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ちいさなボタンの世界。
COーさん
東神田にあるヴィンテージボタン専門店「COー」。
ヨーロッパを中心に、世界各地で買い付けたボタンを取り揃えている。
お話を伺ったのは、買い付け担当の小坂直子さんです。
- ──
- サマーニットカーディガンのアクセントになっている、
貝ボタンは「COー」さんのものです。
もともと三國さんが通われていたお店で、
長くMiknitsでご一緒しています。
- 小坂
- 「つぎはどんな作品なんだろう?」と
たのしみにしているので、
今回もご一緒できてうれしかったです。
三國さんは他にはない作品を
作ってらっしゃるじゃないですか。
そこにボタンをつけてもらえることは光栄ですし、
おもしろいのは、
思いもよらないボタンを選ばれることもあるので、
それが自分にも刺激になっています。
どんなボタンを選ばれるのかも、
いつも、とってもたのしみにしています。
- ──
- 三國さんならではのセンスで、
たった一つのボタンを選ばれていますよね。
- 小坂
- そうですね。
やっぱり感性が全然違うなと思いますし、
驚きがあるんですよね。
『うれしいセーター』のとき、
たぶん、宮沢りえさんのポンチョを
編んでいるときに来てくださったんです。
詳しい人でないとわからないと思うんですけど、
そこで選ばれたボタンが、
エリザベス女王の戴冠式の記念ボタンが
ついているんです。
- ──
- ええ!そうなんですか。
- 小坂
- そういうところがね、
ちょっと、にくいなと思って(笑)。
ほかのボタンもいろいろ買ってくださったけど、
これにしたんだなと思いました。
ボタンをどんな風に使うのか
たのしみでいられるのは、
買い付けしている身として、うれしいです。
- ──
- 以前、チョッキ用のボタンをさがしたときには
デッドストックの、紳士物のズボン用ボタンを
採用されたこともありました。
それが、チョッキというアイテムに
ぴったり合っていて。
アイディアが新鮮ですよね。
- 小坂
- そうなんですよ。
だから、私から「こういうのどうですか?」
と提案したいとはあまり思わないです。
自由に選んでほしい。
- ──
- カーディガンのボタンについては、
「貝ボタンで」と三國さんが指定して、
小坂さんが探してきてくださいました。
貝ボタンはボタンの中でも、
伝統的な物というイメージがあります。
- 小坂
- 古くからある、定番の天然素材ですね。
歴史としてはすごく長いのですが、
プラスチックのボタンが登場したことで、
スタンダードが変わっていった感じはあります。
今回選んだボタンは、
巻貝の高瀬貝をくり抜いてつくられたものです。
高瀬貝は貝ボタンの中でも
よく使われている天然素材ですが、
今回みつけたボタンは通常のものよりも、
鮮やかなパール色がたのしめるのが特徴ですね。
- ──
- 私たちがイメージしていた貝ボタンと、
ちょっと違うなと思いました。
光沢が強くて、華やかで、
スタイリッシュで。
- 小坂
- 輝きが違いますよね。
色味もおしゃれな感じなので、
普通の貝ボタンとは違う印象を受けると思います。
- ──
- お洋服につけると、
どんな風に印象が変わるものですか?
- 小坂
- 貝ボタンは上品なイメージですが、
これは輝きが強いので
洋服が華やかな印象になると思います。
ちょっと高そうなお洋服にみえますね。
昔からつくられているものですが、
とっても、手間ひまかけてつくられていて。
製作工程が多いんです。
- ──
- 小さくて、形もシンプルなので、
工程が多いとは想像していなかったです。
- 小坂
- どの天然素材も、
いくつもいくつも工程を経て、できあがります。
手作業の工程も多く、
貝殻のどの場所を材料として使うかによっても
光沢の違いが出てくるので、
職人技の域なんですね。
- ──
- ボタンは小さいけれど存在感があるので、
お洋服にどんなものをつけようか
悩んでしまいます。
手芸をはじめるにあたって、
ボタンの選び方のコツを教えていただけますか?
- 小坂
- もう、絶対に、つくった作品を
お店に持ってきてほしいです。
そして、ボタンの実物を作品に合わせてほしい。
- ──
- 「何ミリのボタン」という、
規定に合わせるだけではなくて。
- 小坂
- サイズもそうですし、
色がね、みんなやっぱり無難に、
同系色のボタンを選ばれます。
それはもちろん外さない選び方ですけど、
ボタンを作品に当ててみると、
思いもよらないものが合ったりするんです。
それに、同系色の中でも
いろんなトーンがあります。
白色でもクリームがかっていたり、
ゴールドでも抑えめだったり。
微妙なニュアンスの違いは
実物を見ないとわかりませんし、
編んだものと合わせてみて
予想と違う素敵なボタンをみつけたときのよろこびは、
手づくりだから実感できますよね。
だから、作品を持ってきて、
合わせるのがおすすめです。
- ──
- お家でボタンのサイズを測って、
「よし、このサイズのこんな色を探すぞ」と
決め込んで、手芸屋さんに行っていました。
ボタンがひとつとれてしまったときは、
似たようなものを探しに。
- 小坂
- その光景、よく見ます(笑)。
似たようなボタンでも、
やっぱり全く同じものではないから
「とれちゃったんだね」って感じになるんです。
- ──
- たしかに、余計目立ちますね。
- 小坂
- わかっちゃいますよね。
もっと「わたしはこのボタンを選んだぞ」
という気持ちがこもったものを選んで、
つけてほしいなと思います。
でも、三國さんの作品を
編んでいらっしゃる方々は熱量が高くて、
作品を持ってきて、
ボタンを探してくださる方が多いです。
いろんなボタンを作品に合わせて選ばれていますね。
だから、私はみなさんがつくった作品を、
誰よりも早く、みているんじゃないかな。
- ──
- やっと編み終わって、
あともうすこしで完成、というところだから、
みなさんたのしんで選んでいそうですね。
- 小坂
- そうなんです。
手編みだから、多少ボタンホールの大きさは
変わってくるんでしょうが、
編みかたのレシピに「何センチ」と目安が書いてあっても、
大きいサイズのボタンが通ることもあるんです。
だから、意外な組み合わせを見つけることができて、
あの人の作品にしか合わないボタンっていうのがある。
それが、いいんですよね。
- ──
- お店に来れば、
ご相談にも乗っていただけるものですか?
- 小坂
- もちろん。
作品に合わせてボタンをご紹介します!
(おわります。)
2020-07-14-TUE
スタイリング|岡尾美代子
撮影|清水奈緒(イメージ写真)、
沖田悟(商品写真)
ヘアメイク|茅根裕己(Cirque)
モデル|岩崎咲(身長・154cm)
(étrenne)