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あたたかい季節に向かって、
芽吹いていくイメージ。
山本祐布子
イラストレーター。京都精華大学テキスタイルデザイン科卒業。
切り絵やドローイングを用いたイラストレーションや、
雑誌や広告、プロダクトデザインのディレクションなどに携わる。
ベースにしている千葉県夷隅郡大多喜町「mitosaya薬草園蒸留所」では、
お茶やジャムなどを手がけている。
- ──
- Amibari柄の次は、
山本さんらしいモチーフで描いていただきたいと、
”植物柄”をテーマにご相談をして。
- 山本
- お話をし始めたのが、去年の秋頃でしたね。
ワンピースが発売される頃の景色を想像すると、
植物たちが土からちょこちょこっと
顔を出してくるだろうと。
- ──
- 植物の季節の到来ですよね。
- 山本
- なので、植物たちがあたたかい季節に向かって
芽吹いていくようなイメージで、
柄を描けたらいいなと思ったんです。
モチーフについて考えたときに、
私の中で三國さんは「和」のイメージがありまして。
直接的に和風な作品が多いわけではなく、
なんとなく和の雰囲気を感じるんです。
それで、あざみやドクダミなど、
日本に馴染みのある植物も描くことで
三國さんの作品世界とリンクさせたいと思いました。
しかも、その植物の分野なら、
mitosayaは強いぞと思って(笑)。
- ──
- お庭にたくさん、
日系の植物が咲いていますもんね。
- 山本
- ですが、柄を描きはじめた時期は
mitosayaの庭に咲く植物たちが、
冬に向かって少しずつ静かになっていました。
だから「あそこにはドクダミがあったな、
あそこには紫蘇が咲いていたな」と
これまでの”草花が芽吹く景色”の記憶をかき集めて、
ここに散りばめた感じですね。
- ──
- 素敵です!
mitosayaのお庭がつめ込まれているんですね。
- 山本
- 植物図鑑ほど厳密ではないけれど、
mitosayaの庭に生息した植物たちを
デフォルメした部分はあると思うんですよね。
すこし尖った葉っぱとか、
おもしろい形の種や実とか。
- ──
- あらためてデザインをじっくり眺めると、
自分の記憶にある植物とつながるような
気持ちになりますね。
- 山本
- 自分の記憶と照らし合わせながら、
生地をじっくり眺めてもらうのも楽しいですね。
この生地ができあがった時に、
リバティやフランスのアンティークに用いられる
西洋の小花柄の雰囲気とは、
なんとなく違うなと思ったんです。
なんていうんでしょうか……
和の植物の雰囲気や抑えた配色によって、
独特な世界観の小花柄になったと思いました。
- ──
- 小花柄は世の中にたくさん出回っていますが、
たしかに雰囲気が違いますね。
- 山本
- だから、三國さんのつくられる
ヴィンテージの世界観に合うように思います。
- ──
- 今回の配色も山本さんにご相談しましたが、
どのように決められたのですか?
- 山本
- なんとなく、私と三國さんの共通する好みとして、
白や黒、灰色などの”無彩色”があると思っていまして。
一つは無彩色をベースにした、
大人っぽい色をつくりたいと思っていました。
それで、sepia roseができたんです。
そこを軸に色のバリエーションを考えて、
淡い色味のものとパキッと鮮やかな色を
探っていきました。
あとは着るものとして肌馴染みがいい色を
選ぶようにしています。
- ──
- 鮮やかなエメラルドグリーンにオレンジ、
くすみがかった黒とピンク、
ベージュのような白色にスカイブルーと、
ポイントカラーも特徴的です。
どのように決められたのですか?
- 山本
- 正直、感覚的な部分も大きいのですが、
ベースとなる色を考えて
そこから組み合わせる色を決めました。
- ──
- どれも「何色」とははっきり言えない、
絶妙な色ですよね。
- 山本
- 三國さんがmarikomikuniでつくられた、
カシミヤセーターの色も特徴的だったじゃないですか。
蛍光色が入ったようなパキッとした黄色や
黒に近いネイビーなど。
三國さんの世界観はその色選びにも、
あるように思うのでいつも楽しいです。
- ──
- ネーミングもさすがだと思いました。
- 山本
- 色を説明しつつも、
イメージが伝わるようなネーミングになりましたかね。
個人的な意見ですけど、
可愛すぎない色合いの小花柄だと思うんです。
ちょっとだけ、ハンサムで大人っぽい。
甘い雰囲気が苦手な人でも、
この柄なら着られるような気がします。
個人的にも、気に入っていて(笑)。
- ──
- そう言っていただけてうれしいです!
ワンピース以外でしたら、
山本さんはどんなものをつくってみたいですか?
- 山本
- 肌触りが気持ちいいし、結構タフな生地なので、
イメージが膨らみますね……
ワンピースやスタイなど子ども服はかわいい。
あとは、やっぱり自分用にワンピースにしたいですね。
お出かけしたい気分になれそうです。
- ──
- ちょっと前向きになれるような柄だと思いますね。
Amibariの新色も晴れやかないい色になりました!
- 山本
- オレンジに近いような赤色で、
こっくりといい色になりましたね。
- ──
- 前回のAmibariの配色とは、
イメージがまた違いますよね。
- 山本
- この間は寒色がメインでしたから、次は
肌映えのする明るい色がいいと思っていました。
- ──
- 一見、パキッとした色ですが、
肌にあてるとよくなじむ色です。
- 山本
- 黄色もいい、アクセントになったかなと。
Amibariがシャープな柄なので、
かわいい色合いでも子どもっぽく
ならないんですよね。
ポカポカ陽気の日にはぴったりですね。
- ──
- また、「Plants」柄にちなんで、
mitosayaオリジナルのハーブティーを
特別につくっていただきました。
どんなお茶になったのでしょうか?
- 山本
- 柄に合わせて、庭で採れた
杜仲の葉っぱ、橙の皮、梅の花など
日系の植物を多めにブレンドしました。
去年育てた麦や、モチの実など。
これだけだと個性の強い
お茶になってしまうので、
レモングラスやシナモンリーフで
飲みやすくなっているかなと思います。
mitosayaらしい植物が多いですね。
- ──
- 触れたことのない植物ばかりです。
- 山本
- いま、お茶を淹れるので
ぜひ飲んでみてください。
- 山本
- どうぞ。
- ──
- ありがとうございます。
- ──
- わあー、今までに飲んだことのない味わいです。
エグミがなくやわらかくて、
甘酸っぱい香りがします。
- 山本
- 梅の香りとシナモンリーフの香りが、
立ってくると思います。
- ──
- ここに来る途中で見かけた景色が、
思い出されるようです。
- 山本
- まさに、mitosayaの香りが、
身体の中に立ち込めるような感覚に
なってもらえたらと思っていました。
- ──
- ブレンドの過程というのは、
どんな風に決められていくんですか?
- 山本
- これもまた、頭の中でいろいろ
イメージしてつくるんです。
今回はシナモンリーフと、
収穫の季節を迎える梅の2つをメインにしようと。
加えて、その時々に収穫できた
いいものを使っていきます。
あとは、見た目も大事かなと思っていて。
柄のバランスを考えていくように、
きれいに見えるよう意識しています。
- ──
- 実が、チャームポイントになっていますね。
封を開けると梅がフワッと香ってきて、
いい気持ちです。
- 山本
- そう言ってもらえてよかったです。
mitosayaの香りを、すこしばかりおすそ分けですね。
(つづきます。)
2021-03-26-FRI
[販売時期・販売方法]
2021年 3月30日(火)午前11時より
数量限定販売
[出荷時期]
1~3営業日以内
スタイリング|岡尾美代子
撮影|清水奈緒、沖田悟、
ほぼ日編集部(取材写真)
ヘアメイク|茅根裕己(Cirque)
モデル|なお(Gunn's・身長161cm)
撮影協力
AWABEES ☎03-5786-1600
UTUWA ☎03-6447-0070