糸井 |
録音システムが上手くいかないなあ。
もしもーし、糸井でーす。 |
宮沢 |
宮沢です。 |
糸井 |
録音システムがちゃんとするまで雑談してようか。
今日、ポスターが出来あがって、
今、見ているところです。 |
宮沢 |
おお。 |
糸井 |
なんか、いいよ。 |
宮沢 |
バンドというか、コーラスグループのようですよね。
キャリア20年くらいの。 |
糸井 |
(笑)そうかもしれない。
あ、録音係から、
「宮沢さん、なにかしゃべっていただけますか」と。 |
宮沢 |
糸井さん、あれですか。
釣り行きましたか、今年は。 |
糸井 |
あ、録音オッケーです。
今年は、ですね……、行けてない、1回も。 |
宮沢 |
ぼくは1回、行きましたよ。 |
糸井 |
どこですか? |
宮沢 |
山梨県です。自分の小学校の横を流れる川です。 |
糸井 |
へえ! それはなにを狙う? |
宮沢 |
ヤマメです。 |
糸井 |
どうでした? |
宮沢 |
2匹ですね。 |
糸井 |
あ、悪くないねえ!
ということは、そこはもう、俺のフィールドだ、
みたいな気持ちになるねえ。 |
宮沢 |
それがねえ、灯台もと暗しでね、
行ったことなかったんですよ。
ハヤ(鮠)はやってたんですけど、
その上流部のヤマメはやったことなかったんです。 |
糸井 |
初めてだね、じゃあ。 |
宮沢 |
ええ。すごく嬉しくて。 |
糸井 |
うわあ。ぼくねえ、……って、
釣の話ばっかりしてないで
本題に入りましょうか。
電話、ぼくはほんとは苦手なんで、
たいしたことは聞けないかもしれませんけど、
まず、最初に、今回の「Beautiful Songs」、
気分はいかがですか。 |
宮沢 |
えーと、やっぱり、ぼく、ファンでしたからね。 |
糸井 |
なるほど。 |
宮沢 |
大貫さんは特に。 |
糸井 |
うんうん。 |
宮沢 |
慶一さんももちろんですけど。
だから、もちろん参加するんですけど、
「見たいな」っていう気持ちが一番ですね。 |
糸井 |
(笑)そういうのって、やっぱ、思うんだ。 |
宮沢 |
見たいっていうか、ライブに行きたいっていう感じが
非常にいいんではないかと。 |
糸井 |
ということは、舞台の上に上がっていて、
残念なくらいだと。 |
宮沢 |
でも、そういう気分で
ミュージシャンが立ってても、
また、いいんではないかと思うんですよ。 |
糸井 |
そういうことって、あんまりないよね。 |
宮沢 |
ないですよね。 |
糸井 |
野球の選手が、自分がプロ野球に入ってから、
「おお、長嶋さんだ、王さんだ!」って、
そんな気分ですか。 |
宮沢 |
そうかもしれないですよね。
ぼくもデビューして10年経つんで、
一緒にステージ立ったりしてるんですけども、
なんだか、初めて会ったのに
一緒にライブをやるような気分ですね。
10年くらい前の、小僧な気分に戻ってます。 |
糸井 |
その、小僧な気分になれる感じって、
なかなか味わえないでしょう。 |
宮沢 |
そうですよね。 |
糸井 |
回りがそうさせてくれないというか。
その意味では、この若いお2人に関しては、
すごくいいんですよね。 |
宮沢 |
ほんとですよ。
自分で求めても、無い場ですからね。
こちらから声かけてやるっていうのも、
また別の話だし。
他のみなさんも、ちょっと失礼かもしれないけど、
ぼくみたいに、見たいというか、
参加したいって思ってると思うんですよ。
だから、本人達が、一番、楽しみにしてる。
もしかしたらお客さんよりも。 |
糸井 |
うん。 |
宮沢 |
それをお客さんが見るわけですから、
だいぶいいSHOWになるんじゃないかと。 |
糸井 |
ステージ上にも観客がいるっていう気分ですね。 |
宮沢 |
そう、そういう気分ですね。
あと、音楽的には無限に近い組み合わせが
ありますよね。
山ほどあるやりたいことに、
どういう風に決着つけるかっていうのは、
楽しみでもあり、ちょっと不安でもあるんです。 |
糸井 |
自分のやりたい曲とメンバーの組み合わせに、
みんな、悩んでいるようですね。 |
宮沢 |
そうみたいですね。
自分のコーナーだけっていうんでなく、
全体も考えなくちゃいけないし。
泣く泣く、あきらめる曲が出てくるんではないかと。 |
糸井 |
初々しい演奏にはなるよね。きっとね。 |
宮沢 |
ですよね。 |
糸井 |
全部見たくなるね。
奥田くん、僕に「ついて来ないですか」て言うんだ。 |
宮沢 |
糸井さん、来ないんですか? |
糸井 |
いや、行くけどね。
そんな、俺、ツアーメンバーじゃないんだから、
って感じなんだけど。
でも、全部見たい気になるね。
楽曲のこと以外で、他のメンバーのファンの人達が
客席に来ますよね。そんなのも楽しみですよね。 |
宮沢 |
楽しみですね。
矢野さんのライブには出たことあるんですけど、
異様な緊張感なんですよね。 |
糸井 |
そうか(笑)。 |
宮沢 |
そでから立ち位置まで歩いて行くとき、
自分の足音が、妙にうるさく感じる。 |
糸井 |
ええ、そうなの!? |
宮沢 |
シーンとしてるなかに、
咳払いもなく、呼ばれてそでから行くと、
自分の靴音がコツコツコツって
すごくうるさく感じるんですよ。 |
糸井 |
ほんとかよー!? |
宮沢 |
それぐらい、研ぎ澄まされてるっていうか。 |
糸井 |
ジァンジァンのあの狭い所でも? |
宮沢 |
もちろんそうですよ。 |
糸井 |
5歩くらいしかないじゃない。 |
宮沢 |
その5歩がね、すごい道なんですよ。
今回も、音楽が始まってしまえば、
そういう感じもあるだろうし、
お客さんの方も、きっと意識するじゃないですか。
ぼくは奥田民生のファンだとか、
ぼくは矢野顕子さんで来てるとか、
お互い、きみはどうなんだ? みたいな、
そういうのがきっとあると思うんですよ。 |
糸井 |
うんうん。 |
宮沢 |
それがまた、
フラットな感じになるんではないかと。 |
糸井 |
お客さんは意外にかぶってるとは思うんだけど、
「この人のレコードが買いたくなったなあ」っていうのを、
みんなそれぞれが思ったらいいよね。 |
宮沢 |
最高ですよね。 |
糸井 |
ああ、でも、気分が全部初々しいですね。 |
宮沢 |
初々しいです。 |
糸井 |
ぼく、ちょっと、
ホームページにも書いたんだけど、
中学生に戻ったもの、この依頼受けた時。 |
宮沢 |
うん(笑)。 |
糸井 |
演劇少年とかがさ、演出家の人に声かけられただけで
眠れない、みたいなの、あるじゃない。
こういうことって、なかったなあ。 |
宮沢 |
ないですよね。 |
糸井 |
歌っていうものを大切に考えるっていう、
そういうテーマっていうのは、
宮沢くんはもちろんそうやってきたんだけれども、
あらためて、どんな感じですか。 |
宮沢 |
ややもすると、自分のステージっていうのは、
「おれを見てくれ!」みたいなことを
やりがちじゃないですか。 |
糸井 |
あ、ピッチャーみたいになるわけだ。 |
宮沢 |
たしかにエンターテインメントって、
そういうもんだと思いますよ。
でも、ぼくらっていうのは、
音楽に生かされているというか、
歌の方が一馬身、上にあるっていうか、
前にあるっていうか、
それを忘れるミュージシャンって、
だいたいかっこ悪いでしょう。 |
糸井 |
あ、いいなあ。 |
宮沢 |
それに気づかせてくれる機会だと思うんですよね。
自分が作った歌にしても、
「おれの方が音楽より偉いんだ」みたいな、
そういうふうに思う歌は聞きたくないし、
でも、自分も自覚症状あるし、時々。 |
糸井 |
はいはいはい。 |
宮沢 |
歌の方が先にあるんだぜ、っていうことですよね。 |
糸井 |
泣かせるなあ、それ。 |
宮沢 |
いや、ほんとね。 |
糸井 |
ぼく、自分のことなんだけど、
自分が詞を書いたの忘れちゃってて、
なんかで聴いた時に、これいいなあって思ったら
自分で書いたんですよって言われた時があって。
それって、ぼく、
生意気な意味で言ってるんじゃなくて、
書いた人間っていうのはほんとはどうでもよくって、
っていう話なんだけれど。 |
宮沢 |
わかります。 |
糸井 |
それって、あっこちゃんとか、
実践してる人なんだよね。
あのひと、他人の曲とか自分の曲とか
全然関係ないじゃないですか。
あの気分にみんながなるんだろうなあ。 |
宮沢 |
矢野さんのすごいとこ、そこですよね。 |
糸井 |
うん。 |
宮沢 |
全部、矢野の音楽になっちゃうんだけれども、
でも、最後に、矢野がお届けしました、みたいな
イメージがある感じじゃないですか。
それがね、すごく、
貫いていらっしゃるなあという気がしますね。 |
糸井 |
みんながそんな気分で集まると思うと、
ゾクゾクするねえ。 |
宮沢 |
歌は自分を見せる手段だ、なんていうのはね……。 |
糸井 |
初めに歌ありき、だよね。
あの、つまんないことですけど、
楽器はいっぱい持って行くんですか。 |
宮沢 |
楽器、なにも。 |
糸井 |
なにも、ですか? |
宮沢 |
ええ。 |
糸井 |
主にアコですか。 |
宮沢 |
いえ、多分、なにも持って行かないと思うんですよ。 |
糸井 |
どういうこと? |
宮沢 |
歌だけ。 |
糸井 |
歌だけっ!? |
宮沢 |
ええ。 |
糸井 |
おおおお、いいねえ。面白いね、それも。 |
宮沢 |
怒られそうなんですけど。 |
糸井 |
いや、それ、きみ一人だと思うよ。 |
宮沢 |
あははははは。多分そうですかね。 |
糸井 |
ね。わあ、いいわ。いい、いいニュースです、
面白い。すごく。ありがとう。
じゃまた、違うことでも会いましょう。 |
宮沢 |
はい。
|