手捺染の工程は、思っていたよりもずっと複雑でした。
まず、水彩で1点ずつ手描きした「みずたま」をもとに、
専任の職人さんが版を起こし、型をつくります。
そのかたは、油絵の心得のあるかたで、
水彩ならではの滲(にじ)みや濃淡をいかした
版(型)をつくる技術をもっています。
そして「調色」という工程へ。
刷り色を決定する作業です。
むかしは職人さんが経験から
調合をしていたのだそうですが、
現代は、あるていどのデータベースがあり、
「この色を出すには、この色を合わせればできる」という
おおまかなガイドラインを、工房で共有しています。
それでも最終的には、ベテランのかたの知識が必要。
その指示にしたがって、色糊をつくります。
版(型)と色糊ができると、こんどは捺染。
プリントの工程です。
20メートルほどはある、長い、斜めになっている版台には
うすく樹脂が塗られていて、
布がぴたりとつくようになっています。
繊細に織られた薄い織物を、しわがでないように、
時間をかけて丁寧にひろげていきます。
捺染の工程は、シルクスクリーンなどの
「版画」の技法と同じ。
スケージという道具で、色糊を均等にプリントします。
白地に紺のドットの「フィルン」は、
濃淡を出すため、みずたま部分を2回。
紺地に白のドットの「リュシオル」は、
さらに紺地を1版重ね、2回プリントを行ないます。