わたしとパール
平井かずみさん フラワースタイリスト

御守りのように、
日々に欠かせない存在。

平井かずみ (ひらい・かずみ)

フラワースタイリスト。花が身近に感じられるような「日常花」を著書や雑誌などで提案。東京・恵比寿にアトリエ『皓 SIROI』を構え、花の教室「木曜会」や企画展示などさまざまな催しを行っている。

平井かずみさんのプロフィール写真

季節を感じられる花を一輪花瓶にさしたり、
小さな器に生けたり、部屋に花を飾ることを
身近に感じてもらえるような提案をしている、
フラワースタイリストの平井かずみさん。

「年齢を重ねていくにつれて、
好きなものが自然と淘汰されてきました。
いまはお気に入りのものしかないですね」。
昨年引っ越してきた新居も、
1970年代に建てられた家を
オーナーさんがリノベーションした古い一軒家で、
一目惚れで入居を決めたそう。
平井さんのお気に入りがギュッとつめこまれた
“お城”のような気持ちのいい場所です。
自分にとって心地のいいもの、好きなものを
よく知っている平井さんは、
どのようなパールをお持ちなのでしょうか。

「これはね」と、一つひとつ手に取りながら、
エピソードを語ってくださった平井さん。
それぞれに思い入れがあります。

「いちばん長く愛用しているパールは、
母から譲ってもらったものです」
と見せてくださったのは、
パールが一粒あしらわれたリング。
光の加減で表情が変わり、
パールをささえる土台の部分が個性的で素敵です。

「母が昔よくしていただいていた方から
譲ってもらった指輪だそうで、
母が若いころ、よく身につけているのを見ながら、
素敵だなとずっと思っていました。
だんだんと登場回数が少なくなってきていたので、
私から『ちょうだい』とおねだりしたんです。

パールはかしこまった印象がありますが、
ほどよい使用感があったので
アンティークジュエリーのようにすっと肌になじみました。
どんな洋服にも合うので、
普段遣いとして頻繁につけています。
持っているパールの中で、
登場回数がいちばん多いですね」。

長く愛用しているもうひとつのパールも、
お母様からもらったものです。

「20代のころに、母から冠婚葬祭用の
パールネックレスとピアスのセットをもらいました。
誰にでも似合うのが、パールの素敵なところ。
このセットは友だちに貸してあげることもあります。
アクセサリーはしまいこむものではなく、
たくさん使ってこそ良さが際立っていくと思うので、
使ってもらえると、とてもうれしいですね。
パールはどんな人にも似合うから、
遠慮なく貸し出せるところもあります」。

20代のころは、淡水パールやコットンパールなど
手に取りやすい値段のパールを
いろいろ買っていた時期もあったそう。

「アクセサリーの種類もそんなに知らないころで、
唯一のあこがれがパールだったんだと思います。
働き始めたころ、初めてお給料で自分のために買ったのが、
たしかパールのアクセサリーだったはず。

パールがついたピンキーリングは、
気に入って、よくしていたことを覚えています。
だんだんと似合わなくなってしまって、
手放してしまいました。
そうやって、年齢を重ねるにつれて
自然と自分に似合うものがわかってきて、
いまは本当にお気に入りの
アクセサリーだけが手元に残りました」。

宝石箱のようなアクセサリー置き場から見つけたのは、
華奢なデザインのパールのピアスやネックレスです。

「ピアスは、自分でパールを選ばせてもらいました。
淡水パールだとニュアンスも違うので、
選ぶことでとっておき度が増す気がします。
ネックレスも小粒のパールですし、
基本的には繊細で華奢なものが好きです。
そういうものを選ぶと、
普段から使うことができます」。

目移りしてしまいそうな美しいアクセサリーたち。
平井さんにとってパールもふくめたアクセサリーは
“御守り”のような、日々に欠かせない存在です。

「いろいろなものを見るようになって、
今はミネラルショーに通うくらい鉱石が好きです。
鉱物マニアのおじさんや科学部の学生たちに混ざって、
とても真剣にチェックしています(笑)。

一つひとつ、大事に選んだものなので、
花のように愛でています。
仕事で忙しいときは、忘れてしまわないように、
つけっぱなしで寝るくらい大切なもの。
一日つけ忘れてしまうと、物足りない気持ちになります。
装飾品なので、身を守ってくれる感じが
するのかもしれないですね。
だからこそ、譲ってもらったものは
より愛おしく感じるのかもしれないですね」。

(つづきます。)