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編みもの作家の三國万里子さんのご希望で 今回デザインをお願いしたわけですが、 平林さん、編みものの経験は? |
平林さん |
すごーくむかしにやったことはあります。 でも、続かず(笑)。 そういう女性はきっと多いですよね。 わたしもその程度の経験です。 |
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そんな平林さんに編みもの関係の依頼がやってきて、 どのように思われましたか? |
平林さん |
最初はあまりよくわかってなかったんです。 「編みもの」って聞くと、 なんていうんでしょう 手芸屋さんのムードというか‥‥。 |
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ええ、ええ。 |
平林さん |
その感じだとしたら、 私にできることはないのかもしれない、と。 でも、いろいろと見せていただいたら、 三國さんのニットは まったくそのムードではないですよね。 アラン柄のセーターとか、 すてきだなぁと思いました。 さらにお話をうかがうと、 男性もキットを買って編んでいる、と。 そういう女性的すぎない感じだったら わたしにも何かできるかもしれないと思って、 やらせていただくことにしました。 |
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いつものお仕事と勝手が違うようなことは? |
平林さん |
いつもと違ったのは、このバッグですね。 |
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ニッターズバッグと名づけました。 |
平林さん |
布もののデザインを頼まれるとは 思ってなかったんです。 |
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いつもはパッケージですとか、紙ものが多い。 |
平林さん |
ええ。 でも最初に三國さんが、 「こういうバッグにしたい」という サンプルを持ってきてくださったので、 勝手は違っても迷いはなかったです。 |
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それが、こちらですね。 三國さんが古着屋さんで見つけた、 新聞配達員のバッグ。 |
平林さん |
実際のバッグ作りは 『YAECA』さんにお願いしたので、 その意味でも仕上がりに不安はありませんでした。 |
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ファッションブランドの『YAECA』さんと。 |
平林さん |
サンプルを見たとき、いちばんグッときたのは、 ショルダーの部分の反射素材でした。 |
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車のヘッドライトが反射する、 配達員さんの安全のための素材ですね。 |
平林さん |
『YAECA』さんに素材を見つけてもらって、 そこはいい感じに再現できたと思います。 ‥‥ちょっと、肩にかけてみますね。 |
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ああ‥‥いい感じです。 今回、平林さんとやりとりをさせていただいて とても印象的だったのは、 ご自身でどんどん試してくださったことです。 バッグのサンプルができてきたときに、 「きょう一日、肩にかけて仕事してみます」とか、 「肩にかけて外を歩いてもいいですか?」とか、 おっしゃってくださいましたよね? |
平林さん |
そうですね、 やっぱり「使いたい」と思うものにしたいので。 わたし、けっこう売り上げとか気にするタイプなんです。 化粧品会社にいたときも、 発売日に売り場で2時間くらい張ってたり(笑)。 そういうタイプなんです。 |
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わかります。 せっかくですから、たくさんの人に届けたいですよね。 そんなバッグと同じコピーが記された、 マグのデザインもお願いしました。 |
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最初に気になったのは 「300ml」という文字だったのですが、 容量の表記をなぜここに? |
平林さん |
なぜでしょう‥‥。 数字が好きなんですね。 時刻表のように 整然と並んでる数字が好きなんです。 あと単純に、 どのくらい入るんだろうとはかってみたら 300mlだったんです。 |
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平林さんのデザインといえば 文字がきれいにぴっしり並んでいる印象がありますが そういうのはやはり‥‥。 |
平林さん |
そうですね、好きです。 |
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いろいろなタイプのカップを試していただいたそうで。 |
平林さん |
はい。 国産のマグにもいいものがあったんですが、 今回の場合にはきめ細かくてきれいすぎました。 もっとラフに使う感じがよかったので。 |
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ぴったりだったのが、アメリカのマグだった。 |
平林さん |
はい。 ベースをこのマグにしてもらって、よかったです。 ふつう、「アメリカじゃないと手に入らない」 ってなると、みんなへこたれるんですよ(笑)。 「うーん、諦めましょう」ってなるんです。 なのに今回は、ほぼ日の担当さんが なぜだかつるッと、 「アメリカにありました。これでいきましょう」と。 そこまでやってくれるところは、ないんですよ。 |
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ありがとうございます、恐縮です。 そして最後に、ニードルゲージ。 |
平林さん |
ニードルゲージ。 じつは今回のデザインで、 地味ですけど これがいちばん気に入ってるんです。 |
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それはちょっと、わかる気がします。 機能美というか、穴が整然と並んでいる感じとか、 平林さんらしさがつまったアイテムかと。 |
平林さん |
これにも、試行錯誤がありましたよね。 最初はプラスチックで考えていたり、 定規みたいな長いデザインにしてみたり。 こういうかたちに落ち着いて、よかったです。 「文字を刻印して、白い文字にしたい」 というのも、難しいかと思ったらできました。 |
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はい。 シルバーに白い文字がとてもきれいです。 あと、台紙もかっこよくて、 はずして使うのがもったいないくらいです。 |
平林さん |
わたしは好きなんですね、こういうのが。 |
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きょうのお話の最初に、 「女性的すぎない感じ」とおっしゃってましたが、 今回デザインしていただいた3つは、 まさにそういうアイテムかと。 |
平林さん |
そうですね。 「女性のためのすてきなアイテムを」って言われると 構えてしまうのですが、 いつものように ユニセックスなものができたと思います。 |
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ありがとうございました。 これを機会にぜひ、 平林さんも久しぶりに編みものを。 |
平林さん |
はい。‥‥いやでも、どうでしょう(笑)。 編みものをやりはじめると、 きっと、はまっちゃうんですよ。 だからわたしの場合、 リラックスにはならないかもしれない(笑)。 |
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