PROOF OF GUILDは
職人の竹内稔さんが主宰する名古屋のアトリエ兼ショップ。
お客さんと相談しながら何ヶ月もかけてつくりあげてゆく
オーダーメイドジュエリーのお店からスタートして、
ブライダルジュエリーの仕事をしています。
いまはその仕事と並行して、
どうぶつをモチーフにした真鍮のアクセサリーや
雑貨、磁器、さらにバッグなどの
布製品へと、世界をひろげています。
今回ほぼ日でご紹介することになった、
カッコよくて使いやすいバッグのことを、
名古屋市内の、小高い丘の上にある
一軒家のアトリエで、竹内さんと、
中尾光さんのおふたりからお話を聞きました。
>PROOF OF GUILDのプロフィール
ずっと、バッグが作りたかった。
▲PROOF OF GUILD、竹内稔さん。
- ――
- バッグを作るきっかけは何だったんですか?
- 竹内
- 僕、ジュエリーの仕事を志す前、
高校生の頃なんですけど、
学校に行くためのバッグとかリュックとか、
革小物というか、そういうものを自作で、
自分で叩いて縫って作ってたんです。
- ――
- へえ、高校生の頃に。
- 竹内
- はい。で、そのパーツとか金具を作りたくて、
門を叩いたのがジュエリーの工房だったんです。
- ――
- なるほど。バッグのほうが原点なんですね。
- 竹内
- そうです。そうだったんです。
寸胴のバッグを作ってました。
で、そのジュエリーの工房で、
金具ってやっぱり、寸法通りに削って作れないと、
機能しないんですよね。
それでまず、金具より自由に作れる指輪とかで
練習しましょうっていうことになったんです。
で、指輪を作ったら、これは面白いぞ、と。
それで、ジュエリーが仕事になったんです。
ただ、ジュエリー以外のものづくりも
いつか手掛けたいな、ってずっと思ってました。
10年くらいジュエリーの仕事をしてきて、
そこから派生したものもいくつか、
真鍮のキーリングのようなアクセサリーとか
磁器、雑貨などもやってきたんですけれど、
お店をここに移転したときに、
誰かいい人いないだろうかって知り合いに相談して、
紹介してもらったのが中尾だったんですよ。
彼はバッグのメーカーで働いていたこともあるので、
そういうものができたらいいねっていうので、
プロジェクトが始まったんです。
- 中尾
- そうなんです。
それはちょっと感動的というか、自分の中では。
竹内の、ジュエリーを作るようになった経緯、
初めて会ったときに聞かせてもらって、
そのとき、すごく嬉しかったのを覚えてます。
- 竹内
- (笑)。
▲PROOF OF GUILD、中尾光さん。
- ――
- おふたりがコンビを組んだのがいつごろですか?
- 中尾
- 2014年の春ですね。
で、バッグを発表したのが15年の冬です。
いいバッグのイメージを出し合って。
- ――
- 一番最初のバッグはどんなものなんですか。
- 中尾
- あ、ちょうど今見ていただいてる、これですね。
- ――
- じゃあ竹内さんは、
高校生の頃からバッグを作りたいと思っていて、
ようやくそういう相棒に出会って、
これ、理想の結晶みたいなことじゃないですか。
今まで考えていたことが全部ここに出てるみたいな。
- 竹内
- そうですね。
- 中尾
- いいバッグのイメージっていうのは、
竹内も僕も、なんとなく温めていたものがあって、
そういう話をやりとりしながら、
できていった感じです。
- ――
- どんなふうにできあがっていったんですか。
- 中尾
- 素材がまず先に見つかったんですよね。
バッグを作るなら、素材は何にしようか考えていたとき。
- 竹内
- コンバーチブルの車、オープンカーの幌、みたいな、
しっかりした。雨にも濡れても強そうな。
- 中尾
- そういうものがいいねっていうので探していたら、
ちょっと紹介していただく機会があったんですよね。
- 竹内
- それが即決に近かったんです。
あ、こういうのがいい、って。
- ――
- ほんとに幌になるような布なんですか?
- 中尾
- これ、帆布なんですよ。
これはこのバッグ用に加工してありますから、
このまま幌になるものではないんですけれど、
もともとの素材は、幌にも使われるようなものですね。
- ――
- あ、帆布。帆布なんですね、元が。
- 中尾
- そうですね。これはポリ塩化ビニール加工です。
PⅤC、ポリ塩化ビニールのシートを貼り付ける。
貼って、貼っただけだとツルツルなので、
目出しって言って、帆布の質感が出るまでこう……。
- 竹内
- 吸着するんです。
- 中尾
- だから実際は片面PVCのシートなんですけど、
帆布のような質感に見えるんです。
- ――
- すごい手間。バッグの内側は帆布ですか?
- 中尾
- 外側はPVC加工を施した帆布で、
内側は加工していない綿帆布の二重構造になってます。
ふつうに見えて、とくべつな金具。
- 竹内
- 僕、出張でよく東京に行ってたんですよね。
それで、もっと大きいバッグが欲しかった。
ジュエリーと着替え入れて、一泊ぐらいの量が入る、
大きなのが欲しいなって思ってるんだ、って話してね。
このサイズ感がスタートだったんですね。
- 中尾
- そう。大きい方のこの形が決まりましたね。
- 竹内
- これぐらいのサイズ感で、出し入れがしやすくて。
- 中尾
- 荷物がね、いっつもすごく多いんで。
ざっくりと出し入れできるように。
それで金具は、竹内が、任せてくれみたいなことで。
- 竹内
- うん、そうなんです。
- 中尾
- こういうのをやりたいと思ってたんだな、
みたいなところが、わかりました。はい。
やっぱり金具がオリジナルでできると、
ほんとに最後、うまくまとまるんだな、って
これを作ったときに思いました。
- ――
- ファスナーの引き手や、ベルト調整の金具、
ボタンは、オリジナルなんですよね。
- 中尾
- ファスナーの引き手は、ジュエリーの、
ネックレスのだるま金具を大きくした形なんです。
背景が伝わるモチーフになったかな、と思います。
- 竹内
- 金具の造形を、あんまり出したくなかったんですよね。
どっちかっていうとちゃんとパーツのような。
でもちょっと違うっていうふうなものにしたくて。
パーツが作家ものなんだよみたいな雰囲気は出したくない。
- ――
- 個性ではなく、既製のものであるかのような。
- 竹内
- はい。極力、既製のもののように。
一体感がでるような感じにしたいんです。
でも実際は、三次元なつくりの、
鋳造でなくてはできない作り方をしています。
簡単な金具って、たい焼き方式で作って
半分で割れるようなものなんですけれど、
これはそういうのとはまったく違っていて、
ジュエリーを作る鋳造の方法で作っています。
鋳造って、ロウの原型をもとに石膏の型を作って、
その型に金属を流し込んで…、っていう、
けっこう手間のかかることをするんです。
普通に見えても、ジュエリーならではの技法なんですよ。
- 中尾
- ボタンも、縫製品シリーズのアイコンになればいいな、
っていう気持ちもあるんです。
ブランドロゴの代わりになるような。
- 竹内
- このボタンの付け方、学ランのボタンなんですよ。
パチンって外せる、あの学ラン方式。
この生地は縫うのがすごく大変で、
初め、試しに縫い付けてみたんですけど、
なんか、糸の質感がすごくほっこりしちゃうんですよ。
それで僕が思いついたのが、これ。
- 中尾
- そう、最初はそういう試行錯誤もしましたね。
オーバルと2WAYで使いやすく。
- ――
- 底がオーバルって、使ってみるとすごくいいですね。
収納力もあるし。
- 中尾
- オーバルっていうのはけっこうポイントです。
- 竹内
- かなりたくさん入りますしね。
角がないから、破けないのもいいですし。
- 中尾
- 角から穴が開いちゃうことってあると思いますけど
これはそういう話は聞かないですね。
それから、体にフィットする感じがあったり、
電車なんかで隣の人に当たらないのもオーバルだから。
- ――
- ショルダーと手持ちと2WAYですね。
これも荷物の多い出張を考えて、ですか?
- 竹内
- そうですね、それはありました。
ずーっと肩にかけてると、痛くなってきますから、
手持ちのハンドルも欲しいな、と思いますよね。
- 中尾
- 使いやすいかたちを考えると、2WAY、
っていう考えは、まとまってましたよね。
電車に乗ったときに、とっさにこう、
手提げに変えられるのも便利なんですよ。
- ――
- ポケットも内側に二つ。大きいのと小っちゃいの。
※このポケットのくだりはラージサイズのみ対応しています。
そうわかる様にしたいです。
ファスナー付きと。
ラージサイズの大きいポケットには、パソコンが、
13インチのラップトップが入るんです。
すっぽり入ります。
だからiPadなどのタブレット類は余裕で入っちゃいます。
一枚に見えるんですけど、中にもう一枚かませて、
コシを出していますから、強度もあります。
- ――
- ほかにもポイントがありそうですね。
- 中尾
- PVC加工をした生地は、切りっぱなしができるので、
形をすっきり作っていけるんですよ。
帆布の面とは風合いが異なるので、
部分的にチラッと見えるような表裏を活かしたデザインにしたり。
ハンドルやショルダーのところがそうです。
手が触れるほうはなめらかなシート面にしてあるので、
持った感じやお手入れもしやすくていいと思います。
- ――
- 置いたときに自立するのもいいですね。
かごみたいで、部屋にあってもいい。
- 中尾
- そうですね。
立った姿もけっこうかわいいと思います。
使って使って、いい風合いに。
- ――
- 今回ご紹介するのは2種類、
黒ともう一つ、リネンのバッグですね。
- 中尾
- うん、そうですね。リネン。
平織のリネンに、加工は黒の帆布と同じように
PⅤCのシート、それに目出しで布の雰囲気を出しています。
リネンの色は明るいので、
春夏とか、時期を選ぶものになりやすいんですけれど、
テストで作ってみたら、深くて良い色味になったんです。
かつ、質感とかこの霜降りの感じも出てきたので、
面白い生地ができたかなと思って、作ってみました。
- 竹内
- 年中いけそうな雰囲気になったんです。
今後もこのリネンのように、
いいなと思えるのがあれば試してみたい。
でもその中でやっぱり、黒はずっと
定番でやっていこうっていう思いがあります。
- 中尾
- 生地はどちらもオリジナルの加工を施して作っています。
元々は帆布もリネンも既製のものですけど、
PVC加工の調整は特注でお願いしています。
それがいろいろ大変なんですよ。
- 竹内
- PVC加工を入れると、仕上がりが厚くなったり、固くなるので、
あったかい時期はいいけれど冬は縫えない、
っていうような問題が出てきたりして。
じゃあ加工前の生地の厚みはこれぐらいで、
PⅤCのシートの厚みもどれぐらいで、あと張り感をどれぐらいで、
っていうバランスと、縫えるか、縫えないか。
でもこちらとしては、これぐらいの厚みがほしい。
じゃ、帆布の糊を外そうか、とか、いろんなテストをしながら。
- 中尾
- そのために元の生地も選び直したりとか。
- 竹内
- リネンは、追加で作ろうと思ったときに、
おんなじ生地がなくって。
反物ごとにちょっと違うんですよね。
- 中尾
- 同じ仕様でも、作ったタイミングによって
色味が変わってくるんですね。
- 竹内
- このときはすごくいい色ができたんです。
- 中尾
- 真鍮との色の相性がいいんですよね。このリネンは。
- 竹内
- このリネンは、多少使って経年感が出ても、
くたびれた感じではなくて、いい雰囲気になる。
そんなふうに感じられる素材選びっていうのは
かなり意識はしてるつもりです。
- 中尾
- 秋冬の服ってどうしても暗めになるので、
これをサッと持っていただくと、差し色に。
- 竹内
- 黒いのはもう、持つ人も、場面も選びませんね。
男性でも女性でも。
お仕事でも、学生さんでも似合うと思います。
いい感じのバッグになったなあって、ほんとに。
- 中尾
- おっきいバッグはかっこいいですよね。
- ――
- おふたりのお気に入りのポイントは?
- 竹内
- 僕が、実際に使っていていいなと思うのは、
肩にかけたときに、おにぎり型になる、
この感じがすごく気に入ってるんです。
使い込んでいくと、布がこなれて。
- ――
- 風合いが育って、いい味が出る。
革みたいな感じになるんですよね。
- 中尾
- 黒は、特にそうですね。
- ――
- でも革のバッグでこの大きさだと、重いですよね。
- 中尾
- そうなんです。
でもこれは布ですし、1キロないんです。
ラージサイズでも850グラム、
ミディアムは600グラムしかないんですよね。
- 竹内
- あと汚れが、黒は特に汚れが目立たないので、
そういう使いやすさもあると思います。
- 中尾
- 僕が気に入っているのは、
真鍮と生地、どちらも風合いの変化があることですね。
使っていけばだんだん、好きな感じになっていく、
それを楽しんでいただくのがおすすめです。
- ――
- 使い込んでいきたい、いい道具の風情がありますね。
ありがとうございました。
(おわり)
2022-07-28-THU
撮影 | 神ノ川智早(モデル) 大江弘之(アイテム) |
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モデル | 坂巻弓華 |
スタイリング | 髙品逸実 |
ヘアメイク | 成田祥子 |
ロケ地 | PROOF OF GUILD |