福森家の秋のたのしみ、 「きのこ狩り」と「山のすきやき」。 もちろん土鍋が大活躍です。

ようやく秋めいてきた、伊賀の里。
食べることも、つくることも大好きな
「土楽」の福森家のみなさんにとっても、
たのしみな季節がやってきました。

たとえば、きのこ狩り。
きのこの採れる山は、毎年、
その時期に山に入れる権利の入札があります。
この年は、福森家の道歩さんがみごと当選、
そこで山の幸を見つけるのが得意な道歩さんの案内で、
いっしょに山に入って
きのこ狩りのようすを取材させていただきました。

そして、その食材を背負って山にのぼって(!)、
山頂でたのしむ「山のすきやき」も。
これは当主の福森雅武さんが始めたもので、
いまは跡取りの道歩さんや土楽のみなさんの
秋のレクリエーションになっているものです。

それにしてもみなさん、体力がある!
「ほぼ日」チームはついていくのがやっとでしたが、
その山の雰囲気、たっぷりの写真でお届けしますね。

前半はこちらからどうぞ。


秋晴れです!
きょうは道歩さんが誘ってくださった
「山すきやき」の日。
むかし、伊賀では山で松茸がりのあと、
山のなかで、松茸をすきやきにして食べていたそうです。
その在りし日の思い出を、再現すべく、
「山すきやき」に挑戦です。
標高738メートルの山の上で、すきやきをします!

「山といっても、すぐ近くの裏山ですから、
 軽装でいいですよ!」
と道歩さん。
そのことばを信じて、ズックで参加した乗組員は、
あとで後悔することになります。

なぜなら、全員で分担して、
土鍋、お肉や野菜、お米、
水、食器(漆器や、もちろん土楽の陶器も!)、
炭やガスコンロをかついで
登らなければならないから‥‥。

元気いっぱいの道歩さんのうしろから必死でついていく、
「ほぼ日」チーム。ひいこら。
それでも「山頂ですきやき」という魅力は強く、
われわれの足が止まることはありませんでした。
その苦労したトレッキングのようすは思いっきり省いて、
山頂の風景をどうぞ。
この絶景!
ちなみにこの一枚岩のむこうは断崖です。
雅武さんはこの岩の上ですきやきをなさるそうで、
「わたしたちも、ここでやりましょうか!」
という道歩さんを制し、
ちょっと手前に戻った山小屋付近で
火を熾すことにしてもらいました。
ここ、そうとう、コワイので‥‥。
さあ、リュックから土鍋を出して、
まずゴハンを炊きはじめます。
これは、ガスコンロで。
そして水コンロ(炭が入ってます)を使って
きのこ汁をつくります。
こういうものも、ぜんぶ担いできたんです。
天然もののしめじ、登場。
もちろん山で採ってきました。
ま、ま、松茸も!
でっかい! いい香り!
そして、地元の伊賀牛です。
松阪牛とルーツを同じくする伊賀牛は、
やわらかくて、おいしいお肉。
地産地消なのでめったに伊賀の外で食べることができません。
そして土楽の菜園で摘んできた、つまみ菜をたっぷり添えます。
ペットボトルに入っているのは「昆布水」です。
だし昆布を水につけて、ひと晩おいたもの。
おいしい出汁がでているんですよ。
湯気があがってきました!
すきやきの準備もととのいました。
こんな山頂のアウトドアダイニングでも
きちんとテーブルセッティングするあたり、
さすが道歩さん、さすが福森家。

食を京都に学んできたという福森家ですけれど、
すきやきは、関西風ではありません。
なぜなら砂糖を使わないから。
雅武さんの料理は「あまみは、素材から引き出す」というもの。
道歩さんもそれを踏襲しています。
まずはカンカンに直火で熱した土鍋に、牛脂をひき、
お肉を直接焼いていきます。

直火料理ができる「ベア1号」ならではの使い方!

山頂付近の見晴らし台に
いいにおいの煙がただよいます。
お肉に半分くらい火が通ったら、しらたき、
そして、松茸を大胆に手で割って投入!
ざっ、ざっと炒めていきます。

「松茸、足りひんなあ」と追加する道歩さん。
山で採れるからこそできる、ぜいたくな使い方!

味付は、藻塩、しょうゆ、日本酒のみ。
ちょっと蒸します。
そのあいだに、炊き上がったゴハンを。
わあ、きのことお揚げの炊き込みごはん!
そして、すき焼きの鍋に、たっぷりのつまみ菜を。
きのこ汁も、藻塩としょうゆですっきりと仕上げます。
最後に、ゆずの皮を、ぱらり。
完成!
そして、炊き込みごはんをよそって。
いよいよすきやきをいただきます!
伊賀牛は、やわらかくふっくら。
こんなふうに仕上がるのも「ベア1号」の特徴です。
調理中、加熱しすぎて硬くなっちゃうかも、
というような心配御無用。
そんなに気にしなくても大丈夫なんですよ。
いっただきまーす!
あれ? 道歩さん、
「ベア2号」でなにかつくりはじめました。
オリーブオイルとにんにく、とうがらしを入れて、
きのこを割いて投入しています。
さっと炒めて、できあがり?
これが何になったかというと‥‥
ブルスケッタ!
バゲットまで持ってきていたんですね。
総勢6人でたのしんだ「山すきやき」。
つくっては、食べ、つくっては、食べ。
「ベア1号」も大活躍しました。
そしてシメは‥‥?
牛すきうどん!
一同、満腹となりました。
ごちそうさまでした!
秋の日が暮れるのははやく、
だんだん影がのびてきます。
暗くなる前に、山を降りましょう。
おなかにつめこんだ食材で
からだは重いはずなのに、
足取りは軽い、くだりの山道。
貴重な体験をさせていただきました!
道歩さん、土楽のみなさん、
ありがとうございました!
もちろん山にかついですきやきを、
というオススメではないんですが、
お庭でバーベキューをするときや、
車で出かけるときなどに、
調理道具として(割れないように!)持って行くと、
いつもとかなり違うごちそうがたのしめると思いますよ。
ぜひ、やってみてくださいね!






「山に行きましょう」と誘ってくれたのは、
土楽の跡取りの福森道歩さん。
道歩さんは、村でもちょっと有名なくらい
山できのこを見つける名人なんですって。

道歩さん、いったいどうしてきのこの場所がわかるんですか?
と聞いてみたら、
「見えるじゃないですかー。それに、匂いもするし」と。
そ、そうですか?
都会から行ったものにはさっぱりわからず、
ただただ道歩さんのあとをついて山に入りました。

「ほら、あった」

「ここにも、ほら」
「足元にも、ありますよ!」
と、どんどん見つけていく道歩さん。
コツみたいのってあるんですか?
「そうですね、地べたに目線をおとして
 見上げるようにすると見つけやすいですよ。
 木の葉に隠れたりしているから」
なるほど! そういう姿勢は疲れるけど、
たしかに、見つけやすそうです。
食べられるきのこかどうかは、
道歩さんが判断。
食べられるものは、大きさを見て収穫です。
これはどうですか?
「おお、これはいけますね!」
そんな調子でどんどん見つけていく道歩さん。
ほんとに目がいいなあ。
ぼくらがうっかり踏んづけちゃいそうな場所も
道歩さんには宝の山。
「おいしい鍋ができますよー!」
こんな紫色のきれいなきのこ、
もしかして‥‥。

「毒、ちゃいますよー。おいしいきのこです!」

そうして1時間ほど山を歩いて。

これくらいの収穫量。
「今日はちょっと少ないです!松茸もなかったし‥‥」
え、いつもはあるんですか?
「ありますよー! でも大丈夫、ふつか前に採ったぶんが
 まだありますから、あしたの『山すきやき』を楽しみにしていてくださいね」
はーい!
‥‥といいつつ、その「山すきやき」に
いたる山道がどれだけたいへんか
わかっていなかった「ほぼ日」チーム。
それは、名付けるなら「体育会系すきやき」でした。

ちなみに、これがその「山すきやき」のようすです。
くわしくは、後編につづきます!



2012-11-13-TUE

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