── |
なんでまた、ひじき‥‥。
いや、ほんとにすてきなんですけど。 |
池田 |
ひじきの膨らみかたが
すごくきれいだなって以前から思ってたんです。
ちょっと真んなかが、膨れてるじゃないですか。
そのラインがすごくきれいに見えて。 |
── |
じゃ、日々の暮らしのなかで
きれいなものがあれば
覚えておいたりするんですか? |
池田 |
ええ、そうですね。 |
── |
なるほど、
日常出会うもののなかにある美しさが、
池田さんがつくるもののベースにあるんですね。 |
池田 |
はい、デザインを考えているときに、
ああいうかたち、よかったなって
ふと思い出す、という感じでしょうか。 |
── |
今回の「銀のなみだペンダント」は
デザインこそ、ぼくたちから出したわけですれど、
実際の仕上がり感などを見ていると
なんというか「わかって」つくってくださったんだな、
という気がするんです。
なにより、サンプルができあがってきたときに
ひと目で「うわぁ‥‥!」って(笑)。 |
池田 |
デザインありきのものをつくるときは、
そこにぼくが何を工夫するかを、すごく考えます。
もとのデザインを邪魔せず、引き立てるような工夫ですね。 |
── |
今回に関していうと、どのあたりなんでしょう? |
池田 |
‥‥ぷっくり感、です。 |
── |
ぷっくり感? といいますと‥‥? |
池田 |
ええ、ペンダントヘッドに
「ぷっくりした感じ」が出るように、
かなり、こだわったんです。 |
── |
それはまた、どうしてですか? |
池田 |
手にしたときに「ここちいい厚み」ってあると思うんです。
それをかたちにしたのが、この「ぷっくり感」。
それに今回は、
ちょっと「やさしげな感じ」も出したかったし。 |
── |
たしかにこのペンダント、
手に持っているときに「いい感じ」が
すっごくありますよね。 |
池田 |
具体的にいうと「碁石」みたいな感じを
イメージしたんですよ。 |
── |
ああ、なるほど!
碁石っぽいです、たしかに。 |
池田 |
碁石ってよくできてるなぁって、いつも思うんです。
手に持っていてここちいいし、
ちょっとした重量感もあるじゃないですか。 |
── |
あと、「なみだのロゴマーク」のなかは
「いぶし加工」で黒くしているんですよね。
この方法にしたのは、なぜなんですか? |
池田 |
はい、「いぶし」もやっぱり、昔からの加工法。
ほかには、色のついたアクリル樹脂を入れたり、
黒いメッキをする、という方法などもありますが、
「いぶし加工」は、
シルバーにとってより自然にちかい加工法なんです。 |
── |
と、いいますと? |
池田 |
シルバーって、時間がたつにつれて、
じょじょに黒く曇っていくんです。
「いぶし加工」は、専用の液体を用いて
表面に化学反応を起こし、
黒ずむ過程を部分的にはやめているんですよ。 |
── |
つまり、シルバーにとって
ナチュラルな「黒」だということですね。 |
池田 |
革ひもにしても、できるだけ自然のものを、
というご要望だったので、
「いぶし」がいちばんフィットするんじゃないかと。 |
── |
なるほど、そういった意図があったんですね!
それと今回は、ペンダントヘッドに
あえてメッキをしないですが‥‥。 |
池田 |
メッキをしてしまうと、シルバーの色が
「人工的なきれいさ」になってしまうんです。
逆にいうと「柔らかみ」がないといいますか。
つくり手からの希望をいわせていただければ、
シルバーって、メッキなどをせず、
使ったあとも、あんまり使わないときでも、
ときどきお手入れをしてあげるのがいいと思うんです。
ちょっと、気にしてあげるというか。 |
── |
いつも気にしてあげれば、
いっそう、愛着もわいてきそうですよね。 |
池田 |
シルバーって、
付ける人の汗の成分の違いなんかで、
曇りかたが、ひとつひとつ変わってくるんです。 |
── |
その人なりの曇りかたをする、と。 |
池田 |
ええ、そこに愛着を感じてほしいです。
やっぱり、アクセサリーって、
想いを込めやすいというか、そういうものですよね。
誰にとっても特別なものであってほしい。
だから、このペンダントを手にしてくださったかたには、
ずっとたいせつにしてほしいというのが、
つくり手としての、ねがいです。 |
── |
なるほど!
池田さん、今日はどうもありがとうございました! |