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みなさんから大好評をいただいている、
「銀のなみだペンダント」。
「ほぼ日」初のアクセサリーをつくるにさいし、
実際にかたちにする工程で
ちからを貸してくださったのが、
ジュエリーデザイナーの池田憲昭さんです。
有名セレクトショップなどに作品を卸している
「アクセサリーのプロ」に、
こだわりの部分や、ペンダントに込めた想いなど、
いろんなお話を、おうかがいしてきました。


池田憲昭(いけだ のりあき)

ジュエリーデザイナー。宝飾専門学校時代に
PLATINUM DESIGN OF THE YEAR 入賞。
卒業後、宝飾職人の下で学ぶかたわら、
オリジナルジュエリーの製作&合同展示会に多数参加。
2004年春、オリジナルブランド「nnn」を設立。
全国の有名セレクトショップ等に
自らデザインしたアクセサリーを提供する一方、
この9月にはパリで合同展を開催、海外進出も果たした。



── ふだん、池田さんは
ご自身のブランドでオリジナルのアクセサリーを
デザインされているわけですよね。
池田 はい、デザインをおこすところから
最終的なかたちに落とし込むところまで、
ほぼ、ぜんぶの工程に関わっています。
── どのようなアクセサリーを
つくってらっしゃるんですか?
池田 たとえば、女性向けの「nnn」というブランドでは
自然や動物などをモチーフにしています。
たとえばこういう、
ウサギや蝶々のモチーフだったりとか‥‥。



── なるほどー。
デザインのもとになっているのは
自然のものですけれど、
ちょっとゴージャスなイメージですね!
池田 あえてこういうアクセサリーを
スーツなんかに合わせてもらえたら
おもしろいんじゃないか、と思って。
だから、アダルトな雰囲気なんですけれど、
清潔な部分も残しているつもりなんです。

で、こっちが「ビネット」というブランド。
シルバーアクセサリーのラインですね。



── あ、こっちはもっと男っぽい感じ。
宝石も組み合わされているんですね。
池田 はい、そうなんです。
こんなウサギの頭がついてたりしますけど、
「大人のためのシルバー」と、
自分のなかでは位置づけています。
遊びごころのある人に「なんだ、これ?」って
思ってもらえたらいいなぁって。
── へぇー‥‥あ、これ、
かたちがかわいいですね!
池田 それ、じつは
「ひじき」をモチーフにしてるんですよ。
── え、これ、ひじき‥‥って、
あの、食べる「ひじき」ですか!?



池田 ええ、これなんかは「あんぱん」ですし。



── なんでまた、ひじき‥‥。
いや、ほんとにすてきなんですけど。
池田 ひじきの膨らみかた
すごくきれいだなって以前から思ってたんです。
ちょっと真んなかが、膨れてるじゃないですか。
そのラインがすごくきれいに見えて。
── じゃ、日々の暮らしのなかで
きれいなものがあれば
覚えておいたりするんですか?
池田 ええ、そうですね。
── なるほど、
日常出会うもののなかにある美しさが、
池田さんがつくるもののベースにあるんですね。
池田 はい、デザインを考えているときに、
ああいうかたち、よかったなって
ふと思い出す、という感じでしょうか。
── 今回の「銀のなみだペンダント」は
デザインこそ、ぼくたちから出したわけですれど、
実際の仕上がり感などを見ていると
なんというか「わかって」つくってくださったんだな、
という気がするんです。
なにより、サンプルができあがってきたときに
ひと目で「うわぁ‥‥!」って(笑)。
池田 デザインありきのものをつくるときは、
そこにぼくが何を工夫するかを、すごく考えます。
もとのデザインを邪魔せず、引き立てるような工夫ですね。
── 今回に関していうと、どのあたりなんでしょう?
池田 ‥‥ぷっくり感、です。
── ぷっくり感? といいますと‥‥?
池田 ええ、ペンダントヘッドに
「ぷっくりした感じ」が出るように、
かなり、こだわったんです。
── それはまた、どうしてですか?
池田 手にしたときに「ここちいい厚み」ってあると思うんです。
それをかたちにしたのが、この「ぷっくり感」。
それに今回は、
ちょっと「やさしげな感じ」も出したかったし。
── たしかにこのペンダント、
手に持っているときに「いい感じ」が
すっごくありますよね。
池田 具体的にいうと「碁石」みたいな感じを
イメージしたんですよ。
── ああ、なるほど!
碁石っぽいです、たしかに。
池田 碁石ってよくできてるなぁって、いつも思うんです。
手に持っていてここちいいし、
ちょっとした重量感もあるじゃないですか。



── あと、「なみだのロゴマーク」のなかは
「いぶし加工」で黒くしているんですよね。
この方法にしたのは、なぜなんですか?
池田 はい、「いぶし」もやっぱり、昔からの加工法。
ほかには、色のついたアクリル樹脂を入れたり、
黒いメッキをする、という方法などもありますが、
「いぶし加工」は、
シルバーにとってより自然にちかい加工法なんです。
── と、いいますと?
池田 シルバーって、時間がたつにつれて、
じょじょに黒く曇っていくんです。
「いぶし加工」は、専用の液体を用いて
表面に化学反応を起こし、
黒ずむ過程を部分的にはやめているんですよ。
── つまり、シルバーにとって
ナチュラルな「黒」だということですね。
池田 革ひもにしても、できるだけ自然のものを、
というご要望だったので、
「いぶし」がいちばんフィットするんじゃないかと。
── なるほど、そういった意図があったんですね!
それと今回は、ペンダントヘッドに
あえてメッキをしないですが‥‥。
池田 メッキをしてしまうと、シルバーの色が
「人工的なきれいさ」になってしまうんです。
逆にいうと「柔らかみ」がないといいますか。

つくり手からの希望をいわせていただければ、
シルバーって、メッキなどをせず、
使ったあとも、あんまり使わないときでも、
ときどきお手入れをしてあげるのがいいと思うんです。
ちょっと、気にしてあげるというか。
── いつも気にしてあげれば、
いっそう、愛着もわいてきそうですよね。
池田 シルバーって、
付ける人の汗の成分の違いなんかで、
曇りかたが、ひとつひとつ変わってくるんです。
── その人なりの曇りかたをする、と。
池田 ええ、そこに愛着を感じてほしいです。

やっぱり、アクセサリーって、
想いを込めやすいというか、そういうものですよね。

誰にとっても特別なものであってほしい。
だから、このペンダントを手にしてくださったかたには、
ずっとたいせつにしてほしいというのが、
つくり手としての、ねがいです。
── なるほど!
池田さん、今日はどうもありがとうございました!