BALMUDA×HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN ふだんのパンをおいしく焼こう。おいしいトーストってなんだろう?
気になるトーストの味は、ほんとうのところ、
どうなんだろう?
おいしく焼くための工夫は、なんだったのかな?
伊藤まさこさんと、
「ほぼ日」のくいしんぼうトリオが
BALMUDA The Toasterキッチンチームの
木下さんと松藤さんに、訊いてみました。

登場人物
バルミューダ木下さん 
バルミューダのキッチンチーム所属。
BALMUDA The Toasterを使った
おいしいレシピを研究、発案。
バルミューダ松藤さん 
BALMUDA The Toasterの
開発にかかわった
デザイナー兼キッチンチームメンバー。
伊藤まさこさん 
スタイリスト。おいしいもの大好き。
「ほぼ日」はたくさんのコンテンツで
お世話になっています。
近著は『白いもの』
(マガジンハウス発行)。
カロリーメイツ 
「ほぼ日」のくいしんぼうトリオ。
(スガノ・ジャンボ・シブヤ)
金沢を訪れたことをきっかけに、
伊藤まさこさんに
活動の「顧問」になっていただくことに。
前編 なにがいちばん「おいしい」のか? 2016-01-12
後編 焼きあがりを待つ時間。2016-01-13
前編 なにがいちばん「おいしい」のか?
スガノ
今日は、伊藤まさこさんと、
バルミューダキッチンチームから
木下さん、松藤さんをお迎えし、
BALMUDA The Toasterのおいしさの秘密に
せまりたいと思います。
ジャンボ
伊藤まさこさんは
私たちカロリーメイツの顧問でもあります。
ですので、今日は顧問の先生のように、
ジャージをおめしになって‥‥。
伊藤
そうなんです、このために
ジャージの上着を用意しました。
シブヤ
そして、このロゼッタ‥‥はなんですか?
「食 カロリーメイツ顧問 伊藤まさこ」
スガノ
顧問、気合いが入っています。
しかし、むろん、私たちもです。
松藤
私たちのベーシックな焼き方で
2度ぬりのバタートースト、というものが
あるのですが、
まずはそれをめしあがっていただけますでしょうか。
バルミューダのトースターでこうやって焼くと
おいしいぞ、というレシピです。
伊藤
はい、ぜひぜひお願いします。
松藤
バターを10グラムくらい用意して、
その半分くらいをまず食パンにぬります。
そして、トーストモードで3分焼きます。
BALMUDA The Toasterの特徴は、
トーストする際に5ccの水を入れること。
スガノ
トースターの穴から、付属のカップで
焼くときに水を入れるんですね。
伊藤
つまり、スチームトースターなんですね。
ジャンボ
タイマーの音がかわいいな。チッチッチっていうの。
シブヤ
はぁぁ、トーストのよいかおりがしてきました。
伊藤
熱線がしょっちゅう
ついたり消えたりして不思議です。
なぜこんなに熱線がちかちか切り替わるんですか?
木下
内部にセンサーが入っているんです。
温度が上がりすぎたら下げるし、
温度が低いときは上げる。
つまり、トースターのなかにひとり
「おじさん」がいて、
こまかく温度管理をしてる、と
思っていただければ(笑)。
ジャンボ
なかに‥‥ちっちゃいおじさんがいる。
木下
冷凍パンを入れても、パンが厚くても薄くても、
そのおじさんが温度で見ているから、大丈夫なんです。
8枚切りでも4枚切りでも、
焼く分数は変えなくていいんですよ。
伊藤
じゃ、たとえば
パンを並べていちどに2枚焼くときも、
1枚だけ焼くときと同じ時間でいいんですか?
松藤
そうです。
じつは、1枚焼くときと2枚焼くときでは
おいしく焼くための工夫が違ってくるんです。
1枚はすぐ焼けますが、
2枚焼くのには時間がかかります。
しかし、焼き時間が延びれば延びるほど、
焼色は同じでも、食感が変わってしまって
違うものになっちゃうんですね。
ですから、BALMUDA The Toasterでは
焼き方を変えています。
伊藤
それも、おじさんが‥‥?
木下
そうです、おじさんが
庫内の温度の上がり具合を見て、
焼いているパンのボリュームを判断しています。
ジャンボ
あと1分で焼きあがるのに、庫内を見ると、
まだパンの表面は白いんです。不思議!
松藤
ある程度までは表面がこげつかない状態を保ちます。
最後、高温で一気に焼き上げるんですよ。
伊藤
予熱もしなかったですよね?
松藤
はい。予熱がなくてもおいしくできるように‥‥
そこも開発が難しかったです。
伊藤
松藤さんは、パンがお好きなんですか?
松藤
もともとそこまでパンに興味なかったんですが、
開発をまかされて、やっていくうちに、
いろんなパン屋さんと出会いまして、
好きになりました。
シブヤ
来た、来た。一気に色がついた!
松藤
タイマーが鳴ったらふたを開けて
残りのバターをのせ、ふたを閉めます。
すると余熱でバターがとけます。
バターがとけたかなぁ~?
というところで、はいっ、このまま
おめしあがりください。
ジャンボ
顧問、どうぞ!
伊藤
うむ。いただきます。
(サクッ)
伊藤
これは、いつも食べてるパンと違います。
みみもふんわりしてて‥‥。
これは、発酵バターですか?
バターのしょっぱ味がすごくマッチしてる。
松藤
今日は「カルピスバター」を使いました。
伊藤
うーん。
パンがこれだけ厚めなのに、
トーストのみみが、まったくいやじゃない、
むしろおいしい。
次はバターをのせないで
ふつうに焼いてみたいです。
私は焼きたてのパンに、
冷蔵庫から出した、冷たいバターを
のっけて食べるのが大好きなんです。
バターは、パンの半分くらいの量をめやすに
たっぷりと切って、のせます。
シブヤ
うううぅぅぅぅ、それは、聞いただけでおいしそう。
伊藤
「パンはバターをのせるための台である」
スガノ
顧問の格言! 覚えておかなくちゃ。
でも「パンの半分くらい」のバターは、
勇気がいるなぁ。
伊藤
まぁ、今日は3分の1くらいでいってみましょう。
松藤
うん、冷たいバターっておいしいですよね。
ぜひ、やってみましょう。
トーストモードで3分焼きます。
スガノ
さっき焼いたばかりなのに、
すぐに次のパンを焼いても
同じようにトーストできるんですか?
木下
大丈夫です。
「庫内の温度が高い」と、
おじさんがちゃんとわかってますから。
伊藤
そのおじさんは、パン屋さんにずっと
勤めていらっしゃったんでしょうか(笑)。
おじさんについては、
何年間ぐらい研究なさったんですか?
松藤
おじさん部分については、半年ぐらいです。
おじさん以外を含め、
発案してトースターができあがるまでに
11か月ほどかかりました。
伊藤
パンを焼いているあいだにバターを切りましょう。
今日私が持ってきたのは、エシレバターの有塩のほう。
ジャンボ
トースターの窓を見ていると、最後にバーッと
パンの表面に色がついてくるのが楽しい。
伊藤
つい、見守ってしまいますね。
シブヤ
もうちょいですね。おじさん、がんばれ。
伊藤
「おにいさん」とかじゃなく、
「おじさん」なんですね。
スガノ
やっぱり熟練の職人ですからね、
6か月の経験、6か月の職人です。
松藤
はい、焼けました。
シブヤ
きれいな色。いいにおい!
伊藤
じゃ、それを4つに切りましょう。
そして、バターをぽてっとのっけて
めしあがってください。
好きな人は、ジャムやハチミツ、ペーストを
バターの上にさらにのっけていいですよ。
スガノ
パクッ。
食べちゃった。すぐに食べちゃった。
おーーーいしーーーー!
栗ペーストをのせると最高。
甘いのとバターとパンのしょっぱいのと
つめたいのとあついのが
口の中でいっしょになって、メッチャおいしい。
ジャンボ
この栗ペースト‥‥超おいしい。
伊藤
これ、私が世界でいちばん好きな
純栗ペーストです(笑)。
1回でひと瓶なくなってしまいます。
シブヤ
「松仙堂」の「純栗ペースト」?
伊藤
小布施で毎日完熟した栗をポイポイ採って、
それをペーストにしてるんです。
これだけで食べてももちろんおいしいけど、
やっぱりパンとバターの力が偉大です。
シブヤ
マリアージュですね。
スガノさん‥‥だいじょうぶ?
スガノ
ちょっと‥‥いまね、戻ってこれないのね、
いまの、おいしかったのから、戻れないの。
伊藤
ジャムやハチミツも、同じぐらいの比率で
パンにのせるといいですよ。
ところで、ちょっとうかがいたいことがあります。
トースターを開発するとき、
「これがいちばんおいしいトーストの焼き加減だ」
という、具体的な目標があったのでしょうか?
たとえば「中がしっとり、外がカリッ」とか?
松藤
いや‥‥、まず最初は
「なにがいちばんおいしいのか」
「どんな状態がいちばんおいしいのか」
ということを探るのが、いちばんの難関でした。
木下
基準が見つかってしまえば、
あとはそれをめざすだけなんですが、
そこまでが、もう‥‥。
スガノ
たしかに、こっちのパンのほうがおいしい、
という比較はできるけど、
「では、なにが正解なのか」というと、
わからないですね。
木下
でも、誰かが決めなきゃ作れないから、困りました。
そして、我々がめざすのは、
コンビニエンスストアのパンも、パン屋さんのパンも、
どんなパンも平均的においしく焼く、ということです。
伊藤
うーん、そうですよね。
ジャンボ
みんな、いろんなパン食べるもんな。
松藤
でも、きっかけがありました。
ある日、バルミューダの社員みんなで出かけた
バーベキューで焼いたトーストがおいしかったんです。
ですからまずは、その食感を再現するようにして‥‥。
伊藤
それは、なぜおいしかったんでしょうか。
松藤
じつはそのとき、すごく雨が降ってたんです。
伊藤
ああ、だからスチームトースターなんですね。
私、よくバゲットが硬くなると、
霧吹きで水をふってからオーブンで焼くんです。
松藤
はい、それと同じです。
魚焼きグリルでパンを焼く方がいらっしゃいますが、
それも同じような原理です。
水と火を使って、中と外をあたためるのです。
でも、いろんなパン屋さんのパンを
いろんなふうに焼いてみないとダメだ、
ということになって、
そこからトーストを5000枚以上焼きました。
伊藤
5000枚!
木下
とうとう最後に松藤は、
焼きあがったトーストを噛むだけで、一瞬で、
食感がいいか悪いかが
わかるようになっちゃって‥‥。
伊藤
噛んだ瞬間ですか。
松藤
半年ぐらいずーっとパンを焼きつづけた、
記録のファイルがあります。
シブヤ
うはーっ、細かい。
松藤
温度をこまかく変えて焼いたり、
コンセントを変えたり、
予熱をしてみたり、しなかったり‥‥。
何パターンも、延々と試しました。
「焼き色がこうなると、こういう味になるのか」
と、どんどんスケッチしてメモを取っていきました。
1000ページ以上あります。
<つづきます>
2016-01-12