「えつこミュウゼ大誕生展」のTシャツは、
「作品」なので、元の絵を忠実に再現すべく、
もーのすごく手間がかかっています。
言葉にすると、
「シルクスクリーンを最大11版って、
なかなかないですよ」
「正直、入稿データを見て、現場の人間が泣いていました」
泣く? 大の大人を泣かせた?
もちろんミュウゼに、悪気はありません。
「どれだけすごいか」というところを、
見学させていただくべく、
群馬県にある「ユー・コーポレーション」さんの工場へ
おじゃましました。
ほぼ日がいつもお世話になっている
パタンナー金子さん曰く
「日本の中でも、こんなにきれいな工場って、
なかなかないですよ」
だそうで、とても清潔な工場です。
広い工場の中に、ひたすらTシャツがセットされています。
これに、手で一枚一枚刷っていくんですよ。
では、さっそく、工場見学ツアースタート!
まず、Tシャツに刷るための
シルクスクリーンの版を、作ります。
版というのは、こういうものです。
まず元絵を、パソコン上で、
色分解する作業から始まります。
この作業は、パソコンの力ではなく、
ひとの目と、経験値で、色を分析し、
色数を決定したものを、パソコンデータにします。
この作業の担当・平出さんは、この道10年のベテラン。
独学で学んだそうです。
冒頭で「現場の人間が泣きました」の張本人です。
第一工程で、もう、泣きが入ったそうですよ。
すみません。
この色をもとに、ひとの目で、調合され、
インクが作られます。
分解された色ごとに、版の元になるフィルムを作ります。
フィルムを印刷するための、
版用のスクリーンをアルミ枠に貼ります。
スクリーンにフィルムの柄を感光させて焼き付けます。
できたスクリーンを水現像といって、水でよく洗う。
すると、柄の部分だけ、インクが通るようになる。
よく洗ったあとには、乾燥させて、
余計なゴミがついていないか、チェックして修正をします。
1柄で11版のものだと、このスクリーンが11枚必要。
というわけですね。
いよいよシルクスクリーンを使って、
Tシャツに刷られます。
いつも、サンプル担当をされている、桜井さん。
すべての製品のサンプルを、やられるそうなので、
ここで刷られる製品は、
桜井さんの手を通らないことはないでしょう。
無地のTシャツの横に
見本として紙の出力を置いて、
これから刷るTシャツの最終型を確認しながら、
作業をします。
では実際に「ひつじ犬」ができるところをご覧ください。
「ひつじ犬」の1版目。
インクの色は、少し生成っぽい、白のようです。
手前でインクをよく練ってから、
2往復で、ササッと仕上げます。
どんどん刷ります。
全部刷り終わったら、乾燥機を往復させて。
「ひつじ犬」の2版目。
今度はすこしグレーがかった色のインクで、
「ひつじ犬」の黒っぽい部分を刷るようです。
あの黒い部分は、ただの黒1色じゃないんです‥‥。
まだらな感じに刷っています。げ、芸が細かい!
「ひつじ犬」の3版目。
おっと、やっと黒が出てきましたよ。
ジャーン!
かなり、最終型に近づいてきました。
「ひつじ犬」の4版目。
ここで、意外や意外。黄土色が入ってくるようです。
これは、絵の下描きだった部分の、ラインでした。
なんだか、もうしわけなくなってきます。
「ひつじ犬」の5版目。
なんと、まだあるんです。
大事な目の部分。
さらに、「ひつじ犬」6版目。
もう、終わりでしょう、と思ったいたら、まだでした。
ほんと、すみません。
「ひつじ犬」7版目。
おもに輪郭線となる版を刷って。
これで完成か!
ここに最後の1版、
品質表示部分を刷って出来上がりです。
全10版です。
ほんとうにすみません、としか言いようがないです。
絵を描いたのは、このひとなんです!
このひとのせいです!
本人は、悪びれず素敵な仕上がりにご満悦。
もうひとつご紹介しましょう。
「いっぱいいる」
いかにもたいへんそうなものを。
この作品は、全11版です。
絵をTシャツのいろいろなところに散りばめているので、
刷りづらい場所にも、きれいに刷らなければなりません。
できるだけ段差がなくなるように、襟ぐりに、
布を入れたりと、手間がかかります。
さっそく「いっぱいいる」1版目。
ピンク色を刷ります。
襟ぐりの横は段差があるので、
気合いが必要みたいです。
グリーン、ブルー。
どんどん刷っていきます。
この状態だと、わかりづらいのですが。
これから重要な、黒い枠の部分を刷ります。
これで、ズレてしまわないように、気をつけながら、
プロのテクニックで、一気に!
この、輪郭部分が一番緊張されるそうです。
ミュウゼ感激!
刷り終わったら、インクを定着させるために
120度の紫外線の中を、2分ほどくぐらせます。
できあがったTシャツは、移動をして
専門業者さんで洗われて、軽くプレスをかけます。
これでやっと完成したと思いきや、
最後の最後には、えつこミュウゼご本人が、
一枚一枚に、サインを入れることになりました。
アート作品に、サインはつきもの。
これで、より、作品らしさが出ます。
あなたのための、あなただけの1枚は、
このようにして、つくられます。
どうぞ、末永くおたのしみください。 |