「ほぼ日のくびまき」は、
このくびまきのために開発した、
「中羊糸(ちゅうようし)」という
あたらしい糸をつかっています。
「中羊糸」は、極細のウールの糸を
コットンのわたで包み込んで縒(よ)りをかけて
1本の糸にしたものです。
あたたかく弾力のあるウールと
肌ざわりがよく静電気がおきにくいコットンの
おたがいのよいところをあわせもっています。
中軸のウールの糸の素材は、メリノウール。
羊毛の中でも最高級とされる
メリノ種の羊のものです。
ほかの羊毛に比べて繊維が細く、
ソフトな肌触りがうまれるこの糸を
細く細く縒りました。
ウールは弾力とはりがあり、ふかふかしています。
ちぢれた繊維はたくさんの空気を含むので、
断熱性がたいへん高く、
湿気を吸収すると、熱を発生する(吸着熱)という
特別な性質も持っています。
この湿気を熱に替える性質が、冬山で遭難したときに
「肌着にウールを着用しているかどうかで
生死がわかれる」
といわれる理由です。
湿気を熱に替えるため、汗冷えも防げます。
ウールの糸をつつみこむコットンには、
「サンフォーキン綿」をえらびました。
サンフォーキン綿は、
カリフォルニアのまんなかに広がる
広大な農地、セントラルバレーの
南のほうで作られています。
この農地は、周囲を囲む山脈の
雪解け水を利用してできたもので、
綿はこの雪解け水を源とした
地下水をつかって育てられています。
サンフォーキン綿の繊維は、
天然の縒りが入っていてふくらんでいて、
毛羽があることが特長です。
繊維が長く毛羽がない超長綿をつかうよりも、
サンフォーキン綿をつかった方が、
ふわふわしたあたたかいくびまきになる、と考えて、
「ほぼ日のくびまき」には、この糸を選びました。
ほぼ日のくびまきには、5つの織り方があります。
経糸(たていと)と緯糸(よこいと)が直角に交わり、
それぞれの糸がまっすぐにのびる「平織り」。
チェックやストライプのラインが
くっきりと美しく仕上がる織り方です。
作冬にデビュー、
まるでぬいぐるみのようなやわらかさと、
弾力をもつのが、「テディ」。
使っている糸の量は同じでも、
空気を多くふくんでいるため、
くびにまいたときのあたたかさも、たっぷりです。
ジーンズでおなじみの生地のように綾模様が斜めに入り、
両面の色みがことなるのが「デニム」。
「二一(にいち)の綾」という手法で、
中羊糸のもつやわらかさと弾力をいかして織り上げました。
(ご安心ください、デニムの硬さは、ありません。)
たて糸とよこ糸の色をかえ、右上がりと左上がりのV字が
連続した織り模様になっている「ヘリンボーン」。
糸が、斜めの動きに対し柔軟なので、
からだによりそうやわらかさが自慢です。
そして、2本を縒(よ)り合わせた双糸ではなく、
1本だけの単糸を使って織った「ふわふわロング」。
ふんわり、やわらかく、しかも透け感が出たことで、
とても上品な印象となっています。
横(長辺)の端は平安時代から伝わる織り方、
「からみ織り」で留めました。
「からみ織り」は
緯糸(よこいと)に
経糸(たていと)をからめてしばる方法です。
縫い目を作らずに、
しっかりと端の糸を留めることができ、
端がほつれたり、糸がぬけたりしません。
端に縫い目がないため、巻いたときに、
なめらかなドレープが生まれます。
巻いたときに美しいドレープが生まれる「からみ織り」。
縫い目がないので、デリケートな肌の方にも、
やさしい「くびまき」です。
「くびまき」のフリンジ(ふさ)は、
イタリア製の古い機械を使ってつくっています。
もともとは、高級カーテンのフリンジを
つくるものだったとか。
この機械は、日本には十数台しかないそうです。
上下のフリンジは、機械の仕様上、
ねじる方向が逆になります。
そのため、上下のフリンジの
巻きかげん(カールの具合)と長さが異なります。
昔の機械ですから、機械とはいっても、
オートメーションでつくっているわけではなく、
職人さんが手間と時間をたくさんかけて、
1枚、1枚つくっています。
そのため、仕上がりが、完全な機械化のもとで作られる
大量生産品と異なり、
個体差があることをご了承ください。
1枚、1枚の表情が異なることも、
また味わいのひとつと考えてくださるとうれしいです。
天然素材であることをだいじにした
「ほぼ日のくびまき」は、
しわ加工も化学的なことはせず、
自然に徹しました。
糸そのものの縒りを強くしたことで、
自然に生まれるよれや、しわを
洗ったあとの最後の仕上げのときに、
さらにはっきり出るように
のばさないようにして乾燥させています。
自然にできたしわの味わいをおたのしみくださいね。