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2011年版に引き続き、
ディズニーデザインのカバー、
4種類できあがりました。
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神田 |
はい。
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前回は、デザインに
クラシックミッキー、ミニーを使用しましたので
ふたりの歴史を教えていただきました。
今回は、ぜひドナルドとプーさんについて
お話をうかがいたいなと思っております。
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神田 |
わかりました。
じゃあ、まずはドナルドのことから
お話させていただきますね(笑)。
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ーー |
よろしくお願いいたします。
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神田 |
ドナルドダックは本名が
ドナルド・フォントルロイ・ダックといいます。
世に登場したのは、
短編アニメーション映画のシリーズ
『シリー・シンフォニー』の
1934年の作品『かしこいメンドリ』※が最初です。
※原題『THE WISE LITTLE HEN』
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ーー |
ということは、
ミッキーの誕生が1928年ですから
それから6年後にはもう
ドナルドは存在していた、と。
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神田 |
そうです。
でも、最初は主人公としてではなく脇役でした。
これがそのときのドナルドです。
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ーー |
わ、いまのドナルドとぜんぜん違う!
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神田 |
はい、もろにアヒルです。
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ーー |
アヒルなのは当然なんですが、
こう、アヒル然としていると言いますか、
アヒル度100%と言いますか‥‥。
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神田 |
このときの特徴としては、
くちばしと首がとても長いんです。
それでいて頭が小さい。
で、決定的な違いが「人を寄せつけない顔」。
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ーー |
人を寄せつけない顔!
言われてみればたしかに。
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神田 |
この作品のときは、
ちょっと意地悪で怠け者で
おいしいところだけ取っていきたい
という役柄だったので、
そういうところも体現しているんだと思います。
ですが、それを差し引いても
「人を寄せつけない顔」ですよね。
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ーー |
うんうん。
ミッキーもそうでしたもんね。
最初に登場したときから、現在に至る経緯って。 |
神田 |
でも、じつは、
このあとわりとすぐに「あ、ドナルドだ」というような
みなさんが見慣れた感じに変わります。
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ーー |
いちばん左が
「人を寄せつけない顔」のドナルドですが、
その隣りはもう、僕らの知っているドナルドですね。
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神田 |
このとき、顔もそうなんですが、
とりわけ大きく変わったのが手でして、
最初は羽だったんです。
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ーー |
あ、ホントだ!
そこがアヒル然としているところだったのかも。
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神田 |
この手なんですが、
もともと羽だったことも考慮して
羽っぽい手として描いてるんですよ。
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ーー |
羽っぽい手?
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神田 |
羽から進化した手ということを考えて描いています。
ミッキーの手袋をつけた、
まん丸の手とは違う手です。
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ーー |
はぁー、なるほど!
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神田 |
一番左から次に移行するのは
ほんとすごく短い時間なんですよ。
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ーー |
すぐにあの姿になったわけですね。
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神田 |
で、出演作の話を戻すと、
初出演からしばらくしてすぐに
もうミッキーたちと共演してるんですよ。
それが『ミッキーの芝居見物』※という作品です。
これも1934年です。
※原題『Orphan's Benefit』
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ーー |
あれ? これ、モノクロですよね?
さっきのはカラーだったのに。
(『かしこいメンドリ』はカラー作品でした)
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神田 |
そうなんです。
当時、1932年からシリーシンフォニーは
カラーで制作されていたので、
彼のデビューは幸運にもカラーだったようです。
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ーー |
そういうことあるんですね。
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神田 |
作品のほうはというと、
ミッキーが子どもたちのためにショーを開きます。
みんな出し物を披露し、盛り上がるんですが、
ドナルドだけ子どもたちに邪魔をされるんです。
それに対してドナルドは怒るんですが、
ドンドンいたずらがひどくなっていく、という内容です。
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ーー |
なんか、そういう立場って
ドナルドっぽいなぁ。
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神田 |
ドナルドは、まさにその「立場」が大事なんです。
というのも、ミッキーは
すでにいろいろな作品に出ていて
人気がものすごく高まっていたんですね。
それで、ディズニーの世界における
リーダー的存在になってしまった。
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ーー |
まさに「僕らのクラブのリーダーは♪」※ですね。
※「ミッキーマウス・マーチ」の出だしの歌詞
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神田 |
えぇ(笑)
でも、それは悪いことではなく、
「ディズニーの象徴」へと成長したということなので
むしろ望ましいことでした。
ただ、当時のディズニーアニメには
欠かすことができない
ドタバタでハチャメチャな存在を
ミッキーにやらせることができなくなったわけです。
そこで白羽の矢が立ったのがドナルドです。
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ーー |
ドナルドになら
いろいろなことをしてもいいし
されてもいい、というわけですね。
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神田 |
そうです。
その役割をミッキーからドナルドに移したんです。
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ーー |
さっきの『ミッキーの芝居見物』でも
子どもたちにからかわれる役でしたよね。
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神田 |
あぁいう役は、
「ドナルドだからできる役」というわけです。
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ーー |
なるほど。
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神田 |
そのせいか、ドナルドは
感情の表現がとっても豊かです。
それこそ、ひとつの作品で、
喜怒哀楽を全部やっちゃうくらい(笑)。
性格的にいえば、すごく短気なんですよ。
でも、その一方ですごく正義感がある。
正義感があって、曲がったことが大嫌い。
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ーー |
えぇー、意外です。
失礼ですが、そうは見えない(笑)。
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神田 |
ですよね(笑)。
その反面、すごく子どもっぽくて、
すぐ相手に対してちょっかいをだそうとする。
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ーー |
そのあと返り討ちに遭う、と。
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神田 |
で、最後にかんしゃくを起こして終わる(笑)。
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ーー |
アハハハハ、わかりやすい。
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神田 |
ドナルドの主演作は、ほぼこの流れで進んでいきます(笑)。
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ーー |
いわば「お約束」的な。
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神田 |
役柄や設定が異なっていたりと
作品ごとにシチュエーションは違いはありますが。
大体これです。
当時、そのわかりやすさが
本当に喜んでもらえたらしいんです。
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ーー |
わかる気がします。
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神田 |
結果、ドナルドの主演作は170本近くあるんです。
この数字はミッキーよりも多い数字です。
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170本も!
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神田 |
さらに言わせていただくと、
コミックの出演数もミッキーを上回ったそうです。
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ーー |
こっちでもミッキー越え!
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神田 |
1934年にデビューして、数カ月後には
単独の商品がでているそうなので、
もう、出た瞬間に
人気者になったと言えるでしょうね。
いま、コミックの話をしましたが、
コミックにはおもしろい話があって、
ドナルドのファミリーツリー(家系図)って
とんでもないんですよ。
これはコミックが元になって描かれています。
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▲クリックすると大きくなります。 |
ーー |
わぁ、これ、すごい。
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神田 |
コミックスでの展開が
どんどん広がっていったおかげで
こんな状況なんです(笑)
しかもこれはその一部。
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ーー |
えー、一部なんですか?
あれ、ドナルドどこだ。
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神田 |
根のほうが古く、枝葉となるにつれて
どんどん子孫が広がっています。
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いましたいました!
その上には
ヒューイ、デューイ、ルーイ※1が見えますね。
あ、その左下にはスクルージおじさん※2!
※1:いたずら好きなドナルドの甥っ子(三つ子)。
※2:ドナルドの伯父。本名は「スクルージ・マクダック」。
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神田 |
コミックのほうで
一時的に設定したキャラクターもいるので、
一概に「これが公式」とは言いがたいんですが、
それを差し引いても、
こんなファミリーツリーができてしまう、というのは
ドナルドの特徴のひとつでしょうね。
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ーー |
ミッキーやほかのキャラクターにも
ファミリーツリーがあるんですか?
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神田 |
えぇ、あります。
でも、こう、なんかパッとしないんですよね。
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キャラクター数もそんなに多くない、とか?
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神田 |
それもあるんですが、
キャラクターたちの顔が
ドナルドと比べるとちょっと魅力的じゃないんです。
断然、ドナルドのほうがおもしろいですね。
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たしかにこのドナルドの家系、
みんな特徴的ですよね。
にしても、コミックのほうで
どんどん登場人物を増やしていっちゃうって
おもしろいですね。
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神田 |
コミックはその世界、ストーリーを広げていく上で
色々、世界観を広げていたんでしょうね。
制作責任者にキャラクターを預ける、
とでもいいましょうか。
当時、ものすごい量が出版されていたので、
いろいろな試みが必要だったんだと思います。
話ついでにもうひとつ、コミックの話を。
ドナルドは洋服の色味なんかも
時代や作品でちょっとずつ違っています。
めずらしいところでいうと、黒。
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ーー |
わっ、ほんとだ!
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神田 |
でも、その表紙は
青に黄色のおなじみのものだったりするんです。
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ーー |
あ、こっちは今っぽい。
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神田 |
もちろんコミック以外でも
セーラー服、ラインの色、そしてリボンの色が
異なるものがその時々で微妙に違っています。
ドナルドの古いものを見かけたら
ちょっと気にかけてみると面白いかもしれません。
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ーー |
それぞれで少しずつ違うんですね。
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神田 |
ちなみに、バイブル※的にはこれです。
※バイブル:ディズニーキャラクターにおける
世界共通のレギュレーションをまとめた1冊。
詳しくは「1929年のミッキー&ミニー」の
第三回目をどうぞ。
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ーー |
あぁー、納得。
やっぱりこれがしっくりきますね。
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神田 |
で、バリエーションとしてこれです。
青のセーラーに、
黄色いラインのときもあれば
白のラインのときもあります。
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ーー |
うんうん。
こっちも馴染みがありますね。
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神田 |
で、今回のカバーに話をさせていただくと、
青、黄色、白。
そしてしおりはリボンの黒。
見事にドナルドの特徴を捉えてますよね。
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そう言っていただけると
とってもうれしいです。
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神田 |
アニメーション、グッズなどの商品、
コミックなどの印刷物としての
ドナルドをきちんと消化しつつ、
ちゃんとデザインされた
カバーになっていると思います。
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ーー |
はい。
「よく見るとドナルド」というところを
目指しました。
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神田 |
まさにドナルドエッセンスが
このカバーには凝縮されていると思いますよ。
デザインもすごく完成度が高いです。
(次回、プーさん編につづく) |