「ユラールのロンTとパーカ」実現の立役者、
スーパーパタンナー・金子さん登場!


今回の「ユラールのロンTとパーカ」、
「見せる裏地」だの「そでぐちポケット」だのと、
いままでになく冒険しているわりに、
ぼくらは、かなり自信を持っています。

まあ、自信があるから、商品として売り出すわけですが、
今回に関しては、それ以上の理由があります。

実は「ユラールのロンTとパーカ」は、
ある人の存在があってこそ、実現できたものなんです。

ぼくらがばくぜんとイメージしたものを、
実際の服のかたちにするべく、
設計してくれた人がいるんです。
ちなみに、そういう職業の人を、パタンナーといいます。
いわば、服を実際にデザインする人、ですね。

今回ぼくらは、あるパタンナーの人とがっちり組んで、
アイデアや意見を交換をしながら、
ロンTとパーカを開発してきました。
パタンナーさんと直接やりとりすることによって、
「ほぼ日」、つまりアイデアやプランの現場と、
実際の洋服づくりの現場が、うまくつながるんじゃないかと
思ってのことだったんですが、
それがどうやら、うまくいったようなんです。
そのおかげで、ここまでの冒険ができたんだと思います。

おまけに、このパタンナーさんが、
スーパーがつくくらい、すごい人でした。
スーパーパタンナー・金子裕之さんを、
ご紹介します。

「ユラールのロンTとパーカ」のかたちの特長を、
金子さん口から、わかりやすく伝えていただきますよ!


スーパーパタンナー・金子裕之さん

スエット・パーカのふりをした本格的ブルゾン?
〜「ユラールのパーカ」かたちと着心地のひみつ〜

―― 「ほぼ日」はじめてのスエット・パーカが、
こんなにかっこいい、着心地のいいものになって、
すごくうれしいです!
金子 それはよかった。かたちについては、
「正統派」というリクエストをいただいたので、
厚い生地や長いリブなど、
クラシックなスエット・パーカをベースに、
トール型といって、着丈をやや長く、
裾のしぼりを甘くして、
現代的なテイストを加えています。
リラックスして着られる、という点が、
重視されたかたちですね。
―― そういえば、はじめて試着したとき、
すごく動きやすくて、感動しました!
金子 それは、今回つくったパターン(型紙)が、
一般的なスエットのものではなく、
布帛(ふはく=綿その他の織物)などでつくる、
ブルゾン寄りだからなんです。
―― パターンがブルゾン寄り?
金子 布帛の洋服、ブルゾンなどでは、
生地がのびないので、
からだの動きをさまたげないよう、
パターンを設計してやらないといけない
んです。

いっぽうスエットやTシャツっていうのは、
生地がのびるから、いいだろうってことで、
パターンがとても単純化されているんです。
そのほうが量産できますしね。

―― 具体的には、どのへんが、
ふつうのスエットとちがうんでしょう?
金子 まずは、型紙に「前後差」をつけています。
前と後ろで、大きさがちがうんです。
―― というと???
金子 人間の動きは、腕でもなんでも、
前に動かすことが多いですよね。
つまり、背中側がのびる動きになるんです。
だから、型紙の背中側をやや大きく
前側をそれより小さくしています。
ふつうのスエットは、こんなことしません。
―― ははあ! なるほど!
金子 ほかの部分でいうと、
この2つのパーカをくらべてみてください。
わきの部分のちがいがわかりますか?

ユラールのパーカ 別の既成のパーカ
―― えーっと、「ユラールのパーカ」は、
わきに、たるみがありますね。
金子 そうなんです。ここに運動量をもたせて、
手が動かしやすいようにしています。

厳密には、「たるみ」ではないんです。
決して、だぶつくわけじゃなくて、
着ると、からだの線に沿うようになっています。
―― なあるほど、そっかそっか!
金子 それから、ひろげて見てみると、
「ユラールのパーカ」は、わきの下がまるく、
オレンジのは、Vの字になっています。

そでと身ごろの
つけ根が
まるくなっている
つけ根はVの字。
平面的なパターン

まるいほうが、着たときに立体的になって、
動きやすい
んです。
これも、ブルゾンのパターンの応用です。
―― わあ、ほんとだ。
ぜんぜん気がつかなかった!
金子さん、これ、すごいじゃないですか!
なんでいままで、だまってたんですか?
金子 (目をふせて)
いや‥‥それほどのことではないので‥‥。
―― でも、ほかではあまりやってないんでしょう?
金子 ええ、それはそうですね。
ほかにも、ポケット裏の布が
二重になっているところなども、
ブルゾン的な複雑なつくりになっています。

―― いやあ、よくわかんないけど、なんかもう、
スエットの皮をかぶった、
本格ブルゾン
って感じですねえ!
金子 そうですね。
ふつうのスエットより、
ずっと工程が多い
ものになっています。

工程が多いだけでなく、
「そでぐちポケット」などは、
ポケットをのばしながら縫わないといけないので、
結構むずかしい作業をすることになります。

Tシャツやスエットをつくる
いわゆるカットソー屋さんでは、
あんまりやりたがらないことを
してますね。
―― うは! 「ユラールのパーカ」には、
そんなに手がかかってたんですね!

いやいや、なんと「ユラールのパーカ」は、
見た目はふつうのスエットパーカなのに、
実は本格的な洋服のパターンでつくられた、
「スエットのふりをしたブルゾン」だったんです!

サンプルを試着した乗組員が感動した、
着心地、動きやすさは、そのおかげだったんですね!
これはほんとに知らなかったです。
金子さんたら、だまってそんなことして、
なんてニクイんでしょう!


裏地を折り返したときに、きれいになるように。
〜「ユラールのロンT」のこだわり〜

―― ロンTのほうでは、何か苦労したところとか、
ありましたか?
金子 折り返すための裏地をつけるので、
そでの太さや、形は、試行錯誤しましたね。
あんまりそでが細いと、
そで裏のマドラスチェック生地は伸びないので、
まくりにくくなっちゃうし、
太すぎると、着物みたいになっちゃうし。

―― サンプルで、
そでの形がキレイにできてきたとき、
さすが! って思いました。
金子 ありがとうございます。
実は、そでに関しては他にも、
裏地を折り返したときに、きれいになるように
考えてあるんですよ。
―― へえ! それは初耳です。
どのへんが、でしょう?
金子 そでの太さは、そで口に近くなるほど、
だんだんと細くなっていくものですけど、
このロンTの場合は、
そで口に近くなったところで、
太さが一定になる
ようにしています。


「ユラールのロンT」(上)と別の既成のロンT(下)
「ユラールのロンT」は、先のほうの太さが一定です。
―― ふーむ、それは、なぜ?
金子 そでを折り返したときに、そのほうが、
きれいな形で折り曲げられるんですよ。
―― あっ、そうか、太さが一定のほうが、
へんなシワが出ないんですね。



「ユラールのロンT」は、
そでを折ってもスッキリ。(上)
もうひとつのロンTは、折り返した部分の下側が、
すこしよれています。(下)
金子 そうなんです。
それから、そでを縫い合わせてから、
裏地をつける
、なんていうこともしています。
―― えっ、なぜそんな面倒なことを?
金子 Tシャツ生地を縫い合わせている
ミシン目が出ちゃうと、裏地を折り返したときに、
ミシン目が見えて、きたない
ですよね。
だから、ちょっと手間になるけど、
あとから裏地をつけているんです。


赤い矢印は、Tシャツ生地の縫い目。
黄色い矢印は、裏地の縫い目。
裏地の縫い目は、ほとんど見えません。
―― がーーーん。
知らないあいだに、そんな配慮まで
してくださっていたんですか!
なんでいままで言わなかったんですか!?
金子 (目をふせて)
いや‥‥それほどのことじゃないから‥‥。

ちなみに、こういう処理もやっぱり、
ふつうのカットソー屋さんは、
やりたがらないですね。
―― あのう、パーカもロンTも、
「カットソー屋さんがやりたがらないこと」
っていうのが、でてきたんですが、
実際に生産するのは、中国ですよね?
いざできてみたらダメだった、
なんてこと、ないんでしょうか?
金子 (キラリと目が光って)
そのへんは、ぼくがコントロールしますんで、
安心してください!
―― おお! なんと心強い!

寡黙ななかにも、熱い情熱をたぎらせ、
「男はだまっていい仕事」の、職人気質。
「ユラールのロンTとパーカ」は、
こんな人の手によって、
パターン・デザインされてるんですよ。

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