「切り紙」。
切り絵とは違って、
折り紙を折って、切って、ドキドキしながら開くと
できている、あれです。
小さな頃に、やったことがあるという方も、
多いと思います。
今回の「SASSOハラマキ」のチョウチョとユキノハナは
切り紙で作られた図柄なんです。
今回の切り紙を作ってくださった
切り紙作家・矢口加奈子さんにお話を伺いました。

矢口 なんか久しぶりに見ると、元データ恥ずかしいですね。
紙に貼っただけの、アナログなので(笑)。
でも、「こうなったのかぁ」と、うれしいです。


矢口さん手作りの元データ
ほぼ日 では、まずは、なれそめを(笑)。
わたしたちが、
「ハラマキの今度のデザイン、どうしようか」
と、本屋さんに行ったときに、
ある本を見つけまして。
前々から、切り絵や切り紙って、
ハラマキと相性がいいような気がしていました。
ハラマキの、二色というの制約と、合うんじゃないかと。
色々な方の本がある中で、
矢口さんの本『めぐる季節の切り紙』が、いい感じで、
フェミニンなんだけど、キリッとしている
甘すぎない感じがいいなぁと思って、
ご連絡させていただいたんですよね。
矢口 はい。ありがとうございます。
ほぼ日 実際どうでしたか?
ハラマキの依頼っていうのは(笑)。
矢口 みんなに「ハラマキ」を「やるかもしれない」
って言ったら、「ハラマキ?」って。
ほぼ日 そうですよね。
矢口 でも、やったことがないことだし、
おもしろそうだったので。
ほぼ日 いつもは、どういうお仕事が多いんですか?
矢口 いつもは色々ですが、
基本的には自分の作品を作るのがメインです。
あとは、本を出版させていただいたり、
切り紙のワークショップとか、
こういう感じでデザインのお仕事をいただいたり。
ほぼ日 なるほど。
今日のバッグも、ご自分の作品なんですよね?
矢口 はい。
自分で一から考えて、手作りで作って、
展覧会のときに、展示して、販売したりしています。
ほぼ日 一点ものですね。
その柄は、切り紙から作られているんですか?
矢口 そうです。
この柄の部分は、折って、切って、開いて。

ほぼ日 へぇ〜〜〜。女子の心をくすぐりますね。
今回の、このハラマキを作るにあたっては、
どういうお考えでしたか?
矢口 ハラマキは、基本的には平面なので、
全体的に、柄が広がっているものが、
おもしろいかなぁと思って。
ハラマキって、地肌にまとわりつくものですよね。
なんか「一緒に暮らすもの」っていう感じで。
で、「ハラマキ」というと、やっぱり見せて歩くには、
若干恥ずかしいものでは、もともとあるじゃないですか。
ほぼ日 そうですよね。
矢口 けれども、それをチラ見させてもかわいいもの。
というようにするのは、どうしようかとは思いました。
でも、自分がやっているいつもの本質と
ずれていかないように、あまり気負いなく、
「こんなのがあったらいいな」っていうのを
素直に作ったっていう感じですね。
ほぼ日 初めてお会いしたときに、
ファイルを持ってきてくださって。
どういうモチーフでいくか。
という相談をさせていただいて、決めていったんですが、
もう、ファイルがすごいんですよ。



どれも欲しい! 欲しい! と、なりました。
矢口 ありがとうございます(笑)。
ほぼ日 実際作ってみて、再現性はいかがでしたか?
矢口 やっぱり最初はちょっと心配だったんです。
「編む」ということに落とし込むことは、
あまりないので。
でも、この編み物は、本当にきれいに出てるし、
逆に手作りっぽいというか、
すごく優しさみたいなのが出ていて。
ほぼ日 紙の時よりも、優しさというところでは、
出ているかもしれないですね。
矢口 そうですね。
でも、ちゃんと紙っぽさも、再現できていますよね。
普段は、自分でコツコツ作るだけなので、
人に作ってもらうと、
「あ、こんなふうになるんだ」って思いました。

ほぼ日 よかったです。
今回、わたしたちも、悩んだところだったんですが、
デザインと一緒に、色の組み合わせのパターンを
たくさん出していただいて。
「どれかに決めなきゃいけない」っていうのが
すごく残念でしたね。
矢口 色は、数限りなく出てきちゃうので。
すごい悩んで悩んで、あれでも削ったんですよね。
ほぼ日 結局これに決めさせていただいたんですけど、
いかがでしょうか?
矢口 2つのバリエーションが出てて、
とてもいいと思っています。
ほぼ日 そうですね。
これ、リバーシブルもいいですよね。気分に合わせて。
両A面ですよ、こりゃあ(笑)。

矢口 ありがとうございます(笑)。
ほぼ日 切り紙の道具は、特別なハサミだったりするんですか?
矢口 一番普通の。これなんです。


ピンクのふつうのはさみですね

これがなぜか一番切りやすいんですよね。
ほぼ日 普通‥‥ですね(笑)。
でも、紙は特別なもの、ですよね?
色が、珍しいような気がするのですが。
矢口 いや、全部普通の折り紙です。
ほぼ日 え! 紙も普通??
矢口 普通の折り紙ですね。
あとは、自分で着色したものを使ったりもしますけど。
ほぼ日 ええ〜、じゃあやっぱり色の組み合わせが、
矢口さんらしさになって、
特別感が出ているんでしょうね。独特な。
実際に切るときは、頭の中に設計図がある状態で
切るんですか?
矢口 うーん‥‥、そう‥‥なんだろうと思います。
だいたい、こう切れば、こうなる。
ということは、だいぶわかってきているので。
でも、手作業だからやり直しがきかないんですよね。
それがまあ、いいかな、と。
やりながら、
「ちょっとここをこういうふうにしたいな」
とか少しずつ考えていきながら、
その都度、形を変えたりとかはします。
ほぼ日 じゃあ、1回やってみたことを参考にしながら、
またやってみたり。ということもあるんですか?
矢口 そうですね。
でも最初にやったのが、一番よかったという時も
もちろんあるし。
いろいろやった結果、
途中のが一番よかったっていうこともあるし。
色々ですよね。
1個を作ることに関しては、
時間的に考えたらすごく短いものなんですけど、
その時間が短いから、パパッと作ったわけではなくて、
そこまでに行く過程で、いろいろとこう、
あるんですよね、私の中では。
ほぼ日 そりゃあそうですよ。
何も考えないで、
こういうものが、作れるわけじゃないし、
考えすぎても、だめだし? ですよね。
もともとは、なぜ切り紙を始められたんですか?
矢口 実は、あまりきっかけがなくて(笑)。
いつもそれが聞かれて困るところなんですけど。
ほぼ日 小さい頃には、みんなやりますよね?
矢口 そうですね。
わたしは運動が得意じゃない、
勉強があんまりできない。だったので、
なんとなく美術はずっと好きでした。
子どもの頃から、美術の方向でいきたい。
という思いはありました。
その中で、人がやってないことをやりたいなと思って。
たまたま、
「切り紙って誰もやってないのに
みんな知ってることだな」と思ったんです。
なんかこう、突き詰める意味が
ありそうなものだなって。
あまり競争相手のいないものとして、発見したというか。
ほぼ日 でも、発見しても、なかなかできないと思います。
矢口 がむしゃらに、ずっとやってきました。
今でもやっていますが、
最初は、プロダクトに落とし込む作業の
製作活動ばっかりしていたんです。
あまり「切り紙」というものをクローズアップして、
製作していたわけではなくて。
「切り紙をやろう」ではなくて、
「何か物を作るための、切り紙」
というふうなことでした。
ほぼ日 今日お持ちのバッグとか、そういうことですね。
じゃあ、あくまでそういうプロダクトの
装飾のパーツというような、とらえ方で始めた。と。
矢口 そうですね。
そのために、切り紙をやる。という、逆の発想です。
でも、それが功を奏したというか、
やってる間に、なんだか技術的に‥‥
ほぼ日 切り紙が、うまくなっちゃった(笑)。
矢口 はい(笑)。



あれ? ずいぶんとうまくできるようになったな。って。
気づいたら、色んなことができるようになっていて。
それでも、切り紙をメインにしようというよりは、
物を作っていきたい。という気持ちが大きかったので、
なかなか、「切り紙を軸にしよう」というふうには、
ならなかったんです。
ほぼ日 なるほど。
矢口 でも、周りの人に、なんとなく話をしてた時に、
「切り紙を中心でやっていけば?」みたいな話になって、
「あ、そうかも」って。
でも、やっぱり伝え方がむずかしいんですよね。
「切り紙って何?」ってなっちゃうので。
ほぼ日 そうですよね。
でも、子どもの頃、よく三角に畳んで切って開いた、
あれのすごい人がいるんだよ。
で、わりと伝わるような気がします。
矢口 伝わると、うれしいです。
でも、やっぱり使えるものって
おもしろいなと思います。
眺めてきれいなものも、もちろん重要ですけど。
ほぼ日 ハラマキも、まさしくそれですね。使えるもの。
矢口 そうですね。
やっぱり、「一緒に生活するもの」がいいですよね。

おまけ

矢口さんに、その場で
何かを作っていただくことになりました。
矢「なにがいいですか?
  じゃあ、チョウチョやりましょうか」
と言って‥‥



折って。



折って。



おしゃべりしながら、切り始めます。



切って。



お、触覚っぽいのが見えてきました。



いらない部分を落として。



開いて。ドキドキ‥‥。



おお、出来てきた!






完成です!

ものの1分くらいで出来てしまいました。
このあと、ハラマキチームも、
取材そっちのけで、大はしゃぎで
切り紙を体験したので、
その模様は、またレポートさせていただきますね。
矢口さん、ありがとうございました!
とじる