ぼくが着てるのは、
ロゴとか、まくら機能とかついていない、
いちばん最初のサンプルですよね。
それをずっと着てる。
でも、製品版も、ちゃんと申し込んだよ。
これまで着てきたパーカとのちがい?
うん、あるよ。
見ため。取り出すときの感触。着るときの感じ。着てから。
ぜんぶ、ほかのパーカとはちがう。
それは‥‥なんだろう?
なんかね、生きものっぽい。
つまり、のっぺりしてない。
犬とか見てても、
草とか野菜とかでもそうなんだけど、
びんびん生きてるやつっていうのは、
のっぺりしてなくて、「まばら」なんだよ。
均質じゃないわけ。
このパーカは、どこかがちょっとヨレてたり、
場所によって、生地の感じとか、
しわの寄りかたがバラついてるでしょ?
このほうが、生きものに近くて、おもしろい。
昔はさ、「のっぺり」は、価値があったんだよ。
「均質」とか「平等」とか、
まさしく、民主主義のシンボル。
モノがない時代には、品質がよくて衛生的で、
みんなおんなじっていうのが、うれしかったの。
それが、一回りしたあげくに、
モノと、ちゃんと一対一で対面したい、
その向こうにいるひとをリスペクトしたい、
っていうふうに、なってきてる。
「敬意」っていう言葉のほうが、
ほんとはいいだろうと思うけどね。
「たとえ敵同士でも、敬意はあるだろう」
っていうことを、ぼくはよく言いたくなるんですけどね。
ま、いまそれは関係ないか。
これ、生地が分厚いんですかね?
あ、そう、わりと。
この分厚さも、最近めずらしいね。
ちょっとね、「言うこときかなさ」があるんですよ。
「シワはオレが勝手に決めてるから」
みたいなところがさ。
そう、パーカのほうが。勝手に。
なんども洗って洗って、
くたくたになるときが、くるのかな?
そしたら、さみしいな。
言うこときくようになっちゃったら、ちょっとさみしい。
うちの犬がおとなしくなったこと、
ときどきさみしいと思うもん。
けっこうさー、昔にくらべて、
いい子になっちゃったりしてて。
「おまえ、前はもっと、ヘンだったじゃない?」って。
これもパーカとは関係ないか。
ん? よく洗ってるかって?
洗ってます洗ってます。
でも、さいしょと変わんないね。
ぜんぜんへたらない。
あと、これ、柔軟剤とか、よしたほうがいいよ。
もったいない。
ジーンズとおなじで、ちょっとつんけんしてる感じを、
たのしんだほうがいい。
やわらかいけど、てれっとしてない。
ハグ・クッションも、そこはおんなじ。
なんか、不思議な感覚だよねえ。
歯ごたえ? ああ、なるほどね。
そう、歯ごたえのある感じだね。
うまいこと言うね。
パーカだから‥‥着ごたえ!
クッションだと、抱きごたえ?
あ、ウケてるね。
意外とね、寄り添いすぎないんだよ。
互いに他人なところがおもしろいんだよ。
馬に乗るひととかの気持ちとおなじ。
完全に言うこときく馬なんて、いないわけでさ。
「別個なんだけど、一体化したよろこび」ですよね。
うん、そうそう、ちょっと誇らしい気持ち。
グレーの霜降りとかアイボリーのパーカって、
平凡の極みとも言えるんだけど、
でも誇らしいんですよね。
「オレはいいの着てるんだ」っていう。
それは、うれしいよね。
これ、いつから着てるんだっけ?
去年(2010年)の10月くらいから?
そっか。けっこう着てるね。
真冬でも、ちょっと買い物とか、平気で行ってたよ。
これと「くびまき」との組み合わせは、最強だったね。
あとはね、
「カシミアのパーカ」。
この2つのパーカは、ほんとに使い勝手いいわー。
部屋着にもいいし、やめらんない。
あったかさは、どっちもおんなじくらいに感じるね。
そういえば、
かみさん(樋口可南子さん)がほしがったんだよ。
すぐにね。
これ、ものすごくめずらしいことだよ。
オレが着てるのを、長い時間見てるうちに、
「着ようかな」とか「それって、まだあった?」とか
言い出すパターンが、すごく多いんですよ。
でも、これはまだサンプルなのに、
すぐに「ちょっと借りていい?」って。
それはすごくめずらしい。
社内では、売れ行きはどうなの?
あ、そう、かなり買ってるのか。
っていうことはさ、みんな、
他の乗組員とカブるってわかってて、
買ってるわけだよね。
2色しかないもんね。
それが、すごいと思うなあ。
なに? あ、もういいの?
ほかに質問ないの? もっと話せるよ。
オレが発見した、
「『あの子はオレのこと、好きなんじゃないか?』
っていう思い込みは、けっこう当たってることが多い」
っていう法則のこと、聞きたくない?
いらない? あ、そう。
それじゃね。
(2011.04.19 「ほぼ日」社長室にて収録)