この時代はアニメーション自体の創世記でもあり、
改革者でもあるウォルトがミッキーに対して
少しでも演技者としての人格というものを与えたい、
じゃあ、どうしたらいいかを試行錯誤していた、
その始まりの時期でもあるので、
おもしろい、細かなマイナーチェンジが
この時代にはいっぱいあります。
アニメーション自体の手法についても、
この2作から、ディズニーのアニメーションの手法、
たとえば“ストレッチ&スクウォッシュ”というような
重力を感じさせるような
アニメーションの描き方であるとか、
いろいろな技術が発展していきました。
それにともなってミッキーの姿も、
それを表現しやすいように
そら豆的な体つきに変わっていきます。
このふたつのアニメーションは、
そういう意味でも、ディズニーのアニメーションの、
原点だと言ってよいと思いますよ。
『プレーン・クレージー』制作の直前の1927年には
ウォルト自身が、彼のキャラクターのオズワルドというのを、
他の会社に実質奪われてしまったような事件があり、
本当に、もう失意のどん底だったんです。
ロスアンジェルスに戻る途中の列車のなかで
ミッキーマウスを思いついた、
というのが逸話になっています。
なので、このアニメーションはウォルトにとっても
原点であり、再生の象徴的な存在だと思います。
個人的な思いで言えば、やっぱりこういった
きわめて初期のレアな顔つきのミッキーを
商品に取り上げていただくっていうのは、
すごくうれしいことです。
ミッキーっていうのは、本当に歴史が古くて、
いろんな顔を持ったキャラクターですよね。
進化、変遷してる。
なので、こういった原点の、少しちょっと癖があって、
しかもその当時の制作者たちの思いとか意図が
しっかり込められているものが、
商品になって出ていくっていうのは、
ミッキー自身の幅広い外見であったり、
パーソナリティを世の中の人に知っていただく上で、
すごくうれしい傾向だなと思っています。
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