手彫りのカップ「kikisa」は
このようにつくられる。
[鼎談]
Akihiro Woodworks アキヒロジン
Akihiro Woodworks 秋廣琢
5DW 石川顕
もうめっきり寒くなってきましたが、
まだまだ日差しも眩しかった10月初旬、
我々「5DW メンズショップイシカワ」のメンバーは、
店長の石川顕先輩の後ろをくっつくように、
ショップで取り扱うクラフトのつくり手たちを訪ねて、
鹿児島を訪れました。
近年の鹿児島といえば、
避けて通れないのが、お茶であり
(いまや緑茶の生産量日本一!)、
アーツ&クラフツということで、
ここに「5DW 鹿児島クラフト編」として、
「Akihiro Woodworks」、「STACK CONTAINERS」、
「ONE KILN」、「RHYTHMOS」の4つの工房をまわり、
会って、話して、見て、触って、感じてきたことを、
石川店長とともにたっぷりお届けします!
今回、まず訪れたのは、
鹿児島の前衛的木工集団「Akihiro Woodworks」
(アキヒロ ウッドワークス)。
ここはアキヒロジンさんと
秋廣琢さん兄弟の工房です。
「5DW メンズショップイシカワ」では、
木彫りのカップ「kikisa」(キキサ)、
ほぼ日だけのネイビーの漆をまとった
「kikisa urushi」(キキサ ウルシ)、
木彫りカップ「jincup」(ジンカップ)をベースに、
同じく鹿児島の陶磁器工房
「ONE KILN」(ワンキルン)と
磁器でつくった「jincup ceramics」
(ジンカップ セラミックス)、
木彫りの鳥「Chicchi」(チッチ)に、
ブルー漆の青い鳥「BlueBird Chicchi Urushi」
(ブルーバード チッチ ウルシ)が登場します。
なかなか見ることができない製作現場を訪れ、
たくさんおしゃべりしながら、その仕事姿を見ていると、
気がつけば、つくり手とその作品が
「ひとつ」に見えてくるから不思議です。
魂が乗り移るってこういうことかも?!
とわかった鹿児島の旅、1日目をどうぞ。
- 琢
- そろそろ工場に行きますか?
- 石川
- 行きましょう、行きましょう。
- ジン
- 今はちょうど数日前に
「kikisa urushi」の漆塗りが上がってきたので、
彫りの作業をはじめているところです。
- 石川
- おー、まさに、これだ!
今回、「5DW」で販売するのは、
今までのブルーの漆ではなくて、
はじめてつくってもらっている
ネイビーの漆のものなんです。
ほんと、このネイビーはいい色だね。
美味しく飲めますね、コーヒーも。
ちなみに、漆はどこで塗ってもらっているの?
- ジン
- 薩摩半島のほぼ中心にある川辺(かわなべ)という
仏壇の街でやってもらっています。
漆器の街というわけではなく、
職人さんも器を塗ったことがなかったので、
ある意味、新しい分野に挑戦しながら
やってもらっていますね。
- 石川
- それはいいね。
頭を柔らかくすると予想外のいいものができますしね。
漆は先に塗っておいて、
それから削っていくんだよね?
- ジン
- そうですね、
まず、ベースになる形を僕らがつくってから
漆塗りの職人さんに内側とフチの部分まで塗ってもらい、
乾いたらこの工房にまた戻ってきて、削っていきます。
彫っているとすぐに手が痛くなってしまうので、
左手をうまく使うのがポイントですね。
今では万年腱鞘炎です‥‥。
削り終わったら、ウレタンを塗って仕上げます。
- 琢
- 使い込むといい味が出るんですよ。
この木自体も、丸太から買っていて、
3年から5年くらい乾燥させてから
ようやくつくりはじめるんです。
カップには鹿児島県産のタブノキを使っています。
- ジン
- 朝8時から夜7時まで
1日中ずっとやっているのに
注文数に全然追いつかない‥‥。
あと、500個やるのかー! って。
- 石川
- 完全に千本ノックですね。
今の日本でこんなに毎日
手で彫ってつくりつづけているのは
ジンくんと琢くんくらいかも。
- 琢
- 僕とジンの彫り方の差が
わかる人がいたらすごいですよ。
髪型も違えば、カップの削り方も違いますからね。
僕の場合は彫りが深くて、
「Chicchi」(チッチ)の彫り方に似ているんです。
理想のノミの使い方は、右から入って左に出る。
職人の手の癖がノミを自分のものにしていくので、
お互いのノミを替えてしまうと使いづらいくらいです。
- 石川
- 「Chicchi」はどうしてつくるようになったの?
- 琢
- ジンの娘が1歳の誕生日のときにつくってあげたのが
「Chicchi」なんです。
鳥のことをチッチって呼んでいたので。
もう10年以上前の話ですね。
形も少しずつ変化しながら、今に至ります。
- 石川
- 今回は「Chicchi」のブルーの漆バージョンも
登場しますからね。
この「Chicchi」はどこに置いても様になるというか、
びっくりするくらいすっと馴染む。
- 琢
- お子さんたちも喜んでくれるはずです。
- 石川
- 余談ですが、
僕は必ず旅行には「kikisa」を持っていくんです。
それでインスタントコーヒーを飲む。
肌身離さず持っているのが「kikisa」だし、
家での癒しが「Chicchi」なんです。
- ジン
- ほんと嬉しいです。
最近は1日中つくっていると
肩こりもひどいので
励みになります。
- 石川
- 前に、ジンくんがつくるカップを
「ONE KILN」の城戸くんのところで
セラミックでつくるのはどう?
って申し訳ないくらい気軽に提案して、
ふたりが一生懸命考えてくれて出来上がったのが
「jincup ceramics」。
こちらも今回販売します。
- ジン
- 手彫りだと、年間でつくれる数の限界もあるし、
新しいチャレンジができたことに感謝しかないです。
「jincup ceramics」は型でつくるのですが、
「排泥鋳込み」という技法を使っています。
磁土が泥になるように調整して、型に流し込み、
一定時間待って泥を流し出すと、
ある程度の厚みで型に残るのですが、
こぼす際の泥の切り具合や、
待ち時間の調整によって
器の厚みや内側に残る形が変化します。
型とはいえ、
それぞれが少しだけ自然な個性を持った個体として
成形されるのがいいなって思っています。
- 石川
- すごいね、
まったく形も一緒かと思っていたけど、
気持ちは手で彫るのと近いんだね。
- ジン
- 「不定形を定型する」という「jincup」の考えを
「jincup ceramics」もしっかり受け継いで
やっていければって思っているんです。
- 石川
- あとさ、「kikisa」を入れる袋をまたつくりましょう。
江藤くんにお願いして、
「kikisa」が2つ入るようなものを。
タイベックと薄手の透けるような
コーデュラナイロンで。
- ジン
- 銭湯行くときにも使えそうですね。
- 石川
- 何かにつけて便利だと思いますよ。
2023-12-01-FRI
(おわります)
鹿児島の木工作家のアキヒロジンさんと秋廣琢さんがつくる
「Akihiro Woodworks」の木彫りのカップ「kikisa」、
ネイビーの漆をまとった「kikisa urushi」、
木彫りカップ「jincup」をベースに、
同じく鹿児島の陶磁器工房「ONE KILN」と
磁器でつくった「jincup ceramics」、
木彫りの鳥「Chicci」、
ブルー漆の「BlueBird Chicci Urushi」が
5DW WEBショップにて販売中。