♯3 毛糸ができました。
羊毛作家の緒方伶香さんから、
「すべて、つむぎ終わりました」
という連絡が届いたのは秋の終わりのころでした。
完成した毛糸は、緒方さんから直接、
タカモリさんに手渡されることになりました。
場所は「ほぼ日」のミーティングルーム。
ていねいに包まれた毛糸たちを、
緒方さんがテーブルの上に並べてゆきます。
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タカモリ |
こんなにたくさん。
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緒方 |
ぜんぶで1キロくらいでしょうか。
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タカモリ |
すごーい。
しかもこんなにかわいく包んでいただいて。
ありがとうございます。
やっぱり、つむぎはたいへんでしたよね?
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緒方 |
ふふふ。
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タカモリ |
ほんとうにありがとうございます。
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緒方 |
いえ、こちらこそありがとうございました。
すごく貴重な体験を
させていただいたと思っています。
繊維用に育てられてないひつじでも、
手間ひまをかけてあげれば
ちゃんと糸になることを実感できて‥‥。
一匹の子と、
こんなに向き合ったのは初めてだったので、
わたしもなんだか思い入れが‥‥。
この子の名前はなんていうんですか?
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タカモリ |
31番ちゃんっていうんです。
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緒方 |
31番ちゃん?
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タカモリ |
牧場の人に「名前は?」ってうかがったら、
「31番です」とおっしゃってて。
たくさんひつじがいるから
名前はつけてなくて番号だったんです。
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緒方 |
それで番号が名前に(笑)。
かわいいですねえ。
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タカモリ |
その31番ちゃんの毛糸がついに‥‥。
見せていただきたいのですが、
どれから開ければいいでしょう?
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緒方 |
じゃあ、31番ちゃんだけでつむいだ、
これから開けてみてください。
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タカモリ |
「100%伊香保」って書いてあります。
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緒方 |
これは、
すごくいい部分でつむいだ毛糸なんです。
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タカモリ |
じゃあ、それを‥‥(開ける)。
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タカモリ |
あぁ‥‥きれい。
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緒方 |
きれいですよね。
つむいでいて、気持ちがよかったです。
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タカモリ |
(手に取る)やわらかーい。
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緒方 |
その青い紙は、糸のはじっこにつけてあります。
取り出すところがわかりやすいように。
そうそう、こちらも、
伊香保のひつじ100%なんですよ。
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タカモリ |
「100%伊香保でこぼこ」って書いてありますね。
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緒方 |
かたい原毛の部分はフラットにつむげなくて、
ちょっとでこぼこの糸になるんです。
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タカモリ |
(開けて手に取り)ほんとだぁ。
でも、これもかわいい。
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緒方 |
かわいいんですよ、うどんみたいで(笑)。
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タカモリ |
(笑)味わいがあって、すてきです。
肌触りもいいし‥‥。
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緒方 |
あとは、これですね。
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タカモリ |
「伊香保+シェットランド」。
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緒方 |
イギリスのシェットランド島というところの
ひつじが、
伊香保の子になじみやすそうだったので、
まぜてみたんです。
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タカモリ |
そうなんですか(開ける)。
この「伊1×シェ2」というのは?
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緒方 |
伊香保の毛糸1本と
シェットランドを2本よりあわせた毛糸、
ということです。
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タカモリ |
すごい‥‥。
たからもののようです。
ああ、やっぱり、
糸を染めていただかなくてよかったです。
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緒方 |
最初に、もとの色を活かすか、
色をつけるか、悩んだんですよね。
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タカモリ |
わたしはまったく迷いませんでした。
そのままで編みたかった。
色のついた毛糸もすてきですけど、
こうやって、
ひつじそのままの色をみていると、
31番ちゃんをすぐに思い出せますから。
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緒方 |
白い糸は、とくに慎重につむぐんですよ。
つむぎ車の油がついてよごれないように。
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タカモリ |
そうですか、さらにたいへんなんですね‥‥。
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緒方 |
あと、せっかくなので、
伊香保の子じゃない毛糸もお持ちしました。
この包みなんですけど(開ける)。
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タカモリ |
わ、たべものみたい。
なんだかおいしそう(笑)。
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緒方 |
この緑の毛糸は、
タカモリさんが練習でつむいだ糸に
わたしがつむいだ糸をまぜてつくったんですよ。
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タカモリ |
ああ、あれを!
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緒方 |
タカモリさん、
ピンクと緑が好きとおっしゃってたので、
北海道の牧場の毛糸に
その2色をまぜたものも。
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タカモリ |
かわいい。
すごくうれしいです!
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緒方 |
ほかにもニュージーランドのコリデールと
アルパカの毛糸をいっしょに持ってきたので、
ぜひ使ってみてください。
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タカモリ |
こんなにたくさん‥‥。
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緒方 |
これでどんな作品を編んでくださるのか、
すごくたのしみです。
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タカモリ |
──あの、実は、
ひとつつくってみたんですよ。
この前おじゃましたとき受け取った毛糸で。
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緒方 |
ええ? わあ、すごーい!
ひつじ、ですね。
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タカモリ |
はい。
31番ちゃんを思い出しながらつくりました。
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緒方 |
すごいです、こんなふうになったんですね‥‥。
糸は大丈夫でした?
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タカモリ |
もちろん、なんの心配もなく。
編んでいるとワラとか草が出てきて、
牧場のひつじたちが思い出されるんです。
それがとてもたのしかったです。
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緒方 |
ちょっと、かたくなかったですか?
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タカモリ |
いつも使っている毛糸にくらべたら、
31番ちゃんはかたいんですよ。
だけど、きもちいいんです。
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緒方 |
そうですか、よかった‥‥。
糸はこれで足りるでしょうか?
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タカモリ |
大丈夫です。
けっこうな数が編めると思いますよ。
ひつじをもうひとつつくりたいし、
白い毛糸だからシロクマもいいですよね。
あとは‥‥。
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緒方 |
たのしみです、すごくたのしみ。
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タカモリ |
はい。
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緒方 |
‥‥なんだか、でも、
ちょっとさみしいですね。
なんていうんでしょう、
終わっちゃった、というか‥‥。
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タカモリ |
ああ‥‥そのお気持ち、わかります。
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緒方 |
手がかかった子だけに(笑)。
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タカモリ |
力一杯、あみぐるみをつくりますね!
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緒方 |
はい、そうしてくださるとうれしいです。
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タカモリ |
ほんとうにお疲れさまでした、
ありがとうございました。
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緒方 |
ありがとうございました。
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(つづきます)
2010年1月会場のオープンは、1月25日(月)。
オーナー募集は、1月28日(木)からです。 |