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O2 BETTER THAN ONE
魔法のカットソー、FIROを語る 魔法のカットソー、FIROを語る
  • つくった人 白井 賢治
  • 売ってる人 畑野 佑紀絵
  • 着ている人 佐伯 敦子

〈O2〉では、オリジナルアイテム以外にも
「これはオツだな」と思ったものを、
いろいろセレクトしていこうと思います。
はじめに紹介するのは「FIRO(フィーロ)のカットソー」。
ぱっと見はふつうなのに、
まるで着ていないかのような着ごこちのよさと、
どんな体型の人にもなじんでしまう伸縮性で、
いちど着たらやみつきになってしまうというのです。
開発者の白井賢治さんと、お店でフィーロを扱っている
「ブラゾン ドゥ テール」オーナーの畑野佑紀絵さん、
そしてフィーロの愛用者、スタイリストの佐伯敦子さん、
3人にその魅力を語っていただきました。

白井 賢治さんのプロフィール

白井 賢治(しらい けんじ)

有限会社フィーロ代表取締役社長。
大手アパレルメーカーにてニット製品の素材開発、
商品企画、MDなど幅広く経験したのち独立。
1998年にブランド「FIRO BIANCO UNO」を設立。
40年以上、素材と向き合った経験を活かし、
ベーシックかつ肌ざわりがいい商品をうみだしている。

畑野 佑紀絵さんのプロフィール

畑野 佑紀絵(はたの ゆきえ)

セレクトショップ「Blason de Terre
(ブラゾン ドゥ テール)」オーナー。
セレクトショップにて販売から店長、バイヤー、
新店舗のオープンなどを経験したのち、
2008年に東京・広尾にブラゾン ドゥ テールをオープン。
「モードを日常に取り込む」をコンセプトに、
流行に流されず長く愛用できるものを紹介している。
公式サイトをみる >

佐伯 敦子さんのプロフィール

佐伯 敦子(さえき あつこ)

スタイリスト/yunahicaディレクター。
編集、パリ在住経験を経て現在に至る。
美意識の高さや鋭い審美眼で、
各界のクリエーターはもちろん、
モデル、女優からの信頼も厚い。
「ほぼ日」では「CINÉ & TRAVEL」シリーズの
デザイン監修も努めていただいています。

ストレスなし、極上の着ごこち。

――
本日はおあつまりいただき、ありがとうございます。
はじめてフィーロの製品を拝見したとき、
「こんなの見たことがない!」とびっくりしたんですが、
さて、これをインターネットでどう伝えたらいいのか。
悩んだ結果、つくった人、売ってる人、着ている人、
その3人で語っていただくことにしました。
畑野
ほんとうは、着てみていただくのが
いちばんいいんですけど。
佐伯
たしかに。
このよさをことばで伝えるのはむずかしい。
――
見ためは品があって高級そうだけど、
まあざっくりいえば、薄手のカットソーですよね。
佐伯
でも着ごこちが、ほかとはまったくちがいます。
ふだん着ているとよくわかります。
まったくストレスがないし、
肌ざわりもサラサラで心地いい。
汗をかいてもはやく吸ってくれて、
ふつうののTシャツよりも、においが気になりません。
白井
糸の撚りを強くしているので、
水分をはやく吸ってくれて、速乾性があるんです。
汗がすぐに乾くから、においが残らないんでしょうね。
佐伯
洗濯してもすぐに乾きます。
だから、生乾きのにおいなんて、ありえないです。
白井
夏は1枚で着てもらったほうが
きもちいいと断言できます。

着れば、その人なりのかたちになってくれる。

――
タイトなつくりなのに、
女性用はサイズが1つしかないのも、おどろきました。
畑野
心配になるかたもいらっしゃると思いますが、
まずだいじょうぶです。
白井
義理の姉のサイズが15号ぐらいなんですが、
着てもピタピタになることはないようで、
ずっと愛用してくれています。
――
そんなに伸びるんですか。
白井
はい。しかも、きゅうくつに感じないんです。
ポリウレタンが入っているわけではなく、
糸の力だけで伸び縮みするので、
体のラインに食いこんだりしない。
ふわりと寄り添ってくれます。
畑野
1枚で着ても、体の気になるラインを
ひろうことはありません。
佐伯
ふつうのTシャツとくらべると
かなり薄手だから、すっきり見えるかも。
細身のものってフィットしがちだけど
自然に体に沿うからストレスがありません。
畑野
ですから、どんな体型のかたが着ても
印象は変わらないんです。

――
それはすごい。
そんなことって、あるんでしょうか。
まるで魔法みたいじゃないですか。
白井
でも、ほんとうにそうなんです。
着れば、その人なりのかたちになってくれる。

100年にいちどの素材

――
そういうフィーロの魔法は、
どこから来るものなんでしょう?
白井
とにかく素材です。
見ためはなんでもないのに、
いままでのコットン100%の素材とは、
まったく別次元のものです。
――
たしかに、コットン100%とは思えない質感です。
白井
かれこれ40年ぐらい世界中の素材を見てきていますが、
こんなのはありませんでした。
100年に1回出てくるかどうかの素材だと惚れこんで、
この生地をつかったTシャツをつくりはじめました。
――
100年に1回!
そこまでおっしゃるということは、相当ですね。
白井
ただ、サンプルをつくってみたら、
問題ばかりが発生して、もうたいへん。
伸び縮みする素材なので、ていねいに縫わないと
袖口やすそがビヨーンと伸びちゃうんです。
こういうむずかしい生地を縫製できる人もいないし、
量産するのは無理だと思い、いったんあきらめました。
佐伯
そうだったんですね。
白井
ところがその後、おなじ素材でつくった、
某海外高級ブランドのサンプルを見かけたんです。
ふつうの丸首カットソーでしたが、
きれいにできていました。
畑野
おなじ日本の生地を使って、海外の工場で縫われていた?
白井
そうです。
それに心をゆさぶられて、
ちゃんとつくればできるはずだから
「ぜったいに自分でやろう」と、つよく決意しました。
ただ‥‥それからはストレスの連続でした。

「素材界のあばれ馬」を乗りこなす

――
どんなストレスがあったんですか。
白井
ていねいな縫製メーカーを探すことからはじまって、
もう工程ごとに問題が出てきました。
風合いを出すために特殊な柔軟剤を入れるんですが、
それが均等に溶けないでしみになったり、
生地がはげしく斜行するので、
生地の向きに合わせてプレスすることを
工場の人に何度もお願いしたりとか、
苦労したことを話し出すとキリがありません。
佐伯
いま話に出たところだけでも、たいへんそう。

白井
それでも、上がってきたものを検品すると
まだ4割ぐらいは不備があるので、直しに出しています。
――
4割も?
とんでもない割合ですね。
白井
それぐらい生地が思うようにならないんです。
ひとつひとつの工程をていねいに進めていかないと、
きちんとした商品になりません。
――
聞いていると、
「素材界のあばれ馬」という感じがしますね‥‥。
白井
サンプルができあがったら、
肌に近いものは着やすいかどうかが
いちばんだいじなことなので、
女性用のサイズを自分で1ヵ月くらい、
着たまま寝てみます。
腕まわりはややきついですが、それ以外のところで
圧迫感がなかったらだいじょうぶという、
自分なりの判断基準があります。
畑野
1ヵ月もですか?
白井
朝起きてサイズを測って、
さらに洗濯して干し終わったものを測って、
また着てみて、というのを1ヵ月くり返すと、
生地の伸び縮みがどれぐらいあるか、わかってきます。
その結果、この素材はほとんど変わりませんでした。
――
それは、なぜなんでしょう。
白井
強く撚った綿の糸を、細いゲージできつく編んでいるので、
もとに戻りやすいんです。
輪ゴムをぐるぐるに丸めても、
ヒュッともとのかたちに戻るのとおなじ原理です。
佐伯
なるほど。
白井
1ヵ月着つづけても問題なかったので、
誰が着てもだいじょうぶだという自信がついて
畑野さんのお店にも足を踏み入れることができました。
――
あばれ馬をとうとう乗りこなしたんですね。

薄手で上質なコットンニットの感覚

――
お店で販売したり、買う立場から見たときの、
フィーロの魅力を教えていただけますか?
佐伯
海外のブランドでも似たような素材のものはありますが、
もっと細身だったり、袖がすごく長かったり、
切りっぱなしになっていたりとデザイン性がつよい。
しかもTシャツなのに4万円ぐらいしたりします。
――
そんなに!
佐伯
そういう点では、フィーロのものは
かたちがベーシックで素材もよくて、とてもお手ごろです。
――
ふつうのTシャツを買う感覚からすると、
それでもちょっと高く感じますが‥‥。
白井
たしかにそうですね。
生地自体の値段が高いし、縫製するのもたいへんなので、
それなりの価格にはなってしまいます。
だから、この生地は日本より高い技術をもつ
海外のハイブランドで多く使われているんです。
佐伯
Tシャツって考えるとすごく高級に思えますが、
薄手で上質なコットンニットという感覚で
着ていいと思うんです。
そう思えばめちゃくちゃに高いわけじゃないし、
確実にそれだけのパフォーマンスは得られます。
畑野
いちどその着ごこちのよさを知ったお客さまは
色ちがいやデザインちがいをまとめて購入されたり、
フィーロのファンになるかたが多いので、
まずは袖を通してみていただけたらと思います。
それくらい価値があるものだと思いますよ。
――
フィーロの魅力、伝わってくれるといいなあ。
みなさん、どうもありがとうございました!

(おわりです)