5人の
Beautiful Songs

LIVE Beautiful Songs
〜ほぼ日読者レビュー その2〜

【1+1+1+1+1+1+1+1+1>9】
まえだはるこ


大阪フェスに行ってから丸3ヶ月、
ライブ盤発売が決まって丸2ヶ月、
担当・シェフ武井氏より連絡があって2日。
こんなに「待った」気分ににさせられた思いは、
あまり記憶にありません。

Beautiful Songsのコンサートは、大阪で見ました。
私が、チケットを買った理由は、
ほぼ日でプロジェクトの全貌が見えてくるにしたがって
「楽しそう!」と思ったからです。
5人のアーティストのことは、ほとんど知りませんでした。
そのとき私が身体を通していたものは、奥田民生さんの
アナログ盤『GOLDBLEND』のみ。
チケットを買った私に、友人たちは、
「殆ど聞いたことない『うた』で、
 しかもすごく交通費がかかるのに
 (=地元のライブ2度ぐらい行けるのに)
 遠い大阪まで行こうとするなんてすごい」
と言ったほどです。

そして、ライブが終わって。

このライブは、私に新しいミュージシャンによる
心地良い音楽を開拓してくれました。
音楽って、日常生活の中では「主役」にくることは
あまりありませんよね。
でも、こうして聞くひとのからだに取りこまれたものは
いろんな形に姿を変えていく可能性を
無限大に持っているんだなあ、と、
音楽、そして歌の魅力を再認識させられました。

暖かい、ほんのり幸せな気持ちになりました。

**********

そして今日──。
カセットの再生ボタンを押した後、
「この日・その場所・あの瞬間」が
心地よい風となって吹き抜けていきました。

まず私の耳に、奥田さんの「たったった」が
聞こえてきました。
奥田さんは想像以上に伸びやかで艶があり、
説得力がある声をされているのにオドロキました。
このライブで奥田さんをイチバンだったと印象づけたのが
この歌声の衝撃です。
奥田さんが紡ぐ歌詞は多彩な変化球で突いてくると
思うのですが(歌詞ではないけれど、Beautiful Beautiful
Songsの副題に「それは恋人の犬か?」とつけるあたりも)、
声でその曲全体を引き締め、
音でその曲のイメージの落下点を
うまくバランス取っているんですね。

流れて3曲目。「月にハートを返してもらいに」で
矢野さんのバックが入っていますが、
最初のコーラスに入った途端と鳥肌が立ちました。
音程、タイミング、天性の声…、
赤いパンフレットに書かれていた
「天才少女の呼び声」通りのパフォーマンスに
憧れを感じました。またこの曲では、
ドラムとベースの絡みが特に素晴らしく
耳の奥をゾクゾクさせられました。

7曲目の「突然の贈りもの」では
「大貫さんワールド」を堪能できました。
後ろからふっと手を捕まれて戸惑いながらも
序々に・いつの間にか一緒に走り出しているような
優しさと包容力を兼ね備えた声と間(リズム)の
取り方に心地よさを感じました。

宮沢和史さんは、9曲目「抜殻」と
10曲目の「二人のハーモニー」。
「この方は派手さはないが、人々に安心感を与える声と
 リズムとたたずまいを持っている」と感じました。
また、「二人のハーモニー」ではパーカッションのリズムが
私はお気に入りで、頭の中でステージが最も鮮明に
甦りました。小鳥(矢野さん)を支えている
大木(宮沢さん)という役割分担が
見事に出来上がっていました。

鈴木慶一さんの作品の中では
15曲目の「ニットキャップマン」が一番好きです。
この曲を聴くと、鼻歌を歌いたくなります。
ぶ厚い妖しいムードのある声、
歌の部分部分で声の鼻のかけ方を変えているのかな…、
と考えながら聞いていました。
また、一番ステージで嬉しそうにしていたのも
鈴木さんでした。

今回の目玉のヒトツでもある
糸井重里さん作詞の「Beautiful Beautiful Songs」も
5者5様で、音の表現に注目していました。
各アーティストは実験的な取り組みを目指したのではなく、
名刺代わりになる「わたしのうた」を目指したのかなと
思いました。そのポイントは音の流れ
(例えば♪ドミソド〜)に顕著に表れていると思います。

また、「それだけでうれしい」など
全員参加の曲も数曲ありますが、
ハーモニーの素晴らしさ、生バンドのかっこ良さ、
様々な声や音、思いが交じり合うことで
1+1+1+1+1+1+1+1+1>9
の世界を作り上げていました。
全員音楽が大好きで、才能があり、惹かれあい、
認め合った環境の中で生まれたこの集いの集大成は
「毎年定例化するにふさわしい」
と誰もが思うことと思います。

このCDは、
老若男女「音楽が好きで聞きたいと思う」人々に一度は
接してほしい!
私みたいに、予想以上にとっぷりとつかるかもしれませんよ。
手放せないです。今年購入のCD傑作集TOP10に
すでに(まだ買ってないのに!)エントリーされてます。
私にとっては縁を生み出したCD、
大切にしていきたいと思います。

P.S.
1つ文句を言えば、MCや曲の前後の時間が少なかった
ことが私は少し残念です。歌ではないにしろ
ライブの雰囲気を伝える一つの大きなポイントだと
思うのです。

2000-10-14-SAT
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