「ほぼ日のいい扇子2014」ができるまでのことを、
扇子チームで振り返りました。
メンバーはチナ山下ゆーないととやまの4人。
思い入れがあふれ、長い読みものになりました。
お時間があるときにお読みください。
デザインしてくださった作家さんたちや、
前向きに取り組んでくださった
扇子メーカーさんの想いが伝わるといいな、と思います。

山下 (資料を読みつつ)
‥‥あらためて、ありがたいですね。
チナ (資料を読みつつ)
はい、すでに目を通したアンケートですが、
みなさんすごくていねいに答えてくださって。
ゆーないと (資料を読みつつ)
「扇子についてのアンケート」
やってよかったですね。
とやま (写真を撮りつつ)
よかったですー。
山下 そもそも、なぜアンケートを実施したのか、
おぼえてますか?
ゆーないと もちろん。
チナ 実際に使ってるかたの声をちゃんと聞きたかった。
ゆーないと みんなが使ってるシーンのイメージを持ちたかった。
とやま 1000を超える方々がアンケートに参加してくれて、
まずはそれにびっくりしました。
山下 ありがたいことです。
このアンケート、ぼくの印象としては、
「おしゃれ」と書かれた解答が多かったような‥‥?
ゆーないと そうそう、多かった。
「ほぼ日の扇子のいいところは?」
「周りからの評判は?」
という質問に対して「おしゃれ」という解答。
チナ 「デザインがいい」っていうのも。
とやま 「自慢できます」とか、
「誇らしい気持ちに」っていう感想も。
チナ ありがたいですよね。
そう思ってもらえたのはやっぱり、
他にはないデザインだったからだと思うんです。
つまり、作家さんたちと、
ほぼ日の扇子を作ってくれている
京都の『山二』さんのおかげだなぁ、と。
ゆーないと ほんと、そうだわ。
チナ このアンケート結果は、
『山二』さんにも読んでいただきました。
山下 あ、そうなんだ。
とやま 『山二』さん、うれしいですよね。
チナ たぶん、よろこんでくださったと思います。
山下 3年前、はじめてご一緒したときと、
『山二』さんとの関係はだいぶ変わった?
チナ 変わりました、とても。
4年目ということもありますが、
今回の、このアンケートは大きかったと思います。
これを読んだことで
「他にない扇子を作ることの価値」を
すごく共有してくださって、
わたしたちの難しい注文にも応えようと
より頑張ってくださるようになった気がします。
ゆーないと ‥‥すばらしい。

山下 その一方で、
「ほぼ日の扇子を持っていない」というかたの
アンケートも、参考になりました。
チナ はい。
山下 「使うのが照れくさい」
という答えもありましたよね。
「扇子は使うのがちょっと恥ずかしいです」
チナ 正直に答えていただいて。
山下 その恥ずかしさ、
TPOによっては、たしかにありますよね。
ゆーないと ある、ある。
とやま あと、「普段、扇子を使うシーンは?」
っていう質問への答えも、おもしろかったです。
ゆーないと 「待ってる場面」が多かったでしょ。
とやま そうそうそう!
チナ 駅のホーム、バス停、信号待ちの横断歩道、
コンサートの開演待ちのとき扇子を使う‥‥。
山下 そこがポイントで、
使うシーンはやっぱり、
「移動中」、「外(そと)」なんですよね。
とやま そうですね。
山下 で、移動中に使うっていうことは、
必然的に「人に見られる」わけで‥‥。
そうです‥‥恥ずかしくない扇子が、いい。
ゆーないと うん。
おしゃれなら、かわいければ、人前で出せる。
チナ 出せるどころか、どんどん出してほしい。
とやま もっと扇子を持ち歩いてほしい!
山下 それを本気で伝えよう! というのが、
2014年の扇子の最初のテーマでした。
ゆーないと ちなみに、このアンケートを実施した9月には、
すでに翌年の扇子デザインを
各作家さんにお願いしていました。
チナ 8月末にはご依頼しています。
10月にデザインを完成してないといけないので。
ゆーないと つまり扇子というものは、
夏の真っ盛りにもう、
翌年のデザインをはじめているのです。
山下 というわけで、
ここからはもう具体的にいきます。
2014年のデザインをどうやって決めていったか、
ひとつずつ振り返りましょう。
まずは、ひびのこづえさんのデザインから。
チナ 「くもの宝石」です。
山下 ひびのさんは「ほぼ日のいい扇子」を
企画の元年から手がけてくださっています。
ゆーないと 今年で4回目ですね。
チナ 2014年もすばらしい扇子ができたと思います。
山下 作家さんとのやりとりは
主に、ちなちゃん(コウノの名前)の役割りなんだけど、
ひびのさんとのお仕事はどうでしたか?
チナ 毎回、すごく勉強になります。
とくにひびのさんは、
骨の形と骨の色に関して、
毎年、細かくご指示をくださるんです。
扇子の竹は、染められるんですが、
かなり特殊な色をご指定されます。
山下 特殊というのは?
チナ まず、染められない色です。
ゆーないと ああーー。
チナ 最初の年、「山二」さんに色指定を出したときは、
「こんなん無理ですわ」というお返事で。
とやま ほえ~~~。
チナ でもひびのさんは、
「多少は色が転んでもいいから、
 その色に向かって全力でやってみてほしい」と。
ゆーないと 「色がころぶ」というのは、
ちょっと違う色になってしまうことです。
チナ で、全力でやってくださった仕上がりを見て、
「あ、この色でも案外いいじゃない?」と。
ゆーないと こづえさんのその感じ、
ハラマキのときといっしょです。
「再現できない細かい柄ということはわかってます。
 柄がつぶれちゃっても構わないので、
 まずはできる限りやってみてください」
という。
山下 ひびのさんは、
自分がデザインしたものが
すこし変化することをたのしんでらっしゃるような。
ゆーないと そう、そうなんです。
チナ その「できる限りやってみる」というあんばいが、
山二さんと、ひびのさんのあいだで、
今年はツーカーになってきたんですよ。
ゆーないと へええーーー。
チナ あとはそう、今回の扇子は
全体が「くもの巣」という見立てなので、
「扇子の骨はできるだけ細く、華奢に」
というご指定がありました。
とやま それはすごく、おっしゃってましたよね。
チナ 強度との兼ね合いで、できる限り細く。
山下 なるほど。
‥‥あとはその、ビーズの飾り。
ぼくらは扇子につける飾りを
「チャーム」と呼んでますが、
そのチャームはすごいですね。
とやま かわいい‥‥。
チナ かわいいでしょお。
扇子の中に、くもはいなくて、
下に糸でぶらさがってるイメージなんです。
ゆーないと かわいいけど‥‥つくるのはたいへん。
チナ ええ。ぜんぶ手作りなので。
ゆーないと そうでした。
山下 名作、ですよね。
なかなか、他では実現できないことだと思います。
チナ あとひとつ、
今回、個人的にすごくうれしかったことを。
去年の5月くらいの段階で、
こちらからご依頼をする前に、ひびのさんから、
「次の扇子を作るときは、
 こういう方法で色確認をしませんか」
というご連絡をいただいたんです。
山下 おおー、前向きに考えてくださっていた。
チナ そうなんです!
それがすごくうれしくて‥‥。
山下 ありがたいですね。
もう‥‥さっきからずっと、感謝しかないです。
とやま そうですね、ほんとにそうですね。
山下 うん。
‥‥感謝しながら進めましょう。
こちらの扇子、
「APPARE」をデザインしてくださったのは‥‥
とやま 鈴木啓太さん!
ゆーないと 今回のテーマ、
「ジャパネスク」をストレートに表わしてます。
山下 鈴木啓太さんとは、
メールで知り合ったんですよね。
チナ そう。鈴木さんが「ほぼ日」に
「何かいっしょに」
というメールをくださったのが最初でした。
ゆーないと 「富士山グラス」とか「虹色風鈴」を知ってたので、
あれをデザインした人だーー! って。
山下 さっそくお会いして、
扇子のデザインをお願いしたのが去年の8月。
チナ すぐに最初のアイデアを
プレゼンテーションしてくださって。
ゆーないと かっこよかったー。
山下 いちばん最初のアイデアも
富士山がモチーフだったんです。
それが、びっくりするようなデザインで。
ゆーないと あれは画期的でした。
チナ ただ、画期的すぎて、
作ることが不可能だったんです。
山下 さすがの「山二」さんでも無理だった。
チナ そしたら鈴木さん、
「製造の現場を見ておきたい」と。
とやま わざわざ京都まで行ってくださったんですよね。
チナ 最初にやりたかったデザインが
「技術的に無理です」となったことが
やっぱり残念だったようで、
次のデザインを考えるにあたっては、
どこまでができることなのか、
作り方の仕組みを知っておきたい、と。
それによって
自分のデザインの幅も広がるだろう、と。
山下 ‥‥また感謝しかないです。
チナ この扇子、扇子の骨と骨のあいだから、
向こう側が見えませんよね。
とやま はい。びっしり扇骨でふさがっています。
チナ これは、紙扇子ではほとんど例のないことなんです。
でも、工程を見ていた鈴木さんは、
「たぶんできるはずだ」と。
そしたら山二さんも、
「前例はないんですが技術的にはできますねぇ‥‥
 やってみましょう」と。
山下 しびれる話ですね。
チナ そのほかにも細かい部分のチューニングで
何度もやりとりをさせていただいて完成した、
「APPARE」という扇子です。
ゆーないと 鈴木啓太さんも「山二」さんも、
どちらも「あっぱれ」なお仕事ですよね。
あと、ちなもあっぱれ。
チナ え!? いやいや、私はそんな‥‥。

それよりも、ふくろ。
扇子のふくろの話をしましょう!
山下 「扇子のトートバッグ」。
これは今回、
最も試行錯誤を繰り返したアイテムでした。
ゆーないと 話し合いましたよね、とことん。
山下 そうなんです。
鈴木啓太さんとの扇子アイテムは、
「ほぼ日」とアイデアのやりとりをしながら
いっしょにつくったものでした。
他の作家さんとも、もちろんやりとりはあるんですが、
鈴木さんとは、なんていうんでしょう‥‥
ほんとにちからを合わせて考えましたよね。
チナ 新鮮な作り方でした。

▲鈴木さんの事務所で打ち合わせ中。煮詰まったりもしたけれど。


▲様々なパターンを試した、試作の山‥‥。
山下 たどりついたのが、この扇子ケース。

ゆーないと 「もっと扇子を持ち歩いてほしい!」
というメッセージを
みごとにカタチに落としこんでくださいました。
とやま ああーー、「持ち歩く感」がすごくでてるー。
山下 ね。
なにしろ、かわいいし。

続けてまいりましょう。
チナ こちらも、初めて「ほぼ日」とご一緒した、
ひがしちかさんの扇子で、「Swan」という名前です。
とやま ひがしちかさんへのインタビューは、
とても好評でしたね。
山下 そう。
このお話を聞いて勇気が出るかたが
世の中にたくさんいらっしゃるだろうと思って
急きょ掲載することにしました。

それはそれといたしまして、
「Swan」のデザインの進行はどんな具合でした?
チナ 最初、まずはこういう絵をいただきました。
ゆーないと 刺繍の指示書きが入ってます。
チナ 「Swan」は刺繍で柄が描かれた扇子なので、
まずはこれを刺繍屋さんに渡して、
機械刺繍をしたんですが‥‥だめで。
とやま だめだった‥‥。
チナ やはり絵だと伝わらないのかもと、
ひがしさんに元の刺繍を作っていただいて、
もう1回、入稿データとして準備しました。
とはいえ機械刺繍には限界を感じていて‥‥。
山下 限界を感じて、どうしたんでしょう。
チナ オール手刺繍にしてしまうと、
とんでもない価格になってしまうし‥‥。
「山二」さんが、
どうやったらひがしさんが思うようにできるか
っていうのを頭を絞って考えてくださったんです。
山下 はあー、追求してくださった。
チナ そうなんです。
で、刺繍屋さんをもう一度さがして、
その刺繍屋さんとの相談で、
「外側の輪郭だけ機械で
 内側の羽の表現は手刺繍でいこう」
ということになりました。
ゆーないと ‥‥それって、ほぼ手刺繍ですよね。
チナ はい。
なので、他の扇子よりも
どうしても製作に時間がかかるんです。

▲試作の刺繍をチェックするひがしちかさん。
山下 あとほら、ここの「Swan」文字。
ぼくはこれ、すごく好きです。

ゆーないと これ、機械? 手彫り?
チナ 機械ですね。レーザーで。
山下 レーザー! ‥‥なんかすごい。
とやま 骨のところも女性的で‥‥。
チナ いいでしょ~?
ゆーないと ここも、鳥の羽をイメージしているような。
チナ そうなんです、すてきなんです。
山下 うっとりしてるちなちゃんが
一瞬で目を覚ますような、
次の扇子をご紹介しましょう。
秋山具義さんの「にゃんす」です。
ゆーないと インパクトあるわー。
山下 あなたのそのお洋服もね。
ゆーないと そう?
チナ アッキーさん(秋山具義さんの愛称)に
扇子のデザインをお願いして、
このデザインがやってきて‥‥
山下 まあ、みんなで唖然としましたよね。
とやま ビックリ。
山下 大の猫好きで知られるゆーないとさんでさえ‥‥
ゆーないと 「アッキーさん、マジか?」と。
山下 マジか?(笑)
ゆーないと 「お洋服のような扇子をお願いします」
って言ったのに。
チナ お伝えしました。
ゆーないと 今回のテーマは、
「もっと扇子を持ち歩いてほしい!」なのに。
チナ そのあたりもお伝えしたと思います。
ゆーないと その上で、これがドーンとやってきて。

山下 すごいなぁ(笑)。
ゆーないと アッキーさん、さすがだな、と。
山下 そうそう、さすがですよね。
つまりまぁ、さっき話した、
「外で使うのがちょっと恥ずかしい」
っていうことをなくすどころか、
逆に「これを見て!」というデザインに。
でも、この振り方はアリなんですよね。
ゆーないと アリ、アリ。
山下 「目立たない」だけを目標にしちゃったら、
ひたすら地味なものを作っていく
っていうことになるわけですからね。
とやま それは退屈ですね。
山下 ちなちゃん、
「にゃんす」の製作で難しかったところは?
チナ それは、耳です。
山下 あー、なるほど。
チナ まずはこの、
コシとハリを出すための素材選びですね。
コシのある布で裁ちっぱなしのって、
フェルトくらいしかないんですよ。
でもアッキーさんは、
「フェルトじゃなくて、
 扇子の布と似たような感じの、薄い布です」と。
とやま うーーん‥‥悩みそう。
チナ 悩みました。
普通の薄い布だと、
耳がタラーンって垂れてきちゃうんですよ。
垂れないようにするには、
耳のサイズをちいさくするしかない。

▲試作品で耳のサイズを検討するアッキーさん。
山下 なるほどねー、ぎりぎり垂れないサイズに。
チナ なおかつ、
アッキーさんと相談しながら決めたんですけど、
この、耳の真ん中に、
ちょっとくぼみをつけると、
垂れにくくなるんじゃないかと。
山下 くぼみ、ありますね。
ネクタイの、えくぼみたいな感じで。
チナ あとは、ズボンのタックみたいな。
山下 はい、はい、はい。
なるほどなーーー。
‥‥これ、耳をずっと触っちゃうね。
ゆーないと わかる(笑)。
山下 愛着が、ぐんぐんわいてきた(笑)。
ゆーないと 急に(笑)。
山下 やっぱりこれ、アリですよね。
いけますよ、普段使い。
ゆーないとさん、ちょっとやってみて。
ゆーないと へ?
山下 なんかこう、「ニャンス」をあおぎながら、
さっそうと街を歩いている感じ。
ゆーないと ‥‥ええと‥‥(立ち上がる)‥‥こう?

山下 そうそう!
一同 (拍手)
チナ アリですね、普段使いにぜんぜんアリ。
山下 すばらしい。

では次にまいりましょう。
すっかりお馴染みのシリーズになりました。
デザーティック・平武朗さんの扇子、
「The Other Side of Marine」です。

ゆーないと 平さんは、3年目の扇子ですが、
名前がぜんぶ同じですよね。
「The Other Side of Marine」。
とやま ずっと一貫して、マリン。
山下 平さんと何度もやりとりを重ねるのは、
もう恒例になりましたが、
直接の担当のチナちゃん、今年はどうでした?
チナ まずは、布探しでした。
ゆーないと 布探し。
チナ 「白と白でボーダーにしたい」
というご希望があったので、探しました。
白と白のストライプって、
シャツの生地くらいしかないんです。
しかも、そんなに種類はない。
平さんのイメージにぴったりなのがなかなかなくて、
いくつもサンプルを取り寄せて、
ようやく「これかな」と言っていただいたのが、
この生地でした。

山下 これに決まるまでに、何日くらいかかったんですか?
チナ ええと‥‥2、3ヶ月。
とやま ああ‥‥そのくらいかかるんですね。
チナ 他の作業も平行してやってたので。
ゆーないと 平行して、たとえば扇子の骨も作らないといけない。
チナ ええ。
その骨がまた、今回はたいへんで‥‥。
山下 3色に染め分けられてますね。
チナ しかも、よく見てください。
型が2種類あるんです。
山下 ‥‥あー、ほんとだ。
丸が多いのと少ないのと、2種類。
ゆーないと すごい‥‥。
山下 これも、レーザーで?
チナ これだけ細かい柄なので、たぶんレーザーだと。
山下 はあ~。
ゆーないと この、染めもすごいですよね。
青、水色、白にぱきっと染めてて。
チナ これ、竹に4度塗りくらいしてるんです。
ゆーないと はあ~~。
山下 そして、くじらのチャーム。
とやま かわいい、かわいい。
山下 クジラが海水を吹き出しているっていう
表現なんですよね。
ゆーないと うん。
躍動感。
山下 爽快感とかリズム感も感じます。
ナイスアイデアですよね。
チナ 去年の平さんの扇子にも
焼き物のチャームがついていたんですが、
今年も引き続き、
長崎の波佐見焼(はさみやき)の工房で、
1個1個つくっていただいたものです。
山下 オリジナルで。
これはマッコウですね。マッコウクジラ。
ゆーないと マッコウちゃん。
チナ クジラの絵は、平さんが描きました。

▲試作品をチェックする平さん。
山下 爽やかな扇子ですね。
ゆーないと ほんと、爽やか。
山下 青空の中の雲のような、
波しぶきの中の白のような。
チナ 薄い生地に、波しぶきが透けて見える感じが、
おしゃれで素敵です。
とやま 夏に持ちたくなります。
チナ そうだ、もうひとつチャームポイントが。
平さん、
「ここのところが、
 波っぽく見えるようにしたかった」
とおっしゃってました。

ゆーないと ここって?
とやま どこ?
チナ 扇子をとじている要(かなめ)の下の部分。
開いたとき、ここにウェーブができるように、
要から下をシュッと短めにしたんです。
山下 はあー、それ、聞いておいてよかった。
いやぁ、細かい工夫ですねぇ。
とやま きれーい。
チナ そう、きれいなんです。
とてもきれいな扇子だと思います。
山下 さて、次へとまいりましょう。
ほぼ日オリジナル、「よる花火」と‥‥
ゆーないと 「ひる花火」。
チナ 「ほぼ日」のデザイナー、とやまちゃんの作品です。
とやま ‥‥うれしいです。すごくうれしい。
山下 なぜ、花火をテーマにしたんですか?
とやま なんか、めでたいっていう方向じゃない
カラフルさというか、
夏っぽい色合いをベースに‥‥。
なんかこう、ただ涼しげとかじゃなくて、
元気な色でアクセント的になる感じで。
うまく言葉で言えてないですけど‥‥。
山下 大丈夫です。言えてます。
とやま 「ほぼ日」のコンテンツで、
長岡の花火を見て、
ああいう大きい花火、見たことなかったんで、
世の中にこんなきれいなものがあるんだーと思って、
こういう花火図鑑を開いたら、
すごくきれいで、魅かれて。

山下 (図鑑を開く)ああ‥‥きれいですね。
チナ 花火と扇子って、イメージの相性もいいし。
ゆーないと きれーだー。

とやま 打ち上げられた花火が一直線に上がって、
パーッて開く感じが、
ちょっと扇子に似てるなぁと思って。
山下 自分でやってみて。
ヒュルヒュルヒュル~と上がった花火が‥‥
とやま パーーン!(笑)

全員 やんややんやー(拍手)。
チナ そのリボンが、
打ち上げられた花火の軌跡のようになって。
とやま そうなんです。
山下 ちょっとこれ、名作じゃないでしょうか。
とやま そうですか?!
山下 素直に、そう思います。
とやま うれしい!
チナ ちなみにこの扇子は、
こんなにカラフルに骨を染めわけていますが、
これも「山二」さんの努力のたまものなんです。

ゆーないと そうですよね、「山二」さんのおかげだ‥‥。
山下 そして、最後にこちらをご紹介です。
「雨ニモマケズ」。
井上有一さんの書を扇子にしたものです。

ゆーないと 「ほぼ日のいい扇子」のシンボルですよね。
チナ 最初からあるデザインです。
山下 これはもう、いつものように
作っていただいてということでしょうか。
チナ いえ、それが、
今年はマイナーチェンジがされているんです。
ここなんですけど。
山下 え? ここ? 要の下のところ?

チナ そうです。
ここの部分を大顔(おおがお)という
かたちに変えたのだそうです。
山下 大顔?
チナ この部分、最初はもうちょっと細かったんです。
山下 デザーティックの扇子では、
短くシュッとさせた場所ですよね?
チナ そうです。
この扇子では逆にそこを
幅の大きな「大顔」に変えたんです。
ゆーないと それは、なぜ?
チナ 「山二」の専務さんが、
「そのほうが品がいいですから」と。
山下 ほおーーーー。
チナ 「格調の高いものになります」と。
山下 提案をしてくださったんですね‥‥。
ありがたいです。
本気に取り組んでいただいて。
手のかかる扇子を、
こんなに作っていただいているのに、
さらにそこまでしていただいて‥‥。
チナ ほんとうに、凝った扇子を作っていただきました。
他ではまずできないことを
やっていただいたと。
山下 ‥‥それは繰り返しますが、
アンケートのおかげですよね。
みなさんの声が、
今回のラインナップを実現に導いてくれたんです。
手間を厭わなくさせてくれたというか‥‥。
チナ そうですね、ほんとうに、そうですよね‥‥。

山下 というわけで、
けっこう長い時間、
扇子のラインナップについて話してきましたが、
まだあります!
ゆーないと まだある!
山下 作家さんとやりとりをしながら、
様々な準備を進める中で、
もうひとつ、大きな山がありました。
チナ ありましたねぇ。
山下 扇子のデザインも決まって、
そういうページ作りをしようと考えていたある日。
ゆーないと あれはたしか去年の11月末‥‥。
山下 さんに報告にいったんですよね、
「来年の扇子は、
 夏を涼しく。ちいさな風を持ち歩いてください。
 というテーマでやります」と。
チナ はい。
山下 そしたらイトイさん、
「正直で悪くはないんだけど、
 そのテーマは古いのかもしれない」と。
ゆーないと 「夏を涼しくは、
 そうなんだけどちょっと当たり前すぎる」
山下 で、しばし考えたイトイさんが、
膝をポンと叩いて、「ジャパネスク」と。
とやま 一瞬、ぽかんとしましたよね。
山下 「扇子っていうニッポンのものを、
 もっと客観的に見せる工夫をするといい。
 たとえば‥‥
 自分が外国人で、日本に遊びに来たなら、
 どんな扇子を選びますか? みたいな。
 そういう感覚でお届けすると、おもしろいでしょ」
ゆーないと ああーー! って思いました。
山下 思った思った。
そこからはもう、チームの中でも
パタパタパタっとイメージが整ったよね。
チナ 撮影のモデルさんは、外国の女の子がいいとか。
とやま 外国から遊びにきたその子が、
日本の女の子とふたりで
海の近くに小旅行に出かけるイメージ。
山下 そのイメージで逗子を候補地にして、
ロケハンに行って‥‥
チナ イメージにぴったりのモデルさんを見つけて‥‥
ゆーないと カメラマンさん、スタイリストさん、メイクさん、
などなど、スタッフの予定を調整して‥‥
とやま いざ、ロケ撮影!

▲かわいい物語が浮かび上がる、一連の写真が撮れました。
とやま 商品の「物撮り」もいちにちかけてやりました。

▲商品の詳細を見せる写真は「ほぼ日」のスタジオで。
山下 あとは商品のたのしさや魅力を伝える、
コンテンツ作りです。
ゆーないと ジャパネスクというテーマなので、
「センス交換!?」という企画を思いついて、
デンマーク大使館に行ったり、
様々な国の学生さんに扇子の話をしたりしました。
チナ その企画はこちらでお読みいただけます。
とやま ひとりひとりの作家さんに会って、
デザインについてのお話をうかがって‥‥
山下 ひたすら原稿を書き‥‥
とやま ひたすらレイアウトをし‥‥
チナ 「ほぼ日ストア」と
販売のシステムをしっかり確認して‥‥
ゆーないと みんなでテストをして‥‥
山下 販売開始の日をむかえる、というわけです。
‥‥なんか、
いつもやってる仕事を並べてしゃべっちゃった。

これ、ぜんぶ書いたとしたら、
長ーい読みものになっちゃうね。
チナ はい(笑)。
ゆーないと でもまぁ、いつもこういう感じです、と。
そういう意味では、いいのでは?
ここまで読んでくれた人、
ありがとうございましたーーー!
全員 ありがとうございましたーーーーー!!
チナ 「ほぼ日のいい扇子」は、
ほんっとにほんとーに、
他にはできない「いい扇子」です。
よろしかったらぜひ、夏の友だちにしてください。
山下 おおー、さすがチームリーダー。
ゆーないと 最後の最後までオススメしている!
チナ ほぼ日の扇子、どうぞよろしくお願いします!
全員 よろしくお願いしまーーーす!!

(メイキング・オブ・いい扇子2014 おしまいです)
model/colliu Erika Hostrop 
photo/白川青史(model)・富井義人(item) styling/川上薫 hairmake/小澤麻衣(モッズ・ヘア)