ゾーヴァの箱舟
 (画像下部のナビゲーションボタンで、
 絵を拡大して、細部をご覧ください。)
糸井 この大きな「ゾーヴァの箱舟」を観たときに
印刷物でしか観たことがなかったので、
こんなに大きいと想像していなく、
驚きました。
(※編集部註
  絵のサイズは
  横1420センチ×縦1120センチです)
ゾーヴァ この「箱舟」の絵は
実物大の再生というのが
印刷物ではできないんです。
一部だけをクローズアップして見せると
この恐竜と舟の間の一定の緊張感が
失われてしまいますし、
絵の全体を見せると
舟が実際の絵よりは
かなり小さくなってしまいます。
結局、みなさん、
このオリジナルの大きさでの
迫力と緊張感を観たことがないんですよね
糸井 これは、どれぐらいの時間をかけて
描いた絵なんですか?
ゾーヴァ もうずいぶん昔に描いたので
忘れちゃってるなぁ‥‥
確かに長くかかったのですが、
2ヶ月か、3ヶ月ぐらいでしょうか。
糸井 はぁー、ある瞬間を描いているのに、
描くのに時間が長くかかっているというのは
描いている人にとって
大変なことをしていると思うんですけど。
ゾーヴァ まあ、どんな絵を描いても
ある瞬間しか描くことができないんですね。
もっと時間をかけて
描いている人もいますし。
ぼくにとって
この絵を描いていてすごく楽しかったのは
この状況や瞬間を描くというよりも
海原の様子や
空の様子を描くということだったんです。
●最後に展覧会で実際にゾーヴァさんの絵を
 ご覧になった方から届いたメールをご紹介します。


小5の息子を連れて
親子3人で見に行ってきました。

息子は行く前
「僕は行かなくてもいいでしょ。
絵なんかつまんないよ。」
と文句タラタラ。
しかし、会場に入ってすぐ、
エスターハージー王子の
パンツをはいた姿を見てからは夢中でした。
「かわいい!」「お母さん、高速豚だって」
「ペンギンが空飛んでる!」
次から次へ私が引っ張りまわされる羽目に。

しばらくして、あれどこに行ったのかしらと思ったら、
いすに座り、置いてある本を読む息子の姿がありました。
親が口をすっぱくして言っても
本など読まない息子が、真剣です。
しかし、普段読書に慣れていないせいで
なかなか読み進まず、時間がかかります。

まわりに沢山の人もいて、
いつまでも座っているのは迷惑と思い
注意しようとしましたが、
あまりの真剣さに声をかけられず、
私たちは黙って見ていました。
20分以上かかったでしょうか。
ようやく読み終わった息子がやってきて
「お母さん、この本買ってくれる? 家で読みたい。」
そう言って差し出したのは
『エスターハージー王子の冒険』でした。
はじめに見た絵の衝撃が続いていたのですね。

なんだかとてもうれしくて、涙が出そうになりました。
自分から本読むと言う気持ちに
なってくれたこともありますが、
一枚の絵が子供の心を
こんなに動かすものなのかと驚きました。
私たちはミヒャエル・ゾーヴァさんから
とても大切なものをいただいたんですね。

本当に素敵な絵でした。出会えて幸せです。
(Ayako.Y)