俺が「ほぼ日」?
「5DWメンズショップイシカワ」を
プロデュースしてくださった石川顕さんが
お亡くなりになって49日がたちました。
石川さんがあたためてくれていた
「LONG TRACK FOODS」
(ロングトラックフーズ)認定済み、
「ULTRA HEAVY」(ウルトラヘビー)の
真っ赤なロングスリーブTシャツも
無事完成して発売されましたが、
今日は、石川さんを「ほぼ日」とつなげてくれた
編集者でありタコス屋さんの阿部太一さんと、
イラスト、デザイン、なんでもできる
Bob Foundationの朝倉洋美さんのおふたりに
「5DW」がはじまる頃の石川さんとの
思い出話をお聞きしたいと思います。
阿部太一さんのプロフィール
朝倉洋美さんのプロフィール
仕事の話はちょっとだけの人。
阿部
僕は石川さんとちゃんと出会ってから
2年半くらいのお付き合いでした。
石川さんのまわりの方々の中では、
僕がいちばん短いくらいかもですね。
石川さんはマガジンハウスで仕事をされていたので、
以前からもちろんその存在は知っていましたけれど。
朝倉
私は、最初はストッキスト
(*)
だったかな。
2009年くらいのことで、
石川さんはなんかいつも会場にいる人で、
なぜか「校長」って呼ばれていて、
「これはこうだから」と、運営のルールをつくってた。
本業はスタイリストというのは
あとから気づいたくらいです。
(*)池袋の自由学園明日館で年に一度開催されるインテリアやファッションなどの合同展示会「FOR STOCKISTS EXHIBITION」。
阿部
朝倉さんは、最近は、
石川さんからよく頼まれごとも
ありましたもんね。
朝倉さんのことを「ボブ」って呼んでましたね。
朝倉
「ULTRA HEAVY」のジェリー鵜飼さんと
神山隆二さんがどんどんお忙しくなって、
「ボブ、これやってくれない?」って
頼んでくれるようになったんですよ。
阿部
嬉しそうに、
「鵜飼くんと神山が売れて、
全然相手にしてくれないんだよ」って
よく言っていましたもんね。
朝倉
それで最初に形になったのは、
「フレドリックパッカーズ」というバッグのメーカーで
石川さんがビジネスバッグのラインで
つくっていたものに、
「女性でも買えるデザインが欲しいなあ」
というリクエストに応えたものでしたね。
いろいろグラフィックを描いたら、
「これをこっち、こっちをこれに」と
ちゃちゃっとディレクションされて、
気がついたら物が完成した状態で
見せてくれました(笑)。
あと、「テンベア」のキャンバス生地を使って
「フレドリックパッカーズ」がつくった
本格仕様のメッセンジャーバッグという
石川さんじゃないと許されないような
プロダクトがあったんですけど、
「ググッとしぼり上げるように
ベルトを締めなきゃダメよ」と
背負い方まで教え込まれました。
それで、「ボブちゃん、なんでもいいから
UHみたいなの描いて」ってお願いされたり。
デザイン料は基本、現物支給。
阿部
だから面白いものがつくれるんでしょうね。
人を生かすことにもすごく長けていましたしね。
朝倉
グラフィックもいっぱい書きましたけど、
商品化されたのは10点くらい。
「これとこれ合わせてもいい?」って
ロイヤルホストで話したり、
私の事務所にもふらっと来てくれて話したり。
阿部
僕は、そんな朝倉さんに
「石川さんとご飯行くから」って誘われて、
尾山台のロイヤルホストではじめてお会いしました。
仕事柄、はじめての人に会うときって、
なにかを決めることがあるときだけど、
その日はランチセットを決めただけ(笑)。
4時間しゃべって、
次も誘ってもらって行ったのが、
目黒の、やっぱりロイヤルホスト。
とくに用事もなかったんですけどね。
朝倉
そうそう、仕事の話って
基本ほとんどしないですもんね。
阿部
でも、最初、石川さんに
この「ほぼ日」のお仕事のご相談をしたら
「どうだろうねえ」って。
糸井(重里)さん好きですか? って聞いたら、
「別に、ふつうだよー」って。
「俺が『ほぼ日』?」とも言っていましたけど、
一回遊びに行きます? って聞いたら、
「うん、行く」ってなった。
石川さんを「ほぼ日」にご紹介してよかったのは、
神保町にもロイヤルホストがあるってこと。
ドリンクバーはなかったんですけど。
朝倉
神保町でよかった!(笑)
阿部
「ほぼ日」のみなさんにやさしくされて、
「こんなにやさしくされたことない」って
言っていましたからね。
次もお誘いしたら来てくれて、
でも、そのときにはもう自分で動かれていて、
いろいろ提案してくれましたから。
ブランド名もロゴのイメージもできていて、
なんなら、ロゴの発注もすでにされていて。
石川さんからの発注って、
みなさん石川さんに合わせてやられているし、
これはジャジー
(*)
にやっていくものなんだなって、
これからの動き方がわかったような気がしました。
僕の事務所にも来てくれて、
3時間くらい話すんですけど、
最初にちょっとだけ仕事の話をして、
タコス食べて帰る。
もしくは、最後にちょっとだけ、
「これさあ」って言い出して、
少し仕事の話をする。
(*)ジャズのセッションでミュージシャンがお互いの演奏に触発されながらプレイを重ね、全体の流れをつくっていく様子。そんなふうに仕事をしていくイメージ。
朝倉
私は石川さんと熊本の天草に、
イベントに出るために一緒に行ったことがありますけど、
いい具合に付かず離れずの関係性で最後まで。
夕飯は一緒に食べるけど、
明日どうするかは、聞かない限りわからない。
たぶん、いっぱい決めちゃうと嫌なんだろうなって
いうのはわかったから、うっすら聞くくらい。
結局、帰りもバラバラでした。
阿部
そういうところも自由気ままだし、
ものづくりに対しても
好きにやらせてくれる人ですよね。
俺がケツ持つからって。
ちょっと編集者っぽいところもある。
絶対に人の仕事も馬鹿にしない。
好きなものもちゃんと言うし、
嫌いなものも言うけど、そこに悪意はない。
ふと、石川さんが「5DW」は
「俺の集大成みたいだな」って言っていたんですけど、
僕は集大成じゃなくて、
まだまだ途中が見たかったなって思います。
朝倉
「5DW」にすごく使命感をお持ちでしたよね。
阿部
それは間違いない。
「ULTRA HEAVY」は売らないことが
コンセプトだったから、
「3個以上売るのは久しぶり」
って言っていましたしね(笑)。
2024-11-12-TUE
(おわりです)
[STAFF]
企画・プロデュース:石川顕
文:小笠原民織