Miknits Vintage Pattern Works

ソーイングのおもしろいところは、
自分で”自分のための”とっておきをつくれるところ。
三國万里子さんがみつけた
フランスのヴィンテージワンピースをヒントに、
アールデコドレスのパターンと
イラストレーター山本祐布子さんによる
植物柄のオリジナル生地ができました。
生地の製作は、大阪の宇仁繊維さんと一緒に。

また、三國さんデザインのサマーニットも登場。
植物をモチーフにした、
レース模様が美しいクルーネックのニットは
春から秋まで活躍しそうです。
あたたかい季節に向かって芽吹き、
香り立つようなお洋服について、
つくり手のみなさんにお話をうかがいました。

07 Snap03 木村びおらさん

長年、編集や書き物の仕事に携わってきた木村びおらさん。
食や旅、ものづくりを中心に、日本全国を飛び回りながら、
暮らしにまつわる事柄やカルチャーについて執筆をしています。

昨年ふたり目を出産。
都内から郊外へ引っ越しをし、
生活が大きく変わったと話します。
家族で季節の移り変わりを楽しみながら、
新しい発見や成長に思いを馳せる、余白のある生活。
”暮らすもの” ”身につけるもの”への愛情にあふれた、
暮らしぶりをのぞかせていただきました。

 
大きくとられた窓から太陽が降り注ぎ、
庭には季節の花々が咲いているびおらさんのお家。
吹き抜けの高い天井が気持ちよく、
古い邸宅をリノベーションした味わいのある一軒家です。
家具や照明、子どものブランケットにいたるまで
一つ一つにストーリーがあり、
生活を慈しむ姿が垣間見えます。
執筆業の傍ら、
青山ファーマーズマーケットにも携わっていたこともあり、
”生産者”や”ものづくり”に深く目を向けています。

 
「このお茶は、日本のお茶をキュレーションしている
「norm」というブランドです。
友人がやっているブランドなのですが、
彼女が巡った数々のお茶の生産現場の中から、
お気に入りの飲み方とともに提案してくれて、
美味しいんです。
同じく友人が自分でハーブを調合している「Verseau(ヴェルソー)」
のハーブティーもよく飲んでいます。
彼女自身が体調を崩したことがきっかけで、
女性の身体について勉強し、
周期や体調に合わせたお茶をつくっています。

 
子どものブランケットは、YURI HIMUROという
テキスタイルデザイナーの作品。
こちらも友人が手がけているのですが、
色使いや柄がかわいくてお気に入りです。
引っ越しをして物を減らしてからは、よりいっそう
物を買うとき慎重に選ぶようになりました。
友人が携わっていたり、
ストーリーが見えて好きだ!と感じられるもの
ばかりが増えてきましたね。
また、使い終えてから”物がたどる道”も
よく考えるようになりました。
今は、コロナの状況もあってオンラインショップが盛んなので、
気になったものは取り寄せられるのもいいですよね」

もともと、ファッション誌で編集をしていたびおらさん。
当時は個性を表現したり印象を刻んだりすることが
おしゃれの楽しみで、柄物や派手な色も着ていたそうですが、
次第に「服選び」が変わってきたと話します。

「立ち回り方や考え方が変わったのか、
今では”相手に心地よくなってもらえるか”を
重視して服を選んでいます。
どんな相手と会うのか、自分はどうありたいのか。
一方で、ベーシックなアイテムを使ったフレンチシックなスタイルが
好きなのは、ずっと変わりません。
10年以上愛用しているTシャツやワイドパンツもあります。

装う色の選び方にも変化があり、
誌面など、ビジュアルを作る仕事を始めてから、
視界を邪魔しないベーシックな色を着るようになりました。
子どもが生まれてからは、
ブルー系やグリーン系など自然を想起させるような色も。
彼らの視点に立つと、私のきているものが視界を占める割合が
かなり大きいと思い、意識するようになりました」

びおらさんがアールデコドレスと組み合わせてくれたのも、
AURALEEの綺麗なワイドパンツです。

 
「甘いドレスの雰囲気を、
私がデイリーに着る装いのバランスにしたくて、
ワイドパンツにPETIT BATEAUのコットンTシャツで
ヘルシーな感じにしてみました。

日頃子どもと過ごすことが多い私でも
取り入れやすい柄。
緑豊かな季節に、mitosaya薬草園蒸留所に
訪れたことがあるので、あそこで出会った植物たちが
宿されていると思うと心が踊ります。
肌馴染みのいいグレーにさりげなくピンクが配されていて、
インナーの色みも選ばず、
いろんなアイテムと相性がいいと思いました。
チェストフラップの立体的なフォルムと、
少し光沢のある軽い生地がいい塩梅で華やかにしてくれますね。
これからの季節は首元を見せてアクセサリーをしたり、
冬はタートルネックのニットやカットソーを
中に合わせてもいいですね」

 
「手編みのニットは野暮ったい印象になりがちですが、
これは愛らしい編み目でありながらモダンな印象です。
きっと、適度なゆとりのあるラインのおかげ。
モードなアイテムとも相性抜群だと思いました」

子ども服を選ぶときは、
大人の服を選ぶときとはちょっと違う視点になると言います。

「子ども服の小さな布面積だからこそ
楽しめる”柄”がありますよね。
ドットでも、大人が着るドットとはちょっと違う。
小さな身体だからこそ、細かいディティールや、
パキッとした柄も似合うと思うんです。

あとは、肌触りも気になります。
子どもの肌はかぶれやすいので、
肌触りがいいものや綿素材を選ぶように。
Amibariは綿素材で、気持ちいい肌触りだし、
洗濯機で洗えるのもポイントですね」

 
ふたりの子どもを育てながら、
合間に書き物、家事や食事の準備、読み物など
ポッドキャストなどもうまく活用して、
自分時間を作っていたというびおらさん。
広くなったお家には、
久しぶりに自分のデスクを置いたそうです。

「空間にも生活にもすこしゆとりができて、
自分のエネルギーをどこに向けようか考えたときに、
家族の時間はもちろん、自分自身のことも
より大切にしたいと考えるようになりました。
子どもたちには、何事においても
自由であってほしいと思っているのですが
母親の私が自由を体現していないと、
彼らも自由になれないと思うんです。
これからは、日頃の生活や仕事を通して
これまでやってみたかったことに挑戦していこうと
準備しているところです。
生活と頭を切り替えるためにも、
自分のデスクを新調しました。
幅広の天板を選んで、左半分では書き物と読み物、
右半分にはミシンを置いてソーイングも。
創作できる時間が増えて、これからが楽しみです」
わたしの手づくり

 
昨年末になくなった父方の祖母が
大の編み物好きでした。
(写真左)は「いつか孫娘に」と前々から
編んでくれていた透かし編みのカーディガン。
20代前半でもらった時にくらべて、
最近ようやく似合うようになってきました。
ヴィンテージの時計を合わせたり、
子育て中にサッと羽織ったり、
祖母が暮らした時代を
一緒に過ごすような気持ちになります。
青いニットのベストと帽子は
息子が生まれた時に編んでくれたもの。
今は娘が着ています。

 
ほかにも、わが家の女性陣は手芸が大好き。
母方の祖母はソーイングが好きで、
小さな頃はサマーワンピースを何枚も仕立ててもらいました。
叔母はパリでジャーナリストをしながらオーダーで、
服やマスクをつくっています。
私も自宅時間が増え、手芸熱が再熱。
ミシンを新調してソーイングを始めたり、
KARIN CARLANDERさんという
デンマークの編み物作家さんのキットを編んでいます。

(つづきます。)

2021-04-13-TUE