5人の
Beautiful Songs

宮沢和史さん、電話で語る。
「ぼくらっていうのは、
 音楽に生かされている」


Beautiful Songs出演者への電話インタビュー、
今回は「THE BOOM」の宮沢和史さんに
登場していただきます。
聞き手は、darlingです。

糸井 録音システムが上手くいかないなあ。
もしもーし、糸井でーす。
宮沢 宮沢です。
糸井 録音システムがちゃんとするまで雑談してようか。
今日、ポスターが出来あがって、
今、見ているところです。
宮沢 おお。
糸井 なんか、いいよ。
宮沢 バンドというか、コーラスグループのようですよね。
キャリア20年くらいの。
糸井 (笑)そうかもしれない。
あ、録音係から、
「宮沢さん、なにかしゃべっていただけますか」と。
宮沢 糸井さん、あれですか。
釣り行きましたか、今年は。
糸井 あ、録音オッケーです。
今年は、ですね……、行けてない、1回も。
宮沢 ぼくは1回、行きましたよ。
糸井 どこですか?
宮沢 山梨県です。自分の小学校の横を流れる川です。
糸井 へえ! それはなにを狙う?
宮沢 ヤマメです。
糸井 どうでした?
宮沢 2匹ですね。
糸井 あ、悪くないねえ!
ということは、そこはもう、俺のフィールドだ、
みたいな気持ちになるねえ。
宮沢 それがねえ、灯台もと暗しでね、
行ったことなかったんですよ。
ハヤ(鮠)はやってたんですけど、
その上流部のヤマメはやったことなかったんです。
糸井 初めてだね、じゃあ。
宮沢 ええ。すごく嬉しくて。
糸井 うわあ。ぼくねえ、……って、
釣の話ばっかりしてないで
本題に入りましょうか。
電話、ぼくはほんとは苦手なんで、
たいしたことは聞けないかもしれませんけど、
まず、最初に、今回の「Beautiful Songs」、
気分はいかがですか。
宮沢 えーと、やっぱり、ぼく、ファンでしたからね。
糸井 なるほど。
宮沢 大貫さんは特に。
糸井 うんうん。
宮沢 慶一さんももちろんですけど。
だから、もちろん参加するんですけど、
「見たいな」っていう気持ちが一番ですね。
糸井 (笑)そういうのって、やっぱ、思うんだ。
宮沢 見たいっていうか、ライブに行きたいっていう感じが
非常にいいんではないかと。
糸井 ということは、舞台の上に上がっていて、
残念なくらいだと。
宮沢 でも、そういう気分で
ミュージシャンが立ってても、
また、いいんではないかと思うんですよ。
糸井 そういうことって、あんまりないよね。
宮沢 ないですよね。
糸井 野球の選手が、自分がプロ野球に入ってから、
「おお、長嶋さんだ、王さんだ!」って、
そんな気分ですか。
宮沢 そうかもしれないですよね。
ぼくもデビューして10年経つんで、
一緒にステージ立ったりしてるんですけども、
なんだか、初めて会ったのに
一緒にライブをやるような気分ですね。
10年くらい前の、小僧な気分に戻ってます。
糸井 その、小僧な気分になれる感じって、
なかなか味わえないでしょう。
宮沢 そうですよね。
糸井 回りがそうさせてくれないというか。
その意味では、この若いお2人に関しては、
すごくいいんですよね。
宮沢 ほんとですよ。
自分で求めても、無い場ですからね。
こちらから声かけてやるっていうのも、
また別の話だし。
他のみなさんも、ちょっと失礼かもしれないけど、
ぼくみたいに、見たいというか、
参加したいって思ってると思うんですよ。
だから、本人達が、一番、楽しみにしてる。
もしかしたらお客さんよりも。
糸井 うん。
宮沢 それをお客さんが見るわけですから、
だいぶいいSHOWになるんじゃないかと。
糸井 ステージ上にも観客がいるっていう気分ですね。
宮沢 そう、そういう気分ですね。
あと、音楽的には無限に近い組み合わせが
ありますよね。
山ほどあるやりたいことに、
どういう風に決着つけるかっていうのは、
楽しみでもあり、ちょっと不安でもあるんです。
糸井 自分のやりたい曲とメンバーの組み合わせに、
みんな、悩んでいるようですね。
宮沢 そうみたいですね。
自分のコーナーだけっていうんでなく、
全体も考えなくちゃいけないし。
泣く泣く、あきらめる曲が出てくるんではないかと。
糸井 初々しい演奏にはなるよね。きっとね。
宮沢 ですよね。
糸井 全部見たくなるね。
奥田くん、僕に「ついて来ないですか」て言うんだ。
宮沢 糸井さん、来ないんですか?
糸井 いや、行くけどね。
そんな、俺、ツアーメンバーじゃないんだから、
って感じなんだけど。
でも、全部見たい気になるね。
楽曲のこと以外で、他のメンバーのファンの人達が
客席に来ますよね。そんなのも楽しみですよね。
宮沢 楽しみですね。
矢野さんのライブには出たことあるんですけど、
異様な緊張感なんですよね。
糸井 そうか(笑)。
宮沢 そでから立ち位置まで歩いて行くとき、
自分の足音が、妙にうるさく感じる。
糸井 ええ、そうなの!?
宮沢 シーンとしてるなかに、
咳払いもなく、呼ばれてそでから行くと、
自分の靴音がコツコツコツって
すごくうるさく感じるんですよ。
糸井 ほんとかよー!?
宮沢 それぐらい、研ぎ澄まされてるっていうか。
糸井 ジァンジァンのあの狭い所でも?
宮沢 もちろんそうですよ。
糸井 5歩くらいしかないじゃない。
宮沢 その5歩がね、すごい道なんですよ。
今回も、音楽が始まってしまえば、
そういう感じもあるだろうし、
お客さんの方も、きっと意識するじゃないですか。
ぼくは奥田民生のファンだとか、
ぼくは矢野顕子さんで来てるとか、
お互い、きみはどうなんだ? みたいな、
そういうのがきっとあると思うんですよ。
糸井 うんうん。
宮沢 それがまた、
フラットな感じになるんではないかと。
糸井 お客さんは意外にかぶってるとは思うんだけど、
「この人のレコードが買いたくなったなあ」っていうのを、
みんなそれぞれが思ったらいいよね。
宮沢 最高ですよね。
糸井 ああ、でも、気分が全部初々しいですね。
宮沢 初々しいです。
糸井 ぼく、ちょっと、
ホームページにも書いたんだけど、
中学生に戻ったもの、この依頼受けた時。
宮沢 うん(笑)。
糸井 演劇少年とかがさ、演出家の人に声かけられただけで
眠れない、みたいなの、あるじゃない。
こういうことって、なかったなあ。
宮沢 ないですよね。
糸井 歌っていうものを大切に考えるっていう、
そういうテーマっていうのは、
宮沢くんはもちろんそうやってきたんだけれども、
あらためて、どんな感じですか。
宮沢 ややもすると、自分のステージっていうのは、
「おれを見てくれ!」みたいなことを
やりがちじゃないですか。
糸井 あ、ピッチャーみたいになるわけだ。
宮沢 たしかにエンターテインメントって、
そういうもんだと思いますよ。
でも、ぼくらっていうのは、
音楽に生かされているというか、
歌の方が一馬身、上にあるっていうか、
前にあるっていうか、
それを忘れるミュージシャンって、
だいたいかっこ悪いでしょう。
糸井 あ、いいなあ。
宮沢 それに気づかせてくれる機会だと思うんですよね。
自分が作った歌にしても、
「おれの方が音楽より偉いんだ」みたいな、
そういうふうに思う歌は聞きたくないし、
でも、自分も自覚症状あるし、時々。
糸井 はいはいはい。
宮沢 歌の方が先にあるんだぜ、っていうことですよね。
糸井 泣かせるなあ、それ。
宮沢 いや、ほんとね。
糸井 ぼく、自分のことなんだけど、
自分が詞を書いたの忘れちゃってて、
なんかで聴いた時に、これいいなあって思ったら
自分で書いたんですよって言われた時があって。
それって、ぼく、
生意気な意味で言ってるんじゃなくて、
書いた人間っていうのはほんとはどうでもよくって、
っていう話なんだけれど。
宮沢 わかります。
糸井 それって、あっこちゃんとか、
実践してる人なんだよね。
あのひと、他人の曲とか自分の曲とか
全然関係ないじゃないですか。
あの気分にみんながなるんだろうなあ。
宮沢 矢野さんのすごいとこ、そこですよね。
糸井 うん。
宮沢 全部、矢野の音楽になっちゃうんだけれども、
でも、最後に、矢野がお届けしました、みたいな
イメージがある感じじゃないですか。
それがね、すごく、
貫いていらっしゃるなあという気がしますね。
糸井 みんながそんな気分で集まると思うと、
ゾクゾクするねえ。
宮沢 歌は自分を見せる手段だ、なんていうのはね……。
糸井 初めに歌ありき、だよね。
あの、つまんないことですけど、
楽器はいっぱい持って行くんですか。
宮沢 楽器、なにも。
糸井 なにも、ですか?
宮沢 ええ。
糸井 主にアコですか。
宮沢 いえ、多分、なにも持って行かないと思うんですよ。
糸井 どういうこと?
宮沢 歌だけ。
糸井 歌だけっ!?
宮沢 ええ。
糸井 おおおお、いいねえ。面白いね、それも。
宮沢 怒られそうなんですけど。
糸井 いや、それ、きみ一人だと思うよ。
宮沢 あははははは。多分そうですかね。
糸井 ね。わあ、いいわ。いい、いいニュースです、
面白い。すごく。ありがとう。
じゃまた、違うことでも会いましょう。
宮沢 はい。

次回は奥田民生さんの登場です。
お楽しみに!

2000-05-18-WED

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