イギリスの南部にルイスという村があります。
1069年に建てられた石造りの城跡に、醸造所、
そして醸造所の横にはゆったりと川が流れ、
メインストリートは素敵なパン屋やカフェが軒を連ねます。
高台の斜面にひろがる村なので、少し坂をあがると、
ふとした路地のむこうに広大な深緑色の丘陵と、
その上にごま塩のようにちらばって
草を喰んでいる羊たちを見渡せます。
とても静かで美しく、
これこそイングランドと言いたくなるような景色です。
それだけでもじゅうぶん魅力的に感じますが、
ルイスはアンティークショップが多いことでも有名です。
年間を通じて、多くのバイヤーや観光客が訪れます。
食器、家具、古着に、玩具など。
ジュエリーはあまり多くありません。
それでも、この村に来たら何かとびきりの品に
出合えそうな気がして、私はついつい足が向いてしまいます。
今回ほぼ日のために復刻をした
「お家 ペンダント cats & dogs」は、
まさにそのとびきりの何か、でした。
ルイスの坂のふもとのアンティークショップで、
この猫と犬の銀製ペンダントチャームの原型は、
すっかり色はくすみ、埃をかぶり、
ガラスケースの片隅にありました。
たしか、犬のほうが表を向いて置いてあり、
あら、と思って店員さんにケースから出してもらいました。
犬小屋に、耳の大きな器量よしの犬が2匹。
くるりとひっくり返すと、
こんどは家のカーテンの間から猫が2匹、
外をのぞいているではありませんか。
しかも、イギリスの古いレンガの
お屋敷に見られる窓にそっくりです。
それぞれの2匹のポージングのバランスの良さ、
同じシルエットの「家」という形を、
表裏まったく違うデザインで、
なおかつ自然にまとめてあります。
いったいどんな人が、こんなに可愛らしくも
楽しいチャームを考えついたのでしょう。
どこかに刻印がないか探しましたが、
残念ながら何も手がかりは見つかりませんでした。
唯一私にわかったのは、デザインの特徴や作り方からみて、
1930-40年頃のものではないかということです。
あとで知人のイギリスのアンティークとヴィンテージの
チャームの専門家に見てもらったところ、
彼女もやはり同意見とのことでした。
約80年前のチャームを、
現代のロンドンの職人の手で蘇らせるかどうか、
私の中で答えは決まりました。
個人的に私は猫も犬も好きで、
洋服によってどちらを表にするかは
その日の気分で選びたい。
そんなひとはきっと他にもいらっしゃるだろうと思い、
チャームの上部の輪はやや大きめの楕円にし、
チェーンをお客様の手で取り外し、
左右を付け替えられるようにしました。
チェーンつき、チェーンなし、をお選びいただけます。
お手持ちのお好きなチェーンを通したい方は、
チェーンなしのほうをお求めください。
特製のジュエリーボックスに入れて、
お手入れにお使いいただける
ジュエリークロスと一緒にお届けします。
どうぞお楽しみに。
2017.12.1
イセキアヤコ