、ほんとは出来てるんだけどねえ。 |
大貫 |
そうでしょ? なんとなくね。 |
糸井 |
なんとなく出来てて、
メモは全部作ってあるんだけど……
最終的にパッケージできれいに渡したいっていう
欲望があるから、ぐすぐずしちゃってるんです。 |
大貫 |
大丈夫ですよ。 |
糸井 |
そうですか。頑張りますよ。 |
大貫 |
(笑)全然、なにも心配してないです。 |
糸井 |
ありがとうございます。
「Beautiful Songs」について、
それぞれがどんな気分で、楽しみにしたり、
嫌がったりしているのかなあというのを
聞こうと思うんだけど。 |
大貫 |
去年、ニューヨークのあっこちゃんと
電話で話をして。 |
糸井 |
うん。 |
大貫 |
もっと違う世代の人にもね、
「いい歌がいっぱいあるんだよ」っていうのを、
聞かせてあげたいなあっていうのが
彼女の気持ちだった。 |
糸井 |
うん。それは、大貫さんの方も、
そんな気分はもともとあったんだよね。 |
大貫 |
うん……でも、わたしは彼女みたいに、
出前コンサートとかで、全国津々浦々に、
ピアノ一本で行くのと違って、
それだけ考えても、コンサートを
あまり積極的にやっているとは言えない。 |
糸井 |
うんうんうん。 |
大貫 |
そういうスタンスが、いいとも思わないんですけど、
自分のやるべきことはやる、って気でいる。 |
糸井 |
いわば、大貫さんの場合には、
老舗の包丁屋がずーっと商売してるようなもんだよね。
どうしてもその包丁が欲しい人は
そこまで買いにいけばいいわけで。 |
大貫 |
まあ、そういう風に見えるかもしれないけれど
そんな殿様商売してるつもりはない。
いろいろな場所で数多くコンサートができないのは、
金銭的な理由だけ。 |
糸井 |
どっちかって言うと、今回、
そういう傾向のある人ばっかりだよね。
思えば、セールスに出かける人は
あんまりいなかったよね。 |
大貫 |
そうですね。でも、まあ、奥田くんとか
BOOMなんかは結構ちゃんとツアーしてるし、
わたしが一番ひどいね。 |
糸井 |
慶一くんとどっちがひどい? |
大貫 |
慶一くん?
慶一くんは自分のスタンスを
どういうふうに思ってるかわかんないからなあ。 |
糸井 |
でも、活動のエリアは
確かに大貫さんが一番狭いね。 |
大貫 |
そうかな。 |
糸井 |
でも、若い子の中で、
例えばぼくなんかのまわりで言うと、
昨日、子供と話してたんだけど、
結局、一番いっぱい聴いてるのは
ビートルズだって言うんだよ。
で、この間、結婚した友達の相手の女の子が
22歳で、式の時の曲を自分で選んだっていうんだけど、
全部、ぼくの知ってる歌なんだよ。 |
大貫 |
やっぱりそういうものなのね。 |
糸井 |
で、びっくりしちゃって、
そういうもんなのかもしれないなあと思ったら、
今回の「Beautiful Songs」の話って、
「ああ、これは、別に勝ち負けじゃないけど、
人は意外とすごく喜ぶんじゃないかなあ」と思ってさ。 |
大貫 |
うーん。そうなのかもしれない。 |
糸井 |
はしゃげる歌もあるし、
踊れる歌もあるかもしんないけど、
歌える歌とか、例えば自転車に乗って
買い物しに行って、帰り道に歌える歌って、ないよね。 |
大貫 |
そうね。昔はいっぱいあったけどね。 |
糸井 |
だから、アカペラで歌える歌が、ぼくは、欲しい。 |
大貫 |
わたしの曲はないけどね、あんまし。 |
糸井 |
大貫さんのって、たくさんはなくても、
アカペラで歌える歌、あるよ、結構。 |
大貫 |
時々、自分でも歌えないから問題だ(笑)。
まあ、誰かがこういうことをさせてくれないと、
なかなかやらないからね。 |
糸井 |
(笑)。
やっぱ、楽しみなのはリハーサルだよね。 |
大貫 |
どうなるんだろう? |
糸井 |
おそろしい気さえする。 |
大貫 |
だけど、基本的にみんな、ちゃんと歌える人たちだし。
ギター1本でもいいっていう人だよね。
歌ってそこから始まるわけじゃない。 |
糸井 |
うんうん。 |
大貫 |
バンドでやってる若い子だちが、
ギター1本じゃ全然ダメっていうの多いのよ。
でも「Beautiful Songs」の5人は
自分の「歌」を持っているから。
そんなに多分、凝ったことも、できないし、
そのへんはシンプルにいくんじゃないかな。 |
糸井 |
その時だけのアレンジって、きっと出てくるよね。 |
大貫 |
でしょうね。 |
糸井 |
それはセッションしてて決めていくのかな。
みんながまだ、遠慮してるだろうね。 |
大貫 |
ねこかぶってるだけかも。
もうすぐライオンになるかも。 |
糸井 |
その意味では、
みんなもともとバンドマンなんだから、
わがままになれよっていうのが、
大貫“認め印”妙子の発言だよね。 |
大貫 |
わがままになるっていうんじゃなくてね、
それは別に、誰も、なんとも思わないし、
今よりもっといい意見があれば、
それを超えて言えばいいんだしってことです。 |
糸井 |
それぞれのメンバーに一言ずつ、
期待してることとか、
こうしてくれとかっていうことを、
無理矢理にでも今考えて、言ってほしいんだけど。 |
大貫 |
それぞれのメンバーに、ですか。
えー、期待してることとか?
うーん。 |
糸井 |
無理にじゃなくてもいいんですけどね。
全体のセッションについてでもいいんだけど、
なんか、自分なりの楽しみとか、あったら。 |
大貫 |
うんとね、やっぱり思うのは、見え方なんでしょうね。
それは最初にあっこちゃんと話したんだけれども、
単なるセッションじゃ、意味がない。
いろんな人が出てきて、一緒にやっただけでは。
そうではなくて、そこに、言葉で表せないんだけど、
ある共通項があるんだっていうことが見えるような、
感じられるようなことが大事だと思うんです。 |
糸井 |
ふむふむふむ。 |
大貫 |
それをいつかは、
伝えるために言葉にしなくちゃならないとは
思うんですけど。
それぞれの中では
なんとくなくわかってることじゃない?
|
糸井 |
あいまいには、みんな、認識してるんだよ。 |
大貫 |
なぜ、この人たちが
集まってやらなくちゃいけないのかっていう、
それこそ、それは音楽の中にあるものなんだけれど。
そこを、壊さない。
コンサートの間、全部を通して
常にそういう気持ちが流れているってことを
もう少し明確にしたいなって。 |
糸井 |
お客さんの中にもその共通認識がないと、
それって支えられないよね。
要するに、それぞれのファンが、
5分の1ずつ集まったって、意味ないもんね。 |
大貫 |
うん。 それでね、
これは糸井さんに詞をお願いしたっていうことを
含めてなんだけど、みんなが、
自分で歌詞を書いてる人間だってことなんですけど。
それもけっこう頑固に。 |
糸井 |
うん。 |
大貫 |
それで、歌詞を書く世界は、
それぞれ違うんだけれど、
共通項があるんですよね。暗黙の。 |
糸井 |
うん、あるんだよ。 |
大貫 |
たとえばこの一線を超えたら、
すごく人間として恥ずかしい、ていうような。
あるでしょう、これは恥なんだとか。 |
糸井 |
うんうん。 |
大貫 |
何を正しいと思っているのか、とか……。
私は勝手に、みんなの中にその共通の意識を
見ているだけなのかもしれないけど。
人におもねることだとか、
そういう、嫌だと思うことを
みんなやってないという共通項が心の中にある。
だからきっと、それだけでも、
伝わる何かだとは思います。
わたしのみんなに思う気持ち。 |
糸井 |
こりゃ、責任が、重いですなあ。 |
大貫 |
でも、ほら、違うもの見てる人間とは、
年齢に関係なく、やっぱり交われないっていうの
あるでしょう。 |
糸井 |
うんうん。せっかくだからね。せっかくだから
我慢することないよね、っていうことだよね。 |
大貫 |
わたしなんかは、
あんまり、世代でものを考えなくて、
個人と自分とのかかわりしか興味がない。
例えば同じ世代でも、
100個、話しても通じない人っているもん。 |
糸井 |
うん。 |
大貫 |
でも、20歳代でも、10個話せば
同じように感動し合えることもある。
そういうのが、みんなの中で、
共通認識としてあることを信じてるだけです。 |
糸井 |
うん。 |
大貫 |
だから多分、
一見まとまりのない打ち合わせしながらも、
なんかわかってるんでしょう。 |
糸井 |
きっと、リハーサルの時に見えてくるものが、
また急に増えてくるんだろうなあ。 |
大貫 |
うん。 |
糸井 |
打ち合わせしてる時って、
自分が何考えてるかもあいまいになりますからね。
その意味で、リハできっと、
小さなエゴが出たりしていくうちに、
また見えていくものがあるんだろうな。
楽しみだね、ちょっとね。 |
大貫 |
音楽やってる中で、
みんな新人でもないわけだから、
身体でわかっていることってあるじゃない?
距離感とか、なにをどうするべきか、とか。
だから、全然心配してないんだけど。
それ以上のものを作り上げないといけないなって。 |
糸井 |
わかりました。
どうもありがとう。 |
大貫 |
いいえ、ちゃんと話せなくって。 |
糸井 |
いや、これは、まとめないで、
このまま、出しますから。全然大丈夫ですよ。
じゃ、その6月の発売に向けて、ミックスを。 |
大貫 |
あ、そうですね。とりあえず、これだけは。 |
糸井 |
どんなタイプのアルバム? |
大貫 |
今度のアルバムはねえ、
8割がたアコースティックなんですけど。 |
糸井 |
へえ。 |
大貫 |
でも、アコースティックって言っても、
オーケストラとか、
スペインとかでもレコーディングしてるんで、
フラメンコのギターとかバンドネオンとか、
サックスカルテットとか。
そういう意味でのアコースティックなんですけど。 |
糸井 |
いいですねえ。 |
大貫 |
全体的にはわりと温かいかんじになってます。 |
糸井 |
流しっぱなしにできるタイプ?
さあ、聴くぞーっていうよりは。 |
大貫 |
うん。うるさくはないと思うよ。 |
糸井 |
じゃ、ぜひ、出来たら。 |
大貫 |
もちろん、もちろん。 |
糸井 |
どうもね、ありがとうございました。 |
大貫 |
はい、じゃまた。 |
糸井 |
失礼しまーす。 |