タカモリ・トモコ全集


そのあみぐるみに込めたもの。  タカモリ・トモコさんに聞きました。

プロローグ 2010年1月会場のテーマは「手つむぎ」です。

♯3 毛糸ができました。

羊毛作家の緒方伶香さんから、
「すべて、つむぎ終わりました」
という連絡が届いたのは秋の終わりのころでした。
完成した毛糸は、緒方さんから直接、
タカモリさんに手渡されることになりました。

場所は「ほぼ日」のミーティングルーム。
ていねいに包まれた毛糸たちを、
緒方さんがテーブルの上に並べてゆきます。

タカモリ こんなにたくさん。
緒方 ぜんぶで1キロくらいでしょうか。
タカモリ すごーい。
しかもこんなにかわいく包んでいただいて。
ありがとうございます。
やっぱり、つむぎはたいへんでしたよね?
緒方 ふふふ。
タカモリ ほんとうにありがとうございます。
緒方 いえ、こちらこそありがとうございました。
すごく貴重な体験を
させていただいたと思っています。
繊維用に育てられてないひつじでも、
手間ひまをかけてあげれば
ちゃんと糸になることを実感できて‥‥。
一匹の子と、
こんなに向き合ったのは初めてだったので、
わたしもなんだか思い入れが‥‥。
この子の名前はなんていうんですか?
タカモリ 31番ちゃんっていうんです。
緒方 31番ちゃん?
タカモリ 牧場の人に「名前は?」ってうかがったら、
「31番です」とおっしゃってて。
たくさんひつじがいるから
名前はつけてなくて番号だったんです。
緒方 それで番号が名前に(笑)。
かわいいですねえ。
タカモリ その31番ちゃんの毛糸がついに‥‥。
見せていただきたいのですが、
どれから開ければいいでしょう?
緒方 じゃあ、31番ちゃんだけでつむいだ、
これから開けてみてください。
タカモリ 「100%伊香保」って書いてあります。
緒方 これは、
すごくいい部分でつむいだ毛糸なんです。
タカモリ じゃあ、それを‥‥(開ける)。
タカモリ あぁ‥‥きれい。
緒方 きれいですよね。
つむいでいて、気持ちがよかったです。
タカモリ (手に取る)やわらかーい。
緒方 その青い紙は、糸のはじっこにつけてあります。
取り出すところがわかりやすいように。
そうそう、こちらも、
伊香保のひつじ100%なんですよ。
タカモリ 「100%伊香保でこぼこ」って書いてありますね。
緒方 かたい原毛の部分はフラットにつむげなくて、
ちょっとでこぼこの糸になるんです。
タカモリ (開けて手に取り)ほんとだぁ。
でも、これもかわいい。
緒方 かわいいんですよ、うどんみたいで(笑)。
タカモリ (笑)味わいがあって、すてきです。
肌触りもいいし‥‥。
緒方 あとは、これですね。
タカモリ 「伊香保+シェットランド」。
緒方 イギリスのシェットランド島というところの
ひつじが、
伊香保の子になじみやすそうだったので、
まぜてみたんです。
タカモリ そうなんですか(開ける)。
この「伊1×シェ2」というのは?
緒方 伊香保の毛糸1本と
シェットランドを2本よりあわせた毛糸、
ということです。
タカモリ すごい‥‥。
たからもののようです。
ああ、やっぱり、
糸を染めていただかなくてよかったです。
緒方 最初に、もとの色を活かすか、
色をつけるか、悩んだんですよね。
タカモリ わたしはまったく迷いませんでした。
そのままで編みたかった。
色のついた毛糸もすてきですけど、
こうやって、
ひつじそのままの色をみていると、
31番ちゃんをすぐに思い出せますから。
緒方 白い糸は、とくに慎重につむぐんですよ。
つむぎ車の油がついてよごれないように。
タカモリ そうですか、さらにたいへんなんですね‥‥。
緒方 あと、せっかくなので、
伊香保の子じゃない毛糸もお持ちしました。
この包みなんですけど(開ける)。
タカモリ わ、たべものみたい。
なんだかおいしそう(笑)。

緒方 この緑の毛糸は、
タカモリさんが練習でつむいだ糸に
わたしがつむいだ糸をまぜてつくったんですよ。
タカモリ ああ、あれを!
緒方 タカモリさん、
ピンクと緑が好きとおっしゃってたので、
北海道の牧場の毛糸に
その2色をまぜたものも。
タカモリ かわいい。
すごくうれしいです!
緒方 ほかにもニュージーランドのコリデールと
アルパカの毛糸をいっしょに持ってきたので、
ぜひ使ってみてください。
タカモリ こんなにたくさん‥‥。
緒方 これでどんな作品を編んでくださるのか、
すごくたのしみです。
タカモリ ──あの、実は、
ひとつつくってみたんですよ。
この前おじゃましたとき受け取った毛糸で。
緒方 ええ? わあ、すごーい!
ひつじ、ですね。
タカモリ はい。
31番ちゃんを思い出しながらつくりました。
緒方 すごいです、こんなふうになったんですね‥‥。
糸は大丈夫でした?
タカモリ もちろん、なんの心配もなく。
編んでいるとワラとか草が出てきて、
牧場のひつじたちが思い出されるんです。
それがとてもたのしかったです。
緒方 ちょっと、かたくなかったですか?
タカモリ いつも使っている毛糸にくらべたら、
31番ちゃんはかたいんですよ。
だけど、きもちいいんです。
緒方 そうですか、よかった‥‥。
糸はこれで足りるでしょうか?
タカモリ 大丈夫です。
けっこうな数が編めると思いますよ。
ひつじをもうひとつつくりたいし、
白い毛糸だからシロクマもいいですよね。
あとは‥‥。
緒方 たのしみです、すごくたのしみ。
タカモリ はい。
緒方 ‥‥なんだか、でも、
ちょっとさみしいですね。
なんていうんでしょう、
終わっちゃった、というか‥‥。
タカモリ ああ‥‥そのお気持ち、わかります。
緒方 手がかかった子だけに(笑)。
タカモリ 力一杯、あみぐるみをつくりますね!
緒方 はい、そうしてくださるとうれしいです。
タカモリ ほんとうにお疲れさまでした、
ありがとうございました。
緒方 ありがとうございました。
(つづきます)

2010年1月会場のオープンは、1月25日(月)。
オーナー募集は、1月28日(木)からです。

2010-01-23-SAT




(C)HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN