実験現場レポート サーモグラフィの装置を見た!


いきなり最初に写真をお見せしていますが、
ずばり、これがサーモグラフィの装置です!

赤いところはあたたかくて、青いところは冷えている。
「温度差」を直感的にわかりやすく
見せてくれるサーモグラフィは、
こんな装置で測定されていたんですねー。
こちらがレンズ面。


このレンズで、
「温度」をキャッチするわけです。

で、こちらが反対側。


モニターがあります。
それと、なにやらいろんなボタンがたくさん。

興味津々でがやがやと、測定装置をながめていましたら、
係の方がていねいに説明をしてくださいました。

「人体や物体から放射される赤外線を測定し、
 その表面の熱分布を色で表した画像」
それがサーモグラフィなのだそうです。
難しいですか?
ちょっと難しいですね。
わたしたちも正直に
「ちょっと難しいです」と言いました。

すると係の方は「たとえばこうして‥‥」と、
ご自分の手のひらを
モニターに映して解説してくださいました。

目の前にサーモグラフィが表れる体験が初めてだったので、
「わー! すっごーい!!」と、
ついみんなで興奮してさわいでしまいました。
係の方に申し訳なかったです。

これがそのとき保存した画像。

サーモグラフィの、ポイントはふたつ。

まずひとつめは、
この色が表しているのは「表面の温度」ということでした。
「体温」ではないのですね。
右の数値を見ると、32度あたりが「赤」になっています。
なるほど、これは体温としては低すぎますよね。

そしてふたつめ。
サーモグラフィは、温度差を色の違いで表します。
なので、大切なのは「設定」なのだとか。
「この温度になったら赤くなる」に気をつけながら
右の数値を動かして上手に設定すれば、
熱分布がよりわかりやすい画像になるのだそうです。

このポイントを忘れないようにしながら、
まずはテスト撮影をすることになりました。
テスト用のモデルは、47才の男性です。

「どうぞ撮ってください」
とモデルが言ってますが、そうはいきません。
なぜならこの47才の男性は、
ひとつめのポイント、
「サーモグラフィが感知するのは表面の温度」
ということをさっそく忘れているからです。
このままだと「洋服の表面の温度」を
測定することになってしまいます。

47才の男性は、戸惑いながら洋服(上)を脱ぎました。

撮りました。

メガネをかけたままでした。

メガネの表面の温度は人体よりずっと低いので、
こんなふうに黒くなってしまうのですね。

メガネのことはともかく、テストを続けましょう。
「時間経過」で体温がどうなるかを見るのです。
47才の男性は、そのままの状態で
実験室内を10分ほどうろうろしたといいます。

そして、再度測定。
サーモ、チェック!

おなかが、冷えていますよね。
ほかの部分はそんなに変化がないのに、
おなかの部分だけが、青ーくなっています。

ちなみに実験室は、このあともずーっと
23度の室温が保たれた環境でした。

テスト、終了!
47才の男性は素早く服を着て引っ込みます。

それでは、まいりましょう、
本番の実験です!

被験者はこちら、28才の女性です。

28才の女性はこの格好で
実験室で1時間ほど過ごしています。
ちなみにこの時点で彼女は、
"ハラマキを巻いています"。

寒いですか? と訊ねたら、
「ここに来たときはちょっと寒かったけど、
 今はふつうー。暑くも寒くもない」
ということでした。

まずはその安定した状態で、撮りましょう。
さあ、男性の関係者は実験室から出てください。
(以下、撮影時はすべて男性退場)

サッと洋服(上)を脱ぎ、
手早くハラマキもはずしたら、
間髪を入れずに、28才の女性を測定。
サーモ、チェック!

こんな具合です。
おなかと首のあたりの表面温度が、
高めのようですね。

28才の女性に洋服を着てもらいました。
ただし、"ハラマキは巻きません"
ハラマキをはずした状態で、
しばらくこのようにぼんやりしてもらいました。

30分が経過したところで、再度測定。
サーモ、チェック!

みごとに(というのも変ですが)、冷えました。
やはり、おなかがこんなに青く。
手のあたりも、ずいぶん‥‥。

比較しやすいように、
2枚のサーモグラフィを並べてみましょう。

いかがでしょう、
ハラマキをはずしたことで起きた温度の変化を
目で感じ取っていただけたでしょうか。

と、ここでレポートを終了してもいいのですが、
せっかくサーモグラフィがあるのですから、
こんなことも、やってみることにいたしました。




二番手の被験者、
しょうがを手に意気揚々と登場です。

この日、31才の女性には、
あえてハラマキをしないで来てもらいました。

まずは、何もしないでそのままで、
サーモ、チェック!

この設定で、これを基準に見てみましょう。

31才の女性には洋服を着てもらい、
ここでしょうがを摂取してもらいます。

持参したしょうがシロップを使って‥‥

しょうが紅茶を飲んでもらいます。


しょうが紅茶の温度は、どれくらいでしょう?
せっかくなので装置で測定してみることに。

こんなおもしろい画像が撮れました。

しょうが紅茶は、50度くらいのようです。

さ、飲みましょう。
ぐいーっと。

しょうがのスライスもちょっと食べましょう。
辛い? でもおいしいでしょ?

こうして、しょうがの摂取が終わってから、
31才の女性には実験室でぼんやりしてもらいました。

30分が経過したところで、再度測定。
サーモ、チェック!

おっと、これは微妙な変化。
比較しやすいよう2枚を並べてみると‥‥。

首のあたりと、おなかの上の方が
じんわりあったまっているような‥‥。

31才の女性に感想をきいてみると、
「あれ? あんまり変わってないですね。
 だいぶポカポカしてるのに、なんで?
 さっきよりもあったかいですよ?」
とのことでした。

体内に摂取するしょうがなので、
「表面の熱」が見えるサーモグラフィが
反応するまでには時間がかかるのでしょうか?

いずれにしても、
ふたりの被験者はそれぞれに、
「ハラマキとしょうがって
 やっぱりどっちもあったまるわ〜」
としみじみ言っておりました。
体の中からポカポカしてくるしょうがと、
外からおなかをあたためるハラマキは、
最強の「あっためコンビ」なのかもしれませんね。

というわけで、
これにて「実験現場レポート」は終了です。
最後までのおつきあい、ありがとうございましたー!

「ハラマキとしょうがで、
 カラダもココロもポッカポカ〜」



2009-11-22-SUN

「あっため屋」トップへ illustration:AYANO KINOSHIA (C)HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN