ほぼ日の水沢ダウン2016秋の抽選販売ほぼ日の水沢ダウン2016秋の抽選販売

水沢ダウンユーザーに訊く① ほぼ日刊イトイ新聞主宰 糸井 重里

水沢ダウンの高い技術水準の上に、
三國さんの世界観が花開いた。

2012年の50着からはじまり、昨年2014年には500着。
わたしたちが販売した「ほぼ日の水沢ダウン」の数です。
いずれも、せいいっぱいの数だったのですが、
予想をはるかに超えて、大きな反響がありました。
この商品の魅力は、いったいなんなのか。
もとからのユーザーだった糸井重里に語ってもらいました。※以下の記事は、2012年と2013年に行われた
インタビューをもとに、再構成したものです

強力にあったかくて、
着ていてすごくラク

もともとは、デパートに帽子を買いに行ったんです。
気仙沼は寒いし、雪も雨もふるし、
船に乗ったりもするだろうし、必要だと思ってね。
そこは防寒具の売り場だったんだけど、
当然ダウンも売ってるわけ。
見てるうちに、信用できるあったかいのを、
ひとつ新調しようかなあっていう気になって、
「どれがいちばんすごいの?」って
お店のひとに訊いたら、これが出てきたんです。

△糸井重里所有の水沢ダウン

まず東京で着てみたら、もう強力にあったかい。
おまけに着ていて、すごくラク。
かるいだけじゃなくて、動きやすいんです。
ほら、全体にいっぱいダウンが入った感じのやつは、
雪だるまっぽくなっちゃうじゃない?
これはスリムなんですよ。
だから、街着として使い勝手がいい。
こりゃいいと思って気仙沼に持っていって着てみたら、
いままでの「これを着ていればだいじょうぶ」っていう
レベルの、さらに一段上だった。
ずっと「オレ、ぜんぜん寒くないよ」って言ってたんで、
みんなにうらやましがられたんですよ。
防水バリバリだから、雪も雨も平気だしね。
うん、水が入ってこないのは、ありがたかったなあ。
急にみぞれになったときとか、
染みちゃったらおしまいだもんね。
そういうことがあるから、
ダウンは着ないっていうひともいるくらいだから。
それからさ、ごはん食べるときとかに、
脱いでそばに置くじゃない?
そのときの量感がすくないわけよ。
リュックとかに、実は入っちゃう。
いいかい、ちょっとやってみるよ。
がさがさがさがさ。
(水沢ダウンをちいさくたたんでいる)

ほら、ここまでちいさくなるんだよ。
おどろくでしょう?
気仙沼に行くときはよく、
水沢ダウンでパソコンをつつんで荷物に入れて、
現地で着るっていうふうに使ってます。

「made in JAPAN」の
すごみが伝わってくる

考えてみたら、ぼくは防寒については歴史が長くて、
ほら、釣りをするじゃない?
何が実用的で、何がそうじゃないか、
どれがあったかくて、どれがあったかくないかについて、
すごく真剣にチェックしてきたんですよ。
真冬の釣りのときに何を着るかって、大問題なわけ。
それこそ雪もあるしね。
ちなみにいままでの「いちばんあったかいもの」は、
国産の、ダウンじゃない、フードつきのツナギ。
真冬、ボートで走ってるときでもへっちゃらで、
これ持ってるかどうかで、冬の釣りは、すごく差がつく。

「どっちがあったかいかコンテスト」をやったら、
国産はダメだとみんな思ってるかもしれないけど、
そんなことないっていうことは、
そういう経験を通して、感じてたんです。
ブランド志向になりすぎていなかったんで、
水沢ダウンをえらべたのかも知れないね。
海外のブランドに負けてない、
「made in JAPAN」のすごみが伝わってくるし、
震災のあった東北発のものだし、
なんか、いまうれしい感じが全部入ってるんで、
ぼくとしては、このよさを
ぜひわかってほしいっていう気持ちがあります。

水沢ダウンの高い技術水準の上に、
三國さんの世界観が花開いた。

「ほぼ日の水沢ダウン」にこれだけ反響があったのは、
水沢ダウンと三國万里子さんの世界観が、
みごとにフィットしたっていうのが大きいんじゃないかな。
ダウンジャケットって、どっちかっていうと、
実用のものじゃないですか。
それが、三國さんのニット柄でおしゃれなものになって、
あったかい雰囲気になった。
それが、よかったんじゃないかと思います。

水沢ダウンは、いい製品をつくるための
すばらしい条件がそこにあって、
たまたま市場とのつながりが弱かった
というケースですよね。
つまり、昔からの、ダウンを詰めるのと防水加工とを、
高水準で両方できる工場があって、
そこで働く、職人芸に近いような技術をもつ人たちがいた。
あれはもう、手づくりに近い、職人さんの世界ですよね?
そういう人たちが、あの工場にはいた。
中国やベトナムで、仕様書を出してつくれって言っても、
絶対にできないですよね。
いい土地に、いい作物が育つのといっしょで、
あの水沢っていう場所にそれがあったおかげで、
「買ってお得」なものをつくれたんじゃないですかね。
そういうものに、三國さんの世界観を
接ぎ木できて、花が開いたっていうのが、
ぼくらがそれなりに手伝えたことなんじゃないかな。

「ほんとにいい」ときは、
なぜか通じる。

あとはなんだろう、たぶん、
「これは、ほんとにいい」っていうときは、
なんか‥‥通じるんだよね。
「ほぼ日」のみんなも経験あると思うんだけど、
ことばとかビジュアルって、後押しにはなるけど、
それは、ほんとうの力とはちがうんだよな。
こねくりまわしたり、
ひねくりまわしたりしたものじゃない、
ほんとうに「これはほしい!」っていうものは、
ただそこにあるだけで、
なぜかちゃんと伝わるものがあるんです。
ぼくが気仙沼に着て行って、みんながうらやましがった、
っていうようなエピソードは後押しにしかすぎなくて、
実際には商品そのものに、
「なんだこれは?」って言われるような
マジックがあったんだろうねえ。
あとは、出会ってもらえる「場」が必要だっただけ。
それが、「ほぼ日」でできました
っていうことだろうなぁ。