ほぼにちわ、「ほぼ日」土鍋チームです。
これまでに2240個を出荷している、
「うちの土鍋シリーズ ベア1号」。
すでにお使いのみなさまから、
使い勝手についての感想や、
おつくりになった料理のことなど、
たくさんのおたよりをいただいています。
どうも、ありがとうございます!
そのなかに、ときどき、
このような内容のメールがまじります。
「ベア1号にぴったりの鍋しきはありませんか?」
「使っている鍋しきが、溶けてしまって‥‥」
もうしわけないです。
機能だけでなく、そのまま食卓に出せる、
食器としての美しさをもつ「ベア1号」ですが、
耐熱性と蓄熱性がたいへん高いことから、
鍋しきによっては、繊維が溶けて、
底にくっついてしまうことがあります。
(ちなみにその場合は、あせらず、
洗って乾かしたあとふつうに火にかけて
繊維を焼き切ってしまえば、
鍋をお使いになるのに影響はないのですけれど。)
でも、鍋しきを使わずに、
火から下ろして
食卓に直置きするわけにはいきませんよね。
ましてや、冷めるまで待つなんて、とんでもない。
こうした意見を受けて、
土鍋チームでは、2008年のはじめからリサーチをはじめ、
土楽窯の福森さんたちにも協力いただきながら、
「ベア1号」に合う鍋しきを探してきました。
そうして、ようやく見つけたのが、
今回ご紹介する「わらでつくった鍋しき」です。
鍋を乗せたときに安定感があり、
高温の鍋を乗せても大丈夫な素材として、
わらでつくった、それもドーナツ型の鍋しきが
いちばん使いやすい、ということがわかりました。
そして数ある「ドーナツ型のわらの鍋しき」のなかでも、
新潟県の佐渡でつくられているものを、
「ベア1号」の相棒として、選ぶことにしました。
ジェットフォイルで新潟から1時間、
佐渡の両津港から車で15分ほどのところに、
今回ご紹介する鍋しきを扱っている、
本間商店さんがあります。
ここは、小売店ではなく、一次問屋さん。
扱っているのは、竹、わら工品、竹製調理用具、民芸品、
荒物、雑貨など。
いずれも地元でつくられたものがほとんどです。
「基本的には、
他でつくれるようなもんはやらないんだ。
後、外国から安く入ってくるような商品は扱わない。
それから、環境を壊すようなもんもやらないな」
そう話すのは、本間商店の大将である本間満さん。
“新潟県ではちょっと知られた柔道家”
と、事前に聞かされていたので、
もしかして、こわもて?
‥‥と思っておりましたが、
じつはとても気さくなかたで、
ちょっとぶっきらぼうな口調ながら(すみません)、
丁寧に、いろいろなことを教えてくださいました。
「手作りの鍋しきはな、
全国どこかしらに行けばあると思うけどな、
ここまで引き締ったのは、あんまりないはずだぞ」
そう自信をもってすすめてくださる
佐渡の鍋しき。
直に手に取ってみると、
わらが、かなり力強く締められている印象を受けます。
その風合いがなんともいいですし、
手で持った重みもいい。
なわれたわらが強く編み込まれていて、
キッチンに掛けることのできるループがついている。
そしてなにより、「ベア1号」にぴったりのサイズです。
ドーナツ型ですから、中央部が焦げる心配もありません。
テーブルにのせると、天板と、鍋底のあいだに
空気の層ができますから、
天板が焦げることもありません。
また、わらは、すこしくらい焦げても、
溶けてくっついてしまうことも、ありません。
「わらの鍋しきは、
しっかりきつく締まっていないと、
使っているうちにほどけてきてしまう。
そこは、作り手に
しっかりやってもらっているんだ」
と、本間さん。
では作り手のかたというのは、
そんなに力がある人なのでしょうか?
それとも、何か特別な道具があるとか?
「いや、ウチで今、お願いしているのは、
だいたい、5人くらいで、
全員80才以上だから、
力が強いわけはないな(笑)。
道具だって、別に何も特別なものは使っていないよ。
わらを締めるのは、手の力だけだ」
80歳以上? 道具は使っていない?!
‥‥よっぽど熟練した職人さんなんですか?
「いや、作り手は、島のおばあちゃんたちだよ」
おばあちゃん!
「みんな高齢だけど、
元々、農家の娘で子どもの頃から
そういう手先を使って何かする仕事に
慣れているというのはあるんだろうな」
ちなみに、わらの鍋しきというのは、
むかしから佐渡にあったものだそうです。
編む技術は、本間さんの“婆さま”の技術を、
本間さんが島のおばあちゃんたちに伝えたのだそうです。
鍋しきの材料になっているわらは、
もともとは、稲の茎。
田んぼで刈った稲の茎だけを残して、
それを天日で乾燥させたものです。
つまり、米をつくると必ずできる、副産物。
たしかにわらでできたモノというのは、
日本には、昔から驚くほど多いですよね。
わら葺き屋根、わら布団、わら手袋、
草鞋、笠、蓑、米俵。
その理由はいたって簡単で、
主食の米をつくれば、自然とわらもできるから。
農家に育った娘さんたち(いまは、おばあちゃんですが)
にとって、わらを使って何かをつくることは、
もとから、慣れていることです。
比較的短期間で、島のおばあちゃんたちが、
素晴らしいわらの鍋しきを
仕上げられるようになった背景には、
そんな農業文化があるのでした。
それでは次回は、作り手のおばあちゃんたちに
会いに行った様子を、おとどけします! |
2009-05-24-SUN
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