山梨県の西桂町で織り上げた薄い麻の織物は、
ロールのまま、山形県鶴岡市に送られます。
庄内藩14万石の城下町として発展してきた鶴岡は、
シルクの北限ともいわれる、絹織物の産地。
享和年間に京都・西陣から職工を招いたのがはじまりで、
明治期には大きな産業として発展していきました。
そして、絹の産業の一部として培われたのが、捺染の技術。
薄く、デリケートな絹織物にプリントをするための、
手仕事の技術です。
今回の「みずたまのましかく」は、
鶴岡ならではの、その高い技術をお借りしているんです。


じつは「ほぼ日のくびまき」で、
このような薄い麻の織物をつくることも、
プリントで柄を表現することも、はじめてのこころみ。
今回お願いすることになったのは、
「芳村捺染」さんという、
捺染専門の工房のみなさんでした。
▲芳村捺染の芳村社長。この道40年!

手捺染の工程は、思っていたよりもずっと複雑でした。
まず、水彩で1点ずつ手描きした「みずたま」をもとに、
専任の職人さんが版を起こし、型をつくります。
そのかたは、油絵の心得のあるかたで、
水彩ならではの滲(にじ)みや濃淡をいかした
版(型)をつくる技術をもっています。

そして「調色」という工程へ。
刷り色を決定する作業です。
むかしは職人さんが経験から
調合をしていたのだそうですが、
現代は、あるていどのデータベースがあり、
「この色を出すには、この色を合わせればできる」という
おおまかなガイドラインを、工房で共有しています。
それでも最終的には、ベテランのかたの知識が必要。
その指示にしたがって、色糊をつくります。

▲調色の作業。データベースをもとに、さいごは人の目で決定。
▲色糊づくりの作業場は、まるで調理室か理科の実験室のよう!

版(型)と色糊ができると、こんどは捺染。
プリントの工程です。
20メートルほどはある、長い、斜めになっている版台には
うすく樹脂が塗られていて、
布がぴたりとつくようになっています。
繊細に織られた薄い織物を、しわがでないように、
時間をかけて丁寧にひろげていきます。

▲捺染においていちばんの要となる工程がスタート!

捺染の工程は、シルクスクリーンなどの
「版画」の技法と同じ。
スケージという道具で、色糊を均等にプリントします。
白地に紺のドットの「フィルン」は、
濃淡を出すため、みずたま部分を2回。
紺地に白のドットの「リュシオル」は、
さらに紺地を1版重ね、2回プリントを行ないます。

▲型を布の上に置いて、プリントします。
▲一度目は、濃淡のニュアンスのための作業。
▲ぴったり同じ場所にもういちどプリント。
▲「フィルン」完成。ドットのひとつぶずつに、表情が出るのです。
▲「リュシオル」は白いドットを2回プリントしたあと、紺地も別の版でプリントします。
▲ゆっくりはがして、乾燥。
▲蒸し器で蒸着させ、染料を固定。いちど乾かしてから、水洗いをして仕上げたあと、断裁、縫製へとうつります。
こうしてできあがる「みずたまのましかく」。
きっちりした正円のドットとはことなる
独特の「ゆらぎ」がそのままに、
やわらかな生地とあいまって、
手仕事ならではのゆたかな表情をうんでいます。

次回予告では、「おおきなましかく」などの
新色をご紹介します!
ほぼ日のくびまき 2014 summer は3カテゴリー6デザイン、すべて麻100%。あたらしい「とめるショップ」もいっしょに、5/28(水)午前11時より販売開始です。
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